注目の若手女優・佐久間由衣が、『“隠れビッチ”やってました。』に続く2本目の主演映画に挑む。原作は、芥川賞作家・津村記久子のデビュー作で、第21回太宰治賞受賞作『君は永遠にそいつらより若い』を初の実写化。映画では大阪が舞台の原作を東京に置き換え、多くの人が経験する人生のある時期を切り取って、若者の気持ちを丁寧に描き出す。

主人公は卒業間近の大学生・ホリガイ。だるい日常の中で、ふとした折に社会の闇に触れ、やりきれない哀しみに直面する。「自分には大切な何かが欠けている」「そんな自分がこれから社会の中でちゃんとやっていけるのだろうか」と悩むホリガイが経験する、さまざまな人との出会いや出来事。ホリガイに大きな影響を与える友人・イノギを奈緒が演じる。

監督は、本作が長編3作目となる吉野竜平。原作から欠落感を抱えたまま他者や社会とどう関わって生きていくのか、にスポットを当て、ホリガイを通してその揺れる内面を繊細に描写していく。佐久間、奈緒のほか、小日向星一や笠松将ら気鋭の若手俳優たちが出演。佐久間由衣が来阪し、ホリガイの役作りや本作から感じた自身の思いを語った。

【あらすじ】
大学卒業を間近に控え、児童福祉職への就職も決まり、手持ぶさたな日々を送るホリガイは、身長170センチを超える22歳、処女。変わり者とされているが、さほど自覚はない。バイトと学校と下宿を行き来するぐだぐだした日常を過ごす中、同じ学校に通う一つ年下のイノギと知り合い、独特な関係を紡いでいく。ある友人の死以降、ホリガイを取り巻く日常の裏に潜む、暴力と哀しみが顔を見せる…。

【出演への思い】
「お話をいただいてから原作を読み、そのあとに台本を読んで、普段なら主人公にならないような役柄にフォーカスした作品だなというのが第一印象でした。大学生が、就職先が決まったあとの持て余した時間を過ごす日常で、自分の中でも、あ、この感情あるな、とか、ヒリヒリするなと思う、感情の機微みたいなものをしっかりとすくい取って丁寧に描かれている作品だなと思ったので、実写化は簡単なことではないけれど、ぜひ挑戦してみたいと思いました」

【監督と作ったホリガイの”履歴書“】
「撮影に入る前に監督と何度かお話をする時間を作っていただいて、その中でホリガイの履歴書みたいなものを一緒に作っていきました。例えば、好きな漫画や普段見ているテレビ番組、自分の部屋がどれぐらい散らかっているのかとか、そういった細かいことを話し合ったり。あとはカバンの中身も。

監督が、水筒を持ってる女の子って可愛いよねっておっしゃって、水筒を必ず持ち歩いてる子にしたいと(笑)。水筒の中身は紅茶にしました。ほかにも、折り畳み傘を持っている、雨の日は長靴を履く、とか。ヨーイ、スタートからカットまでの瞬間を頑張るのではなく、そこに描かれていないシーンや人物像を細かく作り上げていった感じです。ここまで具体的に一緒に作り上げていただいたのは初めてでうれしかったです」

【演じながら】
「履歴書を作れたことで現場では自由にいることができました。決めてしまうことで行動の幅が狭まるのではなく、その場に集中できる時間が増えたという感じで。その場の空気感をちゃんと感じてセリフを言うことを心掛けていました。気持ちにちゃんと寄り添った順番で撮らせていただけたので、積み上げていきながらできた気がします。

特にホリガイは、その場をできれば平和にすごしたい人で、誰かが怒るぐらいなら自分がヘラヘラ振る舞うことで、その場が少しでも落ち着く方がいいだろうと考える。でも正義感は持っているから、そこがホリガイの中での葛藤だったりすると思うんですけど。その場の空気を読みすぎて空回っているような感じを、自分の中で意識しながら演じました」

【ホリガイとの共通点は】
「昔は私、競争心がほんとになくて。正義感はなぜかあったんですけど。でも、誰かを傷つけてまで正義感を振りかざすというよりは、自分の中でいつも間違ってる間違ってないみたいなモノサシがあって。あとは誰かより勝ちたいとか、個性を持ちたいとかいうことはあまりなかったんですよね。撮影中はそんな自分を思い出すような時間でもありました」

【イノギとの関係について】
「2人の関係性が大好きで、うらやましいなと思います。イノギさんとホリガイの関係はいろいろな捉え方があると思っていますけど、私自身は友情とか恋愛を越えた関係性というか、本当に魂でつながっているソウルメイトのような、奇跡に近い出会いを2人はしたんだろうなと思っていて。ベタベタする関係ではないけれど、一緒にいて安心するとか落ち着くとか、そういった言葉にできない信頼関係みたいなものがあるんだろうと。演じていて、すごくうらやましかったです」

【女優という仕事について】
ホリガイはあるシーンで「やりたい仕事と合ってる仕事は違う」と言う。佐久間自身は?

「好きだからやらせていただいているんですけど、向いてないなと思うことがあります。でも、だからこそ頑張れる気持ちでいて。反省点は常にあるんですけれども、好きだからこそあきらめられないというか。向いてないと自分で思う瞬間があったとしても、やめたくないというか。そこが、好きが勝るということかなと私自身では思いますね。

向いてる向いてない、は自分や誰かのモノサシじゃないですか。でも、好きということは紛れもない事実。そこを向いてないという感情に持っていかれないように、好きという気持ちや夢を大切にしてもらえたらいいなと思います。ホリガイを客観的に見ていて『いや、大丈夫だよ』『できるできる』って思うんですけど、本人にとってはそれがすごくシリアスな問題。だから、そうやって少しでも寄り添えるメッセージが伝えられたらと思っています」

【メッセージ】
「生活していて、いっぱい間違えるし、いろんな経験をして気付くことっていっぱいある。私もこの映画を見て、まだ人生の途中、まだ続きがある、と。私自身もそうなので、見た方がそれぞれの思いを重ねて、自分を見つめ直す時間や誰かを想う時間が増えるきっかけになったらいいなと思っています。言葉にするのはすごく難しいんですけど。

この作品は、いろんな捉え方をしていただける映画だと、私の中で思っています。自分にコンプレックスがあったり、人と比べて劣等感を持ってしまったり、誰もがいろいろな悩みを持ちながら生きていると思うんですけど、そういう人でも、誰かのヒーローになれる。誰かと関わっている中で、無意識のうちに支えたり支えられていたりする。

そんなことを私はこの映画から感じているので、否定でも肯定でもなく、ただただ寄り添うような優しい映画として届いたらいいなと思います。こういった作品が若い世代から、こういう気持ちを懐かしく思う大人の世代まで幅広い人に届いたらいいなと思っています」

MOVIE
『君は永遠にそいつらより若い』

9月17日(金)より、テアトル梅田、京都シネマほか全国ロードショー

監督・脚本:吉田竜平
原作:津村記久子「君は永遠にそいつらより若い」(ちくま文庫)
出演:佐久間由衣 奈緒
小日向星一 笠松将 葵揚 森田想
宇野祥平 馬渕英里何 坂田聡
公式サイト:https://www.kimiwaka.com/
上映時間:118分
配給:Atemo
(C)「君は永遠にそいつらより若い」製作委員会

取材・文=高橋晴代


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