薄気味悪い怪談話が流れる中、車外には無数のお化けがうごめき恐ろしい怪奇現象が巻き起こる「ドライブインお化け屋敷」。2020年7月に東京・東麻布で開催された途端、3密を回避して楽しめる新しいスタイルのお化け屋敷として話題を独占。海外メディアからも注目され、夏から秋にかけて、公式HPの「キャンセル待ちフォーム」に1800組もの申し込みが!

「ドライブインお化け屋敷」誕生秘話やホラービジネスの可能性を教えてもらうべく、この史上初となる試みを手掛けた「株式会社怖がらせ隊」のお化け屋敷プロデューサー・岩名謙太(いわなけんた)さんを直撃した。

■なぜ、お化け屋敷プロデューサーの道に進んだのか?
岩名さんは1994年生まれの26歳(2021年5月現在)。幼少期からホラー映画やお化け屋敷が大好きで、中学3年生の夏休みには自宅をお化け屋敷に改装したことも。ホラー業界に憧れながらも「食べていくには狭き門だ」と考え、英語系の大学に進学したそう。

そんな岩名さんに転機が訪れたのは大学在学中のこと。「大学生の時、ゲーム性やストーリー性を備えたホラーイベント『ゾンビキャンプ』に参加しました。それまではお化け屋敷=遊園地のアトラクションというイメージでしたが、イベントに参加したことで、どこにでもお化け屋敷が作れることに気付き、『自分で作りたい』という気持ちに火が付きました」

2014年、21歳の時に大学を中退し、お化け屋敷プロデューサーとしての活動を本格的にスタート。2018年10月31日のハロウィンの日、代表取締役・今出彩賀(いまいであやか)さんと共に「株式会社怖がらせ隊」を立ち上げた。

■数々の体験型お化け屋敷をプロデュース
以来、「どんな空間にもお化け屋敷、ホラーイベントを創る」をモットーに、10畳ほどのワンルーム空間や体育館ほどの巨大な蔵、ゲームセンターなどさまざまな場所で、お化け屋敷を企画。

2018年に東京・池袋の「ナンジャタウン」で開催した「ナンジャ怨霊フェス」シリーズで広く認められ、テーマパークやショッピングモール、自治体などとタッグを組んでこれまでに100以上のお化け屋敷の制作やホラーイベントに携わってきた。

お化け屋敷プロデューサーとして順風満帆に歩んできたかと思いきや、「誰も作ったことがないようなお化け屋敷を作りたい」「もっと怖がらせたい」という気持ちが強すぎて、当初は一部の熱烈なファンにしか受け入れられなかったそう。「依頼が増えて会社が軌道に乗ったのは、ライトユーザーに合わせてシフトチェンジをしてから」と話す。

「ドライブインお化け屋敷」も恐ろしそうなのに、当初は今よりもっとマニアックで怖いものを作っていたとは驚きだ。

■コロナ禍から「ドライブインお化け屋敷」が誕生!
しかし2020年に入り、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて「狭いスペースに密集する」「お化け役のキャストと参加者が対面する」「叫び声をあげる」などの場面が避けられない従来型お化け屋敷の多くが自粛する事態に。仕事のキャンセルが相次ぐなか、「なんとかしてお化け屋敷を生き残らせたい」との思いで、岩名さんがひらめいたのが「ドライブインお化け屋敷」だった。

「ドライブインシアターやドライブインフェスが開催されていることを知り、『これだ!』と思いました。参加者を車に閉じ込めることで、キャストと接触する機会をゼロにできるうえ、思い切り叫び声をあげても飛沫(ひまつ)を気にする必要がありません。『ドライブイン』はキャストと参加者の両方を守れる、最高の舞台だと思いました」

コロナ対策から発想を得た「ドライブインお化け屋敷」は、「3密を避けたアイデアがすごい」「お化けのクオリティが高い!驚かせるだけじゃなくしっかりとした演技で怖がらせる部分が多い」「車の中で全方位からお化けに襲われるというホラー映画さながらの体験ができる」など、体験者からの評判もうなぎ登り。

2020年7月に開催した東京都港区東麻布会場を皮切りに、10月には茨城県水戸市の「ホテル テラス ザ ガーデン水戸」と福岡県福岡市東区の「ハロウィンフェスティバル福岡」内、12月〜2021年2月には「東京タワー フットタウン」、3〜5月(緊急事態宣言発令のため4月23日〜5月9日の公演は一時休演中)には大阪府大阪市浪速区の「YOLO BASE(ユーロ ベース)」と、日本各地で続けざまに開催。コロナ対策が万全なことに加え、限られたスペースでできることが強みとなり、今では全国の施設から問い合せが殺到しているそう。

■コロナ禍のピンチをチャンスに!
実は岩名さんがプロデュースするコロナ対策型のお化け屋敷は「ドライブインお化け屋敷」だけにとどまらない。特別製の棺桶に入って参加する「絶叫棺桶」や、キャストが着ぐるみをまとった「憑きぐるみ ミミちゃんの祟り」、複合リゾート施設のトイレを舞台にした「戦慄!トイレの花子さん」など、3密や飛沫を回避するさまざまなお化け屋敷をプロデュースしている。

「密にならないためにはどうすればいいか?車を搬入できないスペースで『ドライブインお化け屋敷』のような空間を作るには?と、逆算的に考えることで新しいアイデアがひらめきました」と岩名さん。「どんな空間にもお化け屋敷、ホラーイベントを創る」という同社のモットーや「どこにでもお化け屋敷が作れる」という岩名さんの柔軟な発想力が、現在の成果に繋がっているのだろう。

■思いがけない施設がお化け屋敷に?
今「株式会社怖がらせ隊」には、2019年と比べて10倍もの問い合わせが寄せられている。

「コロナ禍で稼働率が下がった駅近のホテルや葬儀会社、ラブホテルなど以前では考えられなかった施設から依頼をいただいています。その場所だからこそのアイデアも盛り込んで、“最恐”のお化け屋敷を作りたいです。お化け屋敷はジェットコースターに似ています。始まるまでは怖くて心配でドキドキが止まらないのですが、その分終わったあとの解放感が心地よく『楽しかった〜』という気持ちで満たされるはずです。また、心の底から『怖い』と思っている間は、日常の嫌なことも吹き飛びます。ぜひ非日常な恐怖体験を楽しみに来てください」

7月23日(祝)・24日(土)、24日(土)・25日(日)には、「ホテル テラス ザ ガーデン水戸」で1泊2日の宿泊型お化け屋敷「禁じられた結婚式」を開催。館内で6つのミッションをクリアしていく体験型ホラーイベントで、「ドライブインお化け屋敷」に続くコロナ対策万全の恐怖体験として注目を集めている。

「ドライブインお化け屋敷」「禁じられた結婚式」など、各イベントの開催日時や料金、申込方法は「株式会社怖がらせ隊」の公式Twitterや公式HPで確認を。お化け屋敷やイベントの情報は随時更新されるので、マメにチェックして売り切れ必至のチケットをいち早く入手しよう。

取材・文=吉田英子

※新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。