女子高生をはじめとした女の子たちの間でいつの時代も人気なのが、「プリントシール」(以下、プリ)だ。誰もが気軽にかわいくなれるプリントシール機(以下、プリ機)は、「かわいい」に憧れる女の子たちの強い味方。青春時代には欠かすことのできない存在だ。

そんなプリ機だが、SNSを意識した独自の機能や、登場初期にはなかった豪華な撮影環境など目まぐるしい進化を果たしており、今やプリは“全自動の撮影スタジオ”と呼べるくらいに機能が充実している。だが、最近はスマホの加工アプリの普及に伴い「絶滅するのでは?」と心配の声もあがっているのだとか。

今回はプリ機シェアNo.1を誇るフリュー株式会社 広報部の疋田裕貴さんに、プリの歴史や流行っているプリ機の特徴、そして加工アプリとの差別化についてなどを聞いた。

■プリの歴史はかわいいの歴史。プリ機の変遷をたどる
プリ機の誕生は1995年にまで遡る。株式会社アトラス(現・株式会社セガ)が開発した「プリント倶楽部」が元祖で、撮影してその場でシールが出てくるという目新しさで世代を問わずヒットした。また、この頃はガン黒、細眉、厚底ブーツが代名詞の“黒ギャル”や、安室奈美恵のファッションに影響を受けた“アムラー”、そして『egg』をはじめとしたギャル雑誌の登場など、ギャル文化の全盛期。彼女たちの遊びの1つとして定着していった。

その後、プリ機に革命が起こったのが1999年。浜崎あゆみの登場によって黒ギャルから“白ギャル”への大転換が起こり、美白に憧れる時代に突入。プリ機にも美白機能を搭載し、鼻がなくなるくらいに顔を白く飛ばしまくるのが人気になった。また、登場してから数年が経ってプリの楽しみ方の幅も広がって、撮影室に段差がついたりカメラ画角を調整できたりという、撮影スタジオ的な進化も果たした。

そして2005年には、雑誌『小悪魔ageha』が創刊。雑誌で活躍した読者モデルを中心に、付けまつげとカラコンを使ったデカ目強調メイクが大流行。プリ機も“盛れる”写り重視に。当時フリューが出したプリ機「美人-プレミアム-」には「美人目ヂカラ機能」という“デカ目機能”の先駆けとなる機能が搭載され、大人気に。その後2011年初頭にかけて、「もっと盛りたい」という女の子の声に応えるように目の強調は加速していき、最終的に顔からはみ出すのでは?と思うほど大きく加工されるようになった。

2011年にはAKB48をはじめとしたアイドルブームで、「ナチュラルだけど盛れている」がトレンドになり、よりナチュラルにデカ目に見せる機能が充実。また、イメージモデルには外国人モデルやハーフモデルが起用され、ギャル感を減らしたプリ機が登場する。「LADY BY TOKYO」というプリ機は、ストロボの陰影で顔の立体感を生み出し、自然に盛れるのが特徴。「派手」「ギャル」のイメージから打って変わって、洗練された美しさを打ち出して大流行した。

そして最近の機種では、女の子の趣味・趣向が多様化し、それぞれ異なる「なりたい顔」を目指すように。プリも目の大きさを左右個別に選択できたり、大人数で撮影しても個々で目の大きさを変えることができるように進化。

「プリ機は女の子の『かわいい』を叶えるべく、時代に合わせてさまざまな進化を遂げてきました。“プリの歴史”は“かわいいの歴史”なんです。当初はただ撮ってシールになるのが楽しかったのが、2003年以降は『きれいに撮りたい』というニーズに変化し、さまざまな顔加工の技術を発展させ続けてきました。プリが登場した当初に楽しんでくださっていた方は、今のプリの進化に驚かれると思いますよ」

■開発で大事なのは「女の子の気持ちに寄り添い続けること」
現在のプリ機の開発でフリューが最も重視しているのは、「それぞれがなりたい顔になれる」機能だ。これまでは流行の情報源がテレビや雑誌で、女の子の憧れがみんな一緒だったが、SNSの流行で憧れの対象がアイドルやモデル、インフルエンサーなど多様化した。そんな女の子の多彩な「かわいくなりたい」に応えるべく取り組んでいるのが「現役女子高生へのヒアリング」だ。週に1回以上女子高生を会社に招き、最近流行しているものや価値観の調査、開発中のプリ機の試写などを行っている。

「開発に携わる社員は、元ギャルがいたり、プリが大好きで入社したメンバーばかりです。もともと女の子のトレンド感覚を持っていますが、グループインタビューで女子高生と頻繁にコミュニケーションを取ることで、より近い目線で物事を考えられるようになります。プリ機は開発に1年以上時間がかかるので、トレンドの先読みが最も重要になります。女子高生はトレンドの移り変わりが早く、1年単位で変化するので、1年後に女の子が喜ぶものを予測して開発を進めないといけません」

トレンドの変化が早いため、「女の子の気持ちに寄り添うこと」を常に意識しているという。そのなかで多くの女の子の心を掴んだ機種が「ルートミー」だ。かわいいを極めた写り「2.5次元盛れ」ができる機種で、顔のパーツバランスが下にさがり、かわいらしい印象に写るのが人気のポイント。レタッチやメイク機能はもちろん「盛れるリングライト」も搭載し、自撮りに慣れた若者たちも満足な仕様だ。

そして2022年10月上旬に登場するのが新機種の「TODAYL」(トゥデイル)。10〜20代の世代が求める「盛れた“今日”をおしゃれに残す。シャレ盛れプリ」がコンセプトで、撮影したプリや別カメラで撮ったサブショットなどがBGMに合わせて自動でコラージュされる「15秒動画」を撮影できるのが大きな特徴だ。Instagramのストーリーズ機能やTikTokといった動画アプリの発展で、思い出を動画に残して発信するのがトレンドになっている。

「最近は撮った写真や動画に音楽や歌詞字幕を組み合わせ、その時の様子や感情をおしゃれに記録する『歌詞動画』が新たな定番になっています。『歌詞動画』はアプリを使って自分で動画を作りますが、『TODAYL』はプリ機が自動でおしゃれな動画を作ってくれるため、トレンドの思い出の残し方を簡単に楽しめるのが魅力です」

また、昭和や平成初期に流行した文化や価値観は女子高生にとって“初体験の新しいもの“として受け入れられているため、「TODAYL」ではシールをモノクロで印刷できる機能も搭載。登場から一貫して「かわいい」に寄り添ってきたプリ機には、その時代の女の子にとってのトレンドがぎゅっと詰め込まれている。

■顔加工アプリとは相性抜群?アプリとプリの違い
2015年にリリースされた「SNOW」をはじめとした顔加工アプリの普及によって、「プリは絶滅するんじゃない?」と心配の声が多くあがったという。一見顔加工アプリとプリ機は対立しそうに見えるが、疋田さんは「そんなことは全くありません」と話す。

「『スマホの普及でプリって廃れないの?』とよく心配されますが、全然大丈夫です(笑)。実は顔加工アプリとプリはとても親和性が高く、スマホで自撮りをする女の子ほどプリを撮る傾向にあるんです。日本で顔加工アプリの浸透が早かったのは、その土壌にはプリを楽しむ文化があったからではないかと考えています」

顔加工アプリとプリ機の大きな違いは、「自撮り」か「他撮り」かという点だ。プリ機はプロ用の一眼レフカメラやストロボなどが搭載されていて手軽に本格的な撮影ができる、いわゆる全自動の撮影スタジオのようなもの。撮影技術や画角の知識がなくても今のトレンドに合った形でかわいくきれいに撮れるのが、人気が衰えない理由だ。

「女子高生の遊びコースのなかには、プリ撮影が含まれていることが多いですね。例えば、お買い物に行っておしゃれなカフェに行って、そしてプリを撮るといった流れです。友達みんなでワイワイ撮影して思い出づくりをするだけでなく、シールや画像データを見返して楽しい思い出に浸れるというのが彼女たちの楽しみ方なんです」

逆に、あまり使われなくなっているのが「プリ帳」。昔の女子高生はプリ帳を持っていて友達と交換をし合っていたが、現在はInstagramをはじめとしたSNSに置き換わってしまったとのこと。SNS用に自分の世界観を表現するため、プリの楽しみの1つだった「落書き」が少なくなってシンプルなデザインが好まれているという。SNSにアップした画像に“いいね”を付け合うことで、お互いの承認欲求を満たすのがメジャーな使い方だ。

「ツールはプリ帳からSNSに変わりましたが、その日の思い出を記録したり、友達と思い出を共有するという楽しみ方は基本的に一緒です。またアナログな使い方では名刺サイズのプリが人気で、それをクリアのスマホケースに入れるのが流行っています。女子高生のスマホには必ずと言っていいほど挟まってます(笑)」

■青春に寄り添ったプリ機作りをいつまでも
プリは時代ごとの女の子の「かわいい」を実現するためにさまざまな進化を遂げてきた。そして今も進化中だ。だが、いつの時代も「女の子の青春に寄り添う」というプリの在り方は変わることはない。また、プリは女子高生がユーザーのボリュームゾーンだが、「盛りたい」という気持ちの強さが女子高生の生活にプリが根付いている理由の1つになっているという。

「プリ機コーナーにはメイクのお直しができるスペースがあるのですが、女子高生は撮影前のお直しの気合いの入れ方が違います。彼女たちにとって“盛る”ことは命と同じくらい大切なことなんです。特に女子高生はメイクを覚え始めた段階なので、『メイクがあまり得意でない子たちも気軽に楽しくかわいくなってほしい』という思いで開発を続けています。これからも女の子たちと共に成長していきたいです。ちなみに、フリューのプリ機はすっぴんでもめちゃくちゃ盛れますよ!」

「女の子に寄り添い、一緒に成長していくのがプリ機」と疋田さんは話す。ニーズを読み取りつつかわいくなれる文化を作り続けるプリ機は、女の子たちがなりたい像になれる夢を叶えてくれる。これからフリューはどんな「かわいい」を提案してくれるのだろうか。今後のプリ機に期待が膨らむばかりだ。

取材・文=福井求(にげば企画)