その国や地域の文化や特色がはっきりと表れる「食」。それが色濃く表れるローカル食堂での体験や、タイの日常で出会ったエピソードを漫画にした作品がTwitter上で人気を集めている。話題を呼んでいるのは、タイの滞在経験が豊富なイラストレーターのまりこ(@mariko_asia27)さんが、自身のTwitterで公開しているタイの日常をつづった「タイのひとびと」シリーズ。10月1日に公開されたエピソードでは、タイのローカル食堂に立ち寄った際のほっこりする短編漫画を掲載。2.5万件以上のいいねが寄せられるなど大きな反響を呼んだ。

■圧が強いタイのローカル食堂…不安を吹っ飛ばす意外なおもてなしにほっこり
ある日、タイでオススメの食堂に立ち寄ったまりこさん。「入りづらい」と感じていた通り、メニューは地元向けでタイ語のみ、料理の写真も色褪せていて、どれを頼めばいいのかも分からないという日本人には少々ハードルの高い店だったのだ。

片言のタイ語や英語を駆使し注文するものの、店員の「アァ!?」という応答に思わず、たじろいでしまうまりこさん。これはタイ人が聞き取れなかった時に、聞き返すお決まりの態度なのだとか。そのままきびすを返した店員に「もう1回チャンスを…!!」と祈っていたところ、厨房から英語の話せる店員が登場。英語でオススメしてくれたメニューを注文することにし、ほっと一安心。

出された料理は絶品で、満足して会計に立つまりこさんだったが、店員たちはちらちらとこちらを見ながら何事かを話している。「美味しかったからまた来たいけど…歓迎されてない…!?」とまたもや不安になるも、二人の店員は息を合わせて「アリガトゴザイマース」と日本語で挨拶。まりこさんが日本人客だと気付き、日本語で応対しようと準備していたのだ。思わぬサプライズに「こちらこそありがとう…」と照れながら答えるまりこさんを見て、タイ人の店員たちは通じたことに大はしゃぎというエピソードだ。

まりこさんによると、これはタイ滞在の初期、「あ!!わたしやって行けるかも!!」と思えた印象的な出来事とのこと。Twitterユーザーからは「胸がきゅーーーんとしました!」「こんなんされたら一生通うわ」といった感想のほか、「タイに来たばかりで、タイ語の勉強始める前はこうだった」「タイに住んでいたので懐かしくなりました」と、タイへの渡航や滞在経験のある読者からの共感の声も寄せられた。

■「いい意味で無関心」漫画に描くタイでの滞在経験とその魅力とは?
本作のほかにも、ショッピングやタイで見かけた人々の話を漫画に描いているまりこさん。今回はまりこさんに、タイに足を運んだきっかけや漫画へのこだわりなどをインタビューした。

――タイでの日常を漫画に描いているまりこさんですが、まずはタイに滞在したきっかけを教えてください。
「タイは以前から好きで、2007年から毎年遊びに行っていたんです。イラストレーターの仕事はiPad Proさえあればどこにいてもできることに気付いて、2018年からは仕事をしながら長期滞在するというスタイルをとるようになりました。タイには屋台や食堂がいっぱいあって、掃除も洗濯もしてもらえるし、仕事に集中できてすごく気に入りました」

――その時の体験を漫画にしたわけですね。
「漫画を描き始めたのは、日本に帰って『タイでこんなに面白いことがあった』と、いくら友達に説明しても、いまいち分かってもらえずウケなかったことがきっかけです。私なりにこの楽しい経験を伝えたいと思って、漫画に描きました」

――ちなみに、これまでのエピソードで特に反響が大きかったものは何でしたか?
「タイの人々の意外なリアクションを現場レベルで伝えられたエピソードです。行きたいお店や、注文のための簡単なタイ語は調べればすぐ分かります。しかし、実際にその場で関わり合った時の空気感は体験して初めて知ることが多いです」

――まりこさんから見た、日本とタイとの文化の違いを強く感じた点を教えてください。
「タイの人は、他人が何をしていようと、いい意味で関心がないです。だからこそ自分の性別に縛られず生きてる人が大勢います。女装をしてようが男装してようが、その人の自由なのでほとんどの人が気にしない。大事なのは困った時に助け合うことだと考えているように感じられました」

――漫画にする上でこだわっている点や注意していることはありますか?
「本当にあったこと、大事な思い出になったことに基づいて描いています。また、街の雰囲気を伝えることが重要なので好きな風景を描きます。一度、きちんと定規を使ってパースも狂わないように描いたら、全然バンコクの街っぽくならなかったので全部フリーハンドで描いています」

――今後描きたいと思っているエピソードがあれば教えてください。
「今は仕事の合間に描ける5、6ページの短編を中心にしているのですが、時間ができたら離島で死にかけた話とか、警察官と交渉しまくった話など、もうちょっと長い話も描きたいです。タイ人以外の外国人の方々とも多く接するので、驚きが多くてエピソードに事欠かないです」

現地で過ごしたからこその生の感覚がこめられた漫画を読むと、タイへの興味がどんどんと湧いてくるはず。海外渡航が難しい今は、漫画を通してその魅力を垣間見てはいかがだろうか。


取材協力:まりこ(@mariko_asia27)さん