インディーズ映画のサブスクサービス・DOKUSO映画館が、11月27日(土)にオンライン映画祭を開催。そのオープニング作品として、口裂け女をモチーフにしたバイオレンスホラー『アタシ、キレイ?』が配信される。本作は新型コロナウイルスの影響でテレビや映画の撮影が止まり、エンタメ業界が混乱していた頃に企画・撮影された意欲作だ。

主演は、監督・脚本を務めたヨリコジュンとタッグを組んで企画を立ち上げた中村優一。2005年に俳優デビューしたのち、2007年の「仮面ライダー電王」で2号ライダーの仮面ライダーゼロノス(桜井侑斗)を演じ、注目を集めた。一時は芸能界を引退していたものの、2014年に俳優業に復帰した。

そんな中村に、本作の企画の裏側やインディーズ映画への愛、作り手側に興味をもった理由など復帰からの7年で考えたことについて語ってもらった。

■コロナ禍に配慮した作品作りをした『アタシ、キレイ?』
――まず、本作『アタシ、キレイ?』を企画した経緯を伺いたいです。

【中村優一】僕は休業中に映画をたくさん観たことで、単館系作品のおもしろさを知りました。復帰した頃は自分のプロフィールを持って新宿や渋谷の映画館を回り、好みの作品の監督に売り込みに行っていたくらい、インディーズ映画に興味を持っていました。

一方で、舞台でずっとご一緒していたヨリコさんに以前、自主制作映画を見せていただいてから、映像作品でも関われたらと思っていたんです。ヨリコさんは舞台でお忙しくて、なかなかそういうお話ができなかったのですが、コロナ禍で現場が止まって2、3年ぶりに休みができたと聞いて。一緒に何かやるなら今しかないかも、とご連絡したのがきっかけですね。

ヨリコさんはすごい勢いで脚本を書いて下さったのですが、僕はそこから何をどうすればいいか…という状態で。それで、コロナ禍で実現には至らなかったある舞台作品で知り合った、DOKUSO映画館の代表の玉井雄大さんに「俺、どうやったら映画にできるのかわからないんですけど、でもこの作品作りたいんです!」って電話したんです。突然の連絡にもかかわらず二つ返事で「やりましょう」と言っていただいて、そこから具体的にスタートしました。

――どんな作品ならコロナ禍でも実現できるのか、ということに配慮した脚本や現場作りをされていたそうですね。

【中村優一】脚本には、情勢に合わせた設定がしっかりと盛り込まれていて。治験を舞台にすることで違和感なくマスクや防護服を着用できますし、ラブシーンを入れたかったそうなのですが、“痛覚を感じるとペアリングする相手に快感が与えられる”という実験の被験者が登場人物なので、濃厚接触をせずにそういう表現もできます。

さらに、玉井さんがテレビドラマなどでやっている対策の資料を取り寄せてくださって、しっかりと感染対策をして撮影をしていました。撮影の様子を6台の固定カメラで全編生配信したのですが、それも、ちゃんと対策をしたうえで撮影しているよ、ということなんです。

――あえて見せることで、「裏側で“対策してます”とは言っても、実際はどうなの?」という疑問へのアンサーにもなるし、作品のプロモーションとしても新しいやり方ですよね。

【中村優一】きっと、DOKUSO映画館にしかできないことですよね(笑)。コロナ禍になった年に試行錯誤しながら撮った、忘れられない作品になると思います。

■インディーズ映画の魅力は「製作費とおもしろさが必ずしも比例していない」こと
――作り手側をやってみたいという気持ちはコロナ禍前からあったんですね。そもそも裏方に興味を持ったのはなぜですか?

【中村優一】俳優って、お声がかからないと仕事がないんですよね。それは普通のことなんだけど、僕は呼ばれないと仕事がないことがもどかしく感じてしまって…。オーディションやオファーで出させていただく作品は俳優として現場をまっとうしながら、ほかにやりたいと思うものを自由に自分たちで作っていくことができたら理想的なんじゃないか、と思っているんです。

――演じることがベースにありつつ、その可能性を広げるために製作側もやっていくのが自身に合ってるんじゃないか、と。

【中村優一】そうですね。あと僕、こんな風に繋がるんだっていう画を想像して演じたいので、どの作品でもカット割とかを全部聞いちゃうんですよ。そうやって勉強していたのが、作る側になった時にも役に立っています。逆に、作る側の視点を持つようになってからは、演じる時にも「監督はこの位置に俺が欲しいよね、こういう画が欲しいよね」っていうのがよりわかってきて。それぞれにプラスになっているように思います。ただ、作り手一筋でやってきている方に対して失礼にならないように、ちゃんと0から勉強して現場に立ちたいとは思います。

――では、どんなところにインディーズ映画の魅力を感じているんでしょうか?

【中村優一】お金じゃないというところです。監督が優秀なのか、脚本が素晴らしいのか、チームワークのなせるものなのか…いろいろありますけど、それなりの予算と期間しかない中で、どうおもしろい作品にするのか、実力で勝負しているのがインディーズ映画の魅力だと思います。お金をかけた作品はおもしろくて当然だろうって思うんですけど、インディーズ映画は製作費とおもしろさが必ずしも比例していない。この作品、すごいなって思った時の感動が本当に大きいんです。
■もし、芸能界に戻ってきていなかったとしたら…
――今はやりたいことにあふれている中村さんですが、芸能界を離れる時は相当な覚悟をされたのでは、と。その時のお話や、復帰の経緯についても伺っていいですか?

【中村優一】当時はもう芸能界に戻るつもりはなかったですね。とにかく目まぐるしく仕事をしている中、俳優は人を演じるのが仕事なのに、人の気持ちがどういうものかわからなくなってしまって、演じることができないと思ったんです。それで芸能界を離れようと決意して、しばらく普通の仕事をしていました。

それから、あるきっかけで今の事務所から俳優に戻ってみないか、と声をかけていただいて。「俳優として成果を出せていない僕にもう一度チャンスを与えていただけるなら、今度は完全燃焼するまでやってみよう」と思ったのが、復帰する時の気持ちでしたね。

――もし、事務所からの声がなければ、戻ってきていなかった可能性も…?

【中村優一】戻ってこなかったと思いますね。きっかけをいただき、人に支えてもらって復帰できたし、そのあともいろいろな人に支えてもらっていて、人との繋がりって自分にとってすごく大切なことだなと思うようになりました。

ファンの皆様ともそうで、一方的に僕を応援してくださいっていうだけじゃなくて、僕も応援したいんです。人と繋がっていたいと思ったから、YouTubeの生配信ではZoomを使って、視聴者の方の悩みとかいろいろな話を聞いています。アドバイスをするというか、それで少し気持ちがラクになってくれたらいいなって。それって本当はYouTube向けじゃないんですけど(笑)。あとは、例えばイベントに来てくれた人同士が友達になったりとか、僕きっかけで人との繋がりが芽生えたりするといいな、とか。僕をきっかけに楽しく生きてもらえたらいいなと思っています。

――復帰していなかった場合のご自身って想像できますか?

【中村優一】ADとか助監督からスタートして、裏方をやっていたかもしれないです。休業期間に違う仕事はしていましたけど、本当に自分が知っているのはこのお仕事のことくらいだし、俳優を辞めたのに映画とかを観ちゃっていたし…。そんな自分を振り返ると、やっぱり作品を作るのが好きなのかなって。俳優じゃなくても、違う立場で携わっていたかもしれないですね。

――映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』で復帰されたのも、ファンの方はうれしかったんじゃないかと思います。

【中村優一】自分の俳優人生って、仮面ライダーに支えてもらっているんですよね。最初は、あまり仕事がなかった18歳の時に受けたオーディションで「仮面ライダー響鬼」への出演が決まり、「仮面ライダー電王」では2号ライダーを演じて、いろいろな人に知ってもらうきっかけになりました。復帰したことも仮面ライダーで知ってもらえたし、人生のターニングポイントに仮面ライダーがいるんです。自分の人生を救ってくれた仮面ライダーは、僕にとってもヒーローなので、大切にしたいなって思っています。

■がむしゃらに頑張る、中村優一の原動力
――では、今後こうなっていきたいという理想の姿について教えてください。

【中村優一】やっぱり、俳優を続けながらも、企画や監督など作り手もやっていきたいです。逆に最近、俳優として作品に入ると、現場の仕事をしなくてもいいことに違和感を覚えてしまって。スタッフと一緒に机を運ぶ癖がついちゃったんですけど、僕の性格上、そういう方が合っているのかなって思いますね。

――その原動力はどこから生まれるんですか?

【中村優一】好みの作品に出合った時に感動した瞬間の気持ちですね。この気持ちを届けられたらいいなって。これまで生きてきた自分の心や頭の中を表現できるって、自主制作ならではじゃないですか。それを観てもらいたいから、長編でも短編でも映画は作りたいです。

――最後に、人生で2回も大きな決断をした中村さんから、自分の進路に悩んでいる人にアドバイスをいただきたいです。

【中村優一】アドバイスできるような立場ではないんですが、自分がやりたいと思ったことはやった方がいいと思います。人に迷惑をかけなければとことん手を出してみていいと思うんです。できなかったらできなかったで次の行動に移せるし、やってみないと選択もできないし。どうしてもやれない環境にいる人もいるから、悩むという選択肢があるとしたら、それは幸せなことだと思うんです。だから、やりたいと思ったことには一回踏み込むべきだと思いますね。

僕自身、もっと前のめりにいろいろやっておけばよかったって、後悔していることもあります。だから今、がむしゃらに頑張らなきゃなって思っていますし。後悔なく生きるっていうのが、僕の目標かもしれないですね。

撮影=鎌田瞳
取材・文=大谷和美