バニラ、チョコレート、抹茶に黒ゴマ…今ではいろんなフレーバーがあるソフトクリーム。だが、その下で支える「コーン」が好きな人も多いのではないだろうか。

コーンはソフトクリームを入れる容器という役割で、あくまで“おまけ”というイメージが強いかもしれない。しかし脇役のコーンはソフトクリームのおいしさを引き立たせるために、さまざまな種類があり細やかな工夫がされていることは、あまり知られていない。

そんなコーンを長年開発・製造しているソフトクリームの総合メーカー、日世株式会社。この会社は日本で初めてソフトクリームを広めた歴史を持つだけでなく、なんと「ソフトクリーム」の名付け親でもあるとか。実はソフトクリームは和製英語で、英語の呼び方は「soft serve ice cream(ソフトサーブアイスクリーム)」。創業者である田中穰治氏が日本で広めるために、出来るだけ短くわかりやすくしようと「serve」と「ice」を省略して「ソフトクリーム」と命名した。

そしてソフトクリームだけでなく、日本で初めて国産のコーンも製造したソフトクリーム界のパイオニア。ソフトクリームの味や種類は、世界で日本が1番多いのだとか。今回は、その進化を支えているコーンの秘密を探るべく、経営企画部の松島寛明さんに話を聞いた。

■戦後に誕生した「レギュラーコーン」はバリバリ現役!
普段はあまり意識することのないコーンの存在だが、実はたくさんの種類がある。現在、日世株式会社が販売しているコーンは25種類。生地を型焼きしたシンプルなものから、ラングドシャやワッフルといった焼き菓子のようなものまで、用途に合わせてさまざまな形や味を生み出している。

数あるコーンの中でも最も歴史が古いのが「レギュラーコーン」。レギュラーという名前の通り、ソフトクリームと聞けば多くの人がイメージするであろうあの形だ。金型の中に生地を落とし、表面張力と火力で均等に発泡させて形を整えるという作り方で、外側に描かれている美しい模様にも、実は深い意味がある。

「コーンの外側に模様が入っていますが、単に見栄えが良くなるだけではなく、生地がまんべんなく拡散して、均等な厚さになるように設計されています。どの部分でも気泡がすべて直径1ミリになるように焼き上げています」と松島さん。

レギュラーコーンの中でも代表的なのが「No.1フレアトップコーン」。このコーンの歴史はなんと戦後まで遡る。1951年(昭和26年)、日本に初めてソフトクリームを持ち込んだ日世株式会社の前身・二世商会は、アメリカのフリーザーを購入してソフトクリームを販売し始めた。しかしこの頃はアメリカから輸入されるコーンは破損したり、湿気でダメになるのが大きな悩みだったそう。

そこでアメリカのコーンメーカーと提携して、1953年(昭和28年)、国産に踏み切ることに。この際に輸入された金型が、当時アメリカで最も人気だった「No.2テイクアウトコーン」。続いてやってきたのが「No.1フレアトップコーン」の金型だった。

「残念ながらNo.2は廃盤になってしまいましたが、No.1は今もなお、皆様に愛されています。No.1は最も古いため、昔から当社のソフトクリームを取り扱う店では、このコーンを使っているところが多いです」

近年のレトロブームも相まって、2018年ごろからは持ち手が短い「No.15テイクアウトコーン」を使う店舗が増えたとか。No.15のコーンに丸いクリームを盛り付けると、コーンスタンドのような仕上がりになり、「かわいい!」と若い女性を中心に大人気だ。

■日本初のツートンカラーコーンも!
「ワッフルコーン」という、マス目状の模様がついた少し厚みのあるコーンもレギュラーコーンに負けない人気だ。食べたことがある人も多いのではないだろうか。これらは生地を2枚の鉄板に挟んで板状に焼き、円錐の金型に巻き付けて作られる。もちろんマス目がついているのにも、深い理由が隠されている。

「この模様は、焼き板からはがれやすくするための工夫です。やや甘い味付けとなっているのは、焼き上がってすぐは柔らかく、冷やして固まらせるために生地に砂糖を入れているからです。焼くときに先端が厚くなりがちなので、先端と縁側の生地の厚さを調整し、先端側は薄く、縁側は厚く焼くなど、全体が均等な厚さになるような工夫もしています」

このコーンを使った商品の中でも特に目を引くのが、北海道あずきを使用した上品な味わいが魅力の「和のソフトクリーム」。コーンを2色に分けて作る特許を持つ日世株式会社は、この技術を生かして赤と白のおめでたい色で和を感じられる「紅白ツートンコーン」を作成。縁起の良い伝統色が目を引く、日本初の2色コーンだ。

「外国人観光客向けに、和を感じられるソフトクリームを作る企画がありました。このソフトクリームに合うように、2色のシートコーンを活用して紅白コーンに。華やかな見た目が写真にも心にも映える特別なひと時を演出してくれます」

また、コーンに巻かれているスリーブも、和のソフトクリームを華やかに包み込む和風のデザイン。味だけでなく、隅々までこだわり抜かれたひと品だ。

■最後まで食べ応え抜群のおしゃれコーン
もちろん、出合えたらラッキーな少し珍しいコーンも。それが「菓子コーン」だ。焼き菓子の生地を円錐の金型に巻き付けて作られている。そのうちの1つ「ブーケサブレ」は生地をオーブンで焼き上げ、花束をイメージさせるかわいらしい形にしたバター風味のサブレのコーンだ。

「クッキーの1種として人気が高く、ソフトクリームとの相性も良いサブレ生地を丁寧に焼き上げ、コーン状に巻きました。近年のスイーツに求められるフォトジェニックさを意識し、リップ部分を花びらの形にしました」

そしてもう1つは「ラングドシャコーン」。これは「クレミア」というソフトクリームの専用コーンで、コーン状に巻かれたラングドシャに専用のソフトクリームを盛り付けた商品。「最高を目指したら、クレミアになりました。」というキャッチコピーを掲げたこの商品は、「ソフトは巻くもの」という固定概念を払拭し、生クリームから泡立てをすっと抜いた形を模した高級感と気品漂う大人のコールド・スイーツとして登場した。

この商品のターゲットは20〜30代の女性。日世株式会社の調査では、ソフトクリームは一般的に親子や祖父母と孫、夫婦など、親しい人と一緒に食べるものだとイメージされているそう。しかし若者は高校を卒業すると同時に、一旦ソフトクリームから離れて他のスイーツを楽しみ、結婚や子育てのタイミングでソフトクリームに戻ってくるという傾向がある。「この空白の期間もソフトクリームを楽しんでほしい」という思いから、この商品が生まれた。

「当社が行った調査では、ソフトクリームは20代や30代の働く女性からの支持が薄いということがわかりました。その理由は、女性の皆様の中では『ソフトクリームはどこも同じ』という認識があったからなんです。そこで彼女たちに向けた商品を提供したいと思い、『クレミア』の開発が始まりました」

厳選した素材で作られた濃厚でなめらかなクリーム、上質感を目で味わう流麗なフォルム、そしてクリームと最も相性が良く、軽やかな食感と素材の風味がやさしく香るラングドシャ。全てが合わさって初めて「クレミア」が完成する。口当たりまろやかで最後までおいしく食べることができるこの商品は、日々をがんばる人たちへのご褒美スイーツとして人気を博している。

■日本のコーン技術を世界へ!
ソフトクリームの総合メーカーとして、日本のソフトクリーム市場を牽引する日世株式会社。松島さんはこれからも世代や国境を越えて、“おいしくて楽しくて夢のある商品”や、“潤いのある食文化”を提供していきたいと話す。

「世界中の人々の幸福と健康のため、『人にやさしく、地球にやさしく、社会や環境との調和を目指す』という企業理念をもって邁進しています。今は世界進出を視野に入れていて、経済発展がめざましく人口も多い中国を皮切りに、東アジアから東南アジアに向けて、日本式の安全・安心なソフトクリームを世界に届けていきたいです」

「ソフトコミュニケーションで世界を結ぶ日世」を理念の1つに掲げる日世株式会社は、おいしいソフトクリームやデザートをより多くの人に届けるべく、日々新しいソフトクリームの可能性を追求している。

そしてコーンは世界中の人々に笑顔を届けるための「縁の下の力持ち」として、今日もソフトクリームを支えている。これからはコーンにも目を向けて、じっくり味わってみてほしい。

取材・文=福井求