Chim↑Pomの「にんげんレストラン」で感じた現代アートの懐の深さ

おすすめのイベントとひと口に言っても、人によってその好みはさまざま。必ずしも“皆が”楽しめるイベントだけが答えではありません。そこでウォーカープラス編集部では、特定のジャンルに精通した(偏った?)エキスパートに、それぞれの視点でいま注目のイベントを聞いていきます。

今回イベントを紹介してもらうのは“エンタメに生き、エンタメに死にたいライター”大原絵理香さん。この秋、未知の世界を体験しにアート好きの友達と行きたいイベントとして、新宿・歌舞伎町で開催中のアーティスト集団「Chim↑Pom」によるアートイベント「にんげんレストラン」を紹介してもらいました。

大原絵理香(Twitter:@ericaohara)/川崎生まれ、東京とニュージャージー育ち。会社員とフリーランスをいったりきたりしながら生きている。

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アートというと、人によっては敷居の高さを感じてしまうかもしれません。実際、わたしも社会人になるまでアートといえば学校の課外授業で行く美術館以外、プライベートでは一度も触れたことはありませんでした。

しかし、ある時、たまたま訪れた展示会で「あれ、現代アートって面白いかも」と思ったことがきっかけで、それからはいろいろな展示会に積極的に顔を出すように。

もちろん、本来であればアート史やその作家の出自や歴史、師事している作家などを知ってから見るものが正しいアートの見方・楽しみ方だと思います。でも、現代アートはわたしのようなアート初心者であっても「よく分からないけど面白い」「なぜか心がざわざわする」「帰ってからも何度も思い出してしまう」と、分かりやすく心を揺り動かしてくれるんです。

前置きが長くなってしまいましたが、今回ご紹介するのは、アーティスト集団「Chim↑Pom」によるアートイベント「にんげんレストラン」。

チンポム、と口に出すのが少しはばかられる名前の彼らは、広島・原爆ドームの上空に飛行機雲で「ピカッ」という文字を描いた「ヒロシマの空をピカッとさせる(2009年)」や、渋谷駅にある岡本太郎の壁画「明日の神話」に原発事故の絵をゲリラ的に設置した「Level 7. feat. 明日の神話(2011年)」など、ニュースにもなっていたので、アートに明るくない人でもこの“事件”を知っているかもしれません。

彼らの多くの作品が、賛否両論、さまざまな議論を生み出しており、大好きな人はめちゃくちゃ好き、大嫌いな人はめちゃくちゃ嫌い、がかなりはっきり分かれるアーティストだと思います。ちなみに、わたしは大好き。

そんな「Chim↑Pom」が、新宿・歌舞伎町の取り壊しが決定している、しかも近くにはあの「ロボットレストラン」があるビルで、10月14日より2週間限定で開催するアートイベントは、メインディッシュを「人間」として、訪れた人や、気鋭のアーティストにより作り上げていくもの。「ロボット」に対し「人間」というのは、なんとも皮肉が効いています。

わたしが行った正式オープン前日である13日に行われたレセプションパーティーで、関優花さんは、100kgのチョコレートを自身の体重と一致するまで舐め続けていました。「チョコレートは6kg摂取すると致死量に達する(関氏)」とのことで、実際は摂取しない(口に含んで吐き出している)ものの、おそらく舐めきるまでには多量のチョコレートを摂取するはずで、下着のような軽装で無表情で舐め続ける様子と、その命がけのパフォーマンスに、“生”を感じてしまいます。

伊東宣明さんは、聴診器を心臓にあて、自分の鼓動と同じリズムで大きな生肉の塊を無表情で叩き続けていました。その横では、来場者の足元を歩き回ったり、餌を食べたりする鶏が二羽。種族は違うものの同じ家畜として、このパフォーマンスに対してどう感じていたのでしょう。

松田修さんは、666秒間、まるで小学生のような卑猥語をシャウトし続けていました。初めは困惑していた来場者も、終了が近づくにつれヒートアップ。手拍子や一緒に卑猥語を叫ぶ様子は、さながら、人気ミュージシャンのライブのようでした。

このようなパフォーマンスが、会期中アーティストが入れ替わりながら、時に同時多発的に行われていくこの「にんげんレストラン」は、きっと「Chim↑Pom」による、ビルを立て壊す前の、最後のお祭りなのではないか、と思いました。違うかもしれないけど。

と同時に、「肉を叩き続ける“だけ”」「卑猥語を叫び続ける“だけ”」で、アートになるという、その現代アートの懐の深さに感動を覚えました。

もちろん“だけ”なんて机上では簡単に言えることで、それを思いつくこと、それを実行しアートとして昇華させることは難しいことでしょう。それでも、例えば「奇行」と捉えられかねない行動も、現代アートの器はそれを受け入れてくれ、アーティストにしてくれるんです。

「にんげんレストラン」をすっかり楽しんだ帰り道に前を通った「ロボットレストラン」では、思わず心の中で“Fワード”を発してしまいました。

だって、ロボットより、にんげんが最高だから。(東京ウォーカー・大原絵理香)


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