スーパーや薬局、コンビニなど、今となってはどこでも見かける入浴剤。最近では種類も豊富で、「肌を保湿したい」「疲れをとりたい」など、さまざまな要望に合わせた商品が発売されている。

「入浴剤」と聞くと思い浮かぶのが「バスクリン」。「大人のバスクリン」をはじめあまり見ないようなユニークな商品名や香りが特徴で、店頭で思わず二度見してしまうようなものも。バラエティに富んだ商品展開をしているバスクリンだが、発売当初は今とは少し違ったコンセプトだったんだとか。さらにコロナ禍による新たな生活スタイルの普及に伴い、バスクリンを含め入浴剤全体の在り方にも変化が起きつつあるという。

そこで今回は、株式会社バスクリン マーケティング本部 商品企画部企画課の根津毅さんにインタビュー。バスクリン誕生秘話と入浴剤の“今”に迫った。

■実は“夏季専用”の商品だった!?バスクリン誕生秘話
入浴剤は「自宅のお風呂で温泉気分を味わえる」というようなコンセプトの商品も多く、どちらかというと冬場に使用するイメージが強いかもしれない。しかしバスクリンは1930(昭和5)年に、“夏季専用”の商品として登場した。

「津村順天堂(現・株式会社ツムラ)が1897(明治30)年に発売した日本初の入浴剤『くすり湯 浴剤中将湯』に対して、『この浴剤は湯に入れると夏場は汗が引かなくて困るので、夏用の浴剤も作ってほしい』という要望が銭湯から寄せられました。そこで芳香を加えて夏季専用の浴剤として開発したのが『芳香浴剤 バスクリン』です。バスクリンの元祖ですね」

そんなバスクリンの人気に火がついたのは高度経済成長期の1960年代。民間アパートや一般住宅に浴槽が備え付けられ始めたのがきっかけで、自宅で気軽にお風呂に浸かれるようになり、入浴剤が家庭でも使われることが増えたからだという。

■多い時で50〜60の試作品!ユーザーを飽きさせないための工夫
1930(昭和5)年の発売以来、200種類以上の商品が発売されているバスクリン。しかし「バスクリン」の響きに「変わらない良さ」がある一方で、「進化していない」「古い」という声もあったそう。そこでバスクリンの“今”をアピールするために登場したのが「大人のバスクリン」。これまでの王道の香りでありながら、ほかでは見られないこだわりが感じられるコンセプトになっている。

「もともとは“リッチな気分になれる入浴剤”がテーマでしたが、次第に“入浴剤好きの心をくすぐるこだわりを追求する”という方向に定まり、『大人のバスクリン』になった経緯があります。商品名については『入浴剤を使ってきた大人だからこそ楽しめる』というコンセプトから名付けました。ちなみに開発当初は『金のバスクリン 銀のバスクリン』『バスクリン ゴールドレーベル』『バスクリン プレミアム』などが候補として挙がっていましたね」

そして後に登場する「バスクリン 世界紀行」シリーズはバスクリンのなかでも人気商品で、「プーケット 魅惑の海 ライチの香り」や「タヒチ 幸せを呼ぶ花ティアレの香り」、「情熱の国スペイン 太陽のひまわりの香り」など、一度使ってみたくなる商品名ばかり。

「『バスクリン 世界紀行』シリーズは、『入浴で日常を忘れ、ふっと異国を旅するような解放感』をコンセプトに開発しています。その国ならではのイメージや世界観を大事にしていて、例えばスペインがテーマなら『スペインのひまわり畑の香り』ではなく『情熱の国スペイン』という名前にしています」

根津さんは「入浴剤は食品の試食のように試してもらうことができないので、お客様には香りを商品名で理解していただくことが前提になります」と話す。訴求力が高い商品名を求められるもののイメージからかけ離れすぎるとユーザーの理解が得られにくいため、良い塩梅を見つけるのが難しく、ネーミングにはとても苦労しているそうだ。

入浴剤にとって肝心な「香り」については商品に対するイメージを損なわないように、社内に在籍する3名の調香師によって1商品につき最低でも20〜30回、多いときだと50〜60回ほど試作を重ねているんだとか。このように商品の1つ1つに開発陣の並々ならぬ思いが詰まっているのだ。

そんな株式会社バスクリンは、社員の知識向上や能力開発を目的とした独自の検定制度「バスクリン入浴マイスター認定試験」を2022年3月に実施。社員の入浴剤に関する知識の底上げを行っているという。

■入浴剤の売上が爆増!そのワケとは?
コロナ禍でおうち時間が増えたことによって、人々の生活スタイルに変化が出始めた。そして入浴についても例外ではなく、新たな習慣が生まれつつあるという。

「おうち時間を充実させる一環として、入浴剤を使う方が増加しました。そこから継続して使用される方が多くいたことが、ここ数年の売上伸長の要因であると考えています。おかげさまでバスクリンの売上はコロナ禍前の1年間と比べて120%増と、大きく伸ばすことができました。ここまで売上が大きく伸びたのは、ここ近年では見られなかった現象です」

また、コロナ禍で人気の入浴剤は温泉タイプやアロマタイプの商品だという。外出自粛のなか、温泉旅行に行ったような気分を味わえるのが主な人気の理由。特に「日本の名湯」、「アーユルタイム」などが人気だそう。

■充実したバスライフのために。バスクリンが掲げる今後の目標
根津さんは「これからも入浴剤に対するさまざまなニーズに応じた豊富な商品ラインナップで、皆様に充実したバスライフをお届けしたいと思います」と意気込む。

「バスクリンは2030年で発売100周年を迎えます。そして今後も皆様に愛されるブランドであり続けられるように、バスクリンの前身である『くすり湯 浴剤中将湯』の発売から培ってきた入浴や入浴剤の効果に関する知識をさまざまな形でお伝えしていきたいです」

発売から100年近く経った今もなおユーザーの声に寄り添い続けるバスクリンは、今後どんなコンセプトの商品を生み出していくのだろうか。これからの挑戦も見逃せない。

取材・文=西脇章太