美しいボールペン字で書かれた、鋭くシュールな言葉。このギャップに「刺さる!」「クセになる!」とハマッてしまう人が続出しているのが、「今日の書き散らし」だ。

今回は「今日の書き散らし」を投稿している書きちらしさん(@kakichirashi)に、投稿を始めたきっかけや、書く言葉を選ぶときのポイントなどを聞いた。

■きっかけは「反骨心」!SNSの言葉を美文字で書きちらすワケ
書道を20年以上学んできた書きちらしさんだが、「ボールペン字が上手になりたい」という一心から、美文字な人たちのSNSの投稿を参考に、ボールペン字を独学で学び始めたそうだ。

せっかくなので学習の過程を記録しようと、Instagramで練習した字を投稿し始めたところ大好評に。これが「今日の書き散らし」のきっかけになったという。そんな書きちらしさんがボールペンで書くのが、ネットで見かけたフレーズやコメントだ。

「『美文字のお手本になっている文章は、真面目なものが多いな』とずっと思っていて。小説の一節や偉人の格言など、文章そのものはきれいで味わい深いのですが、少しつまらなさを感じていました。そこへの反骨精神も込みで、フランクで、スラングじみた言葉を選んでいます」と、SNSから言葉を引用する理由を話してくれた。

毎日「おもしろい!」「なるほど!」と思った言葉を集め、その手で書き起こしている書きちらしさん。「せっかくならユーモアあふれる言葉を選びたい」という書きちらしさんの思いは、「美しい文字で書かれるシュールな言葉」という人気コンテンツを生み出す原点となった。

■「俗」と「泥」にまみれた言葉にスポットライトを
書きちらしさんの最近の人気作は、『田舎は噂の広まりが光回線より速い』というもの。

「『あるある』という感情と、特定の人を傷つけない優しい『皮肉』が盛り込まれた言葉は、いつも反響をいただいています。僕の投稿は言葉の出典をリプライ欄に掲載しているので、言葉が生まれた背景や発信者の姿もたどれて、より深くその言葉のおもしろさを楽しめます」

SNSの発達のおかげで、受け身でいても多くの言葉が目に入るようになった現代。誰もが発信力・拡散力を持つからこそ、書きちらしさんは一般の人々の言葉にこだわり続けている。

「たくさんの情報があふれる今、僕たちの心に残り、気づきや学びをもたらしてくれるのは、言葉のプロが紡ぎ出した洗練された日本語ばかりではなく、一般の方々による俗や泥にまみれた中にキラリと光る言葉であることも多いと思うんです」

■手書きの良さを伝えたい!書きちらしさんの美文字の秘密
書きちらしさんの作品の大きな魅力は、内容もさることながら、なんと言っても美しいボールペン字。普段、どのように字の練習をしているのだろうか。

「『この人の字、素敵だなあ』と思う方を決め、その人の書く字のペン先の入り方や力の抜き方、文字のパーツの配置や線の長短まで、徹底的に真似ています。それを続けると、『自分の書き癖』が混ざり、新しい書き方ができ上がります」と、練習方法を教えてくれた。

これは、書きちらしさんが書道を20年以上学んできて、1番上達を感じられたイチオシの練習法だそうだ。書きちらしさんの文字を目指す人には、オンラインショップで完全オーダーメイドの「手書きサンプル」を提供している。美文字を目指したい人必見だ。

美しい文字とユーモアのある内容が生み出すギャップが大人気となった書きちらしさんのボールペン字。2021年4月には書籍『今日の書き散らし』(主婦の友社)が発売されるなど、その勢いは止まらない。そんな書きちらしさんに、今後の展望や目標を聞いた。

「今のボールペン字は独学ですので、教室に通って基礎を学びたいです。将来は、このような活動で注目をされた自分だからこそできる伝え方で、ペン字の魅力を教える講師として活動することが目標です。僕は普段、薬剤師として人々の健康に貢献しようとがんばっていますが、『書きちらし』の立場では、手書きの良さ、ひいては『趣味活動の楽しさ』を発信していき、多くの人の『心の健康』へのお役に立てればうれしいです」

ウィットに富んだ言葉を拾い、美しいボールペン字で表現する書きちらしさんの作品を見れば、思わずクスッと笑えてしまう。明日はどんな書きちらしが見られるのか、楽しみで仕方がない!

取材・文=福井求