デスクワークや家事に育児で、肩こりや腰痛がひどい。なんだかずっと体が重たいし、背中はバキバキで頭痛までする…。体を動かした方がいいとは聞くけれど、なかなか時間がつくれないし、そもそも運動が苦手だ。そんな人でも隙間時間で簡単にトライできて、体調不良の改善や予防ができる“筋肉ゼロでもできるズボラゆるトレ”を漫画で発信しているのが、イラストレーターでマンガ家のいしかわひろこさん。

自身も運動が苦手だからこそ、誰でも取り組みやすいようわかりやすく解説された漫画が、多くの共感を集めSNSを中心に反響を呼んでいる。そこで毎週火曜日に更新している、健康にまつわる漫画を描きはじめたきっかけから、今すぐにでも始められるおすすめの運動・ストレッチ漫画を紹介!

■何事も健康あってこそ。運動が苦手でも取り組みやすい方法を模索
――どういったきっかけで絵を描きはじめたのですか?

「小学生の頃の夢がイラストレーターや漫画家だったのですが、出産と育児を機に描いてみようかなと思いはじめました。というのも、美術系の学校で自分よりもたくさん上手い人がいるのを目の当たりにし、諦めてしまった過去があり…。それからは大学でも工芸や立体といった絵とは違う専攻に進み、絵を避けながら違う道を歩んできました。だけど、子供が生まれて今までに比べると自由な時間が減ったことで、少ない時間で自分は本当に何がやりたいのかを見つめた結果、『やっぱり絵が描きたいな』『後悔しないように、やるならやろう!』と」

――原点に立ち返られて、夢を叶えることに。健康にまつわる漫画をテーマに選ばれたのはどうしてでしょう?

「最初はファンアートのような絵を描いていたのですが、本格的に絵の仕事をしたくて、好きだった漫画を描くようになりました。健康をテーマにしたのは、私にとって体の調子を整えることが絵と同じぐらい身近なものだったので描いてみたのがはじまりです」

――健康にまつわることがお好きだった?

「母親が健康オタクで、ツボ押しや整体の勉強をして実践していくのが好きな人だったんですね。それで昔から一緒になって教えてもらったり、体がしんどい時にマッサージをしてもらうと楽になる経験があったりと、体の調子を整えるのが生活の一部で。それで身近なテーマだし、練習も兼ねてスクワットを薦める漫画をSNSに投稿したところ、すごい反響をいただいて。その時、はじめて自分と同じように体がしんどいけど、運動が苦手な人たちがたくさんいることを知ったんです。それで私には、運動が苦手な人たちのためになるものが描けるかもしれないと思うようになりました」

――スクワットというと部活の基礎練のような苦しいイメージがありますが、いしかわさんの薦めはもう少しラフに取り組める内容ですよね。

「私もそうだったんですけど、健康のために運動が大事だとわかっていても、苦手だったり時間がなかなかつくれなくて取り組めないことってあると思うんです。その気持ちがすごくわかるので、誰でも簡単に取り組めるような内容で、『ちょっと聞いて!』ぐらいの感じで伝えた漫画だからこそ、共感をいただけているのかもしれません。実際に運動不足を気にされている方から、『実践してみようと思った』と言っていただけて、うれしかったです。正しい姿勢で行うと腰痛が改善され、全ての不調につながる姿勢が整い体調も良くなる上、引き締め効果で体のラインにもメリハリが出るので、運動不足の人ほどおすすめなんです」

――健康にまつわる知識は、お母様からの直伝で?

「母から教わったこともありますが、自分で勉強したり、最近は理学療法士の方に確認しながら漫画にしています。私自身は資格を持つ専門家ではないので、『運動が苦手な私でも取り組めて、実践してみたらこんな効果があった!』と、まずは体を動かすことが好きになるきっかけにしていただけたらと思って描いています。よくある専門書や動画解説では、基礎体力や時間がないと実践できないものもありますが、私の漫画は本格的なトレーニングをしたことがない、筋肉ゼロの人でも取り組みやすい漫画を心がけています」

――実際に体を動かし始めて、どういった変化がありましたか?

「今までは自分の体がポンコツな車のようで、運動への苦手意識が強かったんですね。だけど、ポンコツなりにクセを無くせば上手く走ることがわかったので、体を動かすことがどんどん好きになりました。具体的には、座りっぱなしでも腰や肩への負担が出にくくなったり、頭痛など体調不良で寝込むことが減ったりといった変化を実感しています。毎日が『すこぶる元気!』というよりは、しんどい日が減った感じですね。体調を崩しても自分でリカバリーし、ひどくなる前に自分でリセットできるようにもなりました。また、肌の調子もよくなって、調子が悪い時も悲壮感が顔に出なくなる美容効果も!」

――体のいい状態をキープできるようになると。

「そうなんです。以前は体調を崩すとずっとひきずって悪い状態が続いていたのですが、今は大事故にならないようなハンドルの切り方を知れたというか。一番避けたいこと自体は避けられる体になってきたので、不調で落ち込むようなことがなくなりました。なので、運動が苦手で私のように自分をポンコツだなと思っていても、自分の体を嫌いになりすぎず自分なりにおもしろがって、体を動かしながら健康になっていただきたいです」

――まずは簡単な運動から、少しずつ効果を実感すると取り組みやすいのですね。

「運動に慣れている人からは、『やればスッキリするし、メリットしかないのに』とよく言われるんです。けど、苦手な人からするとしんどいし、やりたくないものはやりたくない。昔、体育が嫌いだった人には、苦痛なイメージしかないんです。その上、多くの書籍や動画などの情報は、そういった苦手意識がある人には難しかったりキツいものが多い。なので私は基礎がゼロでもできるように、『やってみたら楽しいし、自分の体とうまく付き合えるよ』という漫画を意識しています。私も運動ができない側だからこそ、ハードルの低い私の漫画を踏み台に、どんどん高度な運動系の本や動画にステップアップしていただけたらうれしいですね」

――子育てとお仕事で時間が限られた中で、いしかわさんはどのようにして苦手だった運動を日々続けられているのですか?

「なるべく少しでも休憩を取るようにして、その時間に簡単なストレッチや運動をしています。例えば料理をレンジでチンしてできあがるのを待っている5分の間に運動するなど、ちょっとした時間を有効活用していますね。どうしても根っこが『運動をしなくていいならしたくない』スタンスなので、ガッツリ筋トレの時間をつくるようなしんどいことは、なるべくしたくないんです。なので、できるだけ“ずるいやり方”を試行錯誤して、その中でもひときわ良かったものを漫画にしています」

――中でも簡単で、お気に入りの運動は?

「かかとを上げ下げするだけのふくらはぎを鍛える『カーフレイズ』という運動です。座り仕事が多いと血の巡りが悪くなって、下半身が冷えたり足がむくんでくるんですけど、これは壁に手をついてかかとを上げ下げするだけで解消されるんです。簡単なんですけど意外とキツくって。だけど、できないほどしんどくもなく、やればやるほど下半身が動くし温まって、血が巡っているのを実感できて気持ちいいのでおすすめです。料理の合間や歯磨きなどふとした時に取り入れやすいので、ぜひ実践してみてほしいですね。実際に、これを機に運動が楽しくなったという声もいただいて、私の漫画がひとつのきっかけになれたことがとてもうれしかったです」

――小さなことからコツコツと、健康を実感していけたらモチベーションも上がりますね!

「無理せず自分の体と向き合いながら、まずはできる範囲で楽しく続けていただけたら。何事も健康あってこそだと思うので!と言いつつ、私も20代の頃は寝なかったり、調子は悪いぐらいがカッコいいと思っていた節があるんですけど(笑)。妊娠、出産を経験してからは、命にも関わることだから健康こそなにより大切だなと思うようになりました。今は若く綺麗でいるよりも、多少脂肪があっても風邪をひかず、なるべく体を動かせる自分でいたい。それは、歳をとってもおいしいパン屋さんに歩いて買いに行きたいし、調子が悪いことを理由にお仕事ができなかったり、挑戦したいことを諦めたりすることも避けたいですからね」

――まさに、健康第一ですね。

「本当にそう思います。私もなるべく運動はしたくないので、できるだけ簡単で続けやすい“ずるい方法”を見つけて発信するので、一緒に体を動かして健康を維持していただけたら」

――最後に、今後の展望についてお聞かせください。

「いつか1冊の本にまとめて、より多くの方に届けたいなと思っています。そのために、これからも自分と同じように運動が苦手だったり、時間の制限があったり、育児でなかなかお家から出られない人にも気軽に読んでいただけて、実践できる漫画を描き続けたいなと思います」

取材・文=大西健斗