Twitterで自身の体験をコミックエッセイにして発信しているHimacoさん(@M_hytk09)。短期大学を卒業後、栄養士として働くなかで統合失調症を発症した。その経験を振り返って描いた「統合失調症と私」をコミックエッセイとして配信。大きな反響を呼んでいる。この作品を手掛けたきっかけなどを聞いてみた。

この作品は、Himacoさんが出版した絵本「統合失調症を患ったお話」がベース。「より詳細にしようとした結果、漫画という形を選びました」と、2022年7月からコミックエッセイのスタイルにしてTwitterで発表している。

■当事者でないと分からないような不思議な感覚を描いた
統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く精神疾患で、約100人に1人の割合でかかるといわれている。その原因は脳の機能にあると考えられている病気だ。

元々やや繊細な気質ではあったものの普通の生活を送っていたHimacoさんは、22歳のころとても不思議な感覚を得た。頭が回りすぎるくらい回転して鋭敏になり“思考が飛躍”。脳が勝手にどんどん小さな情報を拾ってはストーリーを作っていく。

すると、歩く人や車からも視線を感じるようになり、監視されているように感じ始めた。電車で隣に座った人の貧乏ゆすりを「何かの暗号か?」と脳が解釈してしまったり、周囲の会話が自分の意識と一致しているように錯覚してしまい「心の声が漏れてる!」と感じたり。脳がどんどん情報を集めて勝手に“意味を発見”し続けるため、Himacoさんは自分自身をコントロールできなくなってしまう…。

Himacoさんは、統合失調症の陽性症状である妄想や幻想などが見られ始めても、最初は病気とは思えなかった。この漫画では、妄想や幻覚の症状だけではなく、そこにどんな心の動きがあり、どうしてそのような状態になったのかが詳細に描かれている。特に、普通の生活を送っている状態から、いつの間にか統合失調症に陥っていくまでの描写は秀逸だ。

「健康な状態から、病的な考えに至るまでをグラデーションのように、流れを意識して表現しようと工夫しました。そのすべてが難しく感じたのですが、工夫することが楽しくて、描くのに夢中になりました」とHimacoさんは言う。

■当事者からの「描いてくれてありがとう」の声がうれしかった
「精神疾患を遠い世界のものではなく、身近に感じていただきたい」と思って描き始めたというHimacoさん。フォロワーさんや読者からのコメントも多く寄せられている。

「『描いてくれてありがとう』と言っていただけたのが印象的です。当事者の方からは共感の『ありがとう』が多く、その周囲の人からは『あの時彼(彼女)もこんな感じだったのかな…』と想像できたことに対する『ありがとう』が多かったですね。症状は人それぞれだと思いますが、漫画によってとっつきやすさを感じでいただけたようで、うれしかったです」と語る。

自身が統合失調症になってからは、「まず、心や根性の問題ではなく、脳の病気なんだということを実感し驚きました。そして統合失調症は遠くの世界の話ではなく、決して珍しくない病気であることを知りました」。また、病気になってからは「患う前と比べて疲れやすくなったりして、できないことも増えたのですが、一方で『できない現実』を受け入れて人を頼り、まったり生きていこうと思うようになりました」と心の変化を語る。

■コミックエッセイでは、絵本で描けなかった「その後」を描きたい
また発症時、どのように感じていたのかをメモ帳に書き溜めていたというHimacoさん。「当時から絵本やコミックエッセイにするぞ!とはっきり思っていたわけではありませんが、漠然と自分が経験した驚き・発見を誰かに伝えたいと考え、自分の体験した世界を表現したくて」。経緯を詳細に記録していたことが今のコミックエッセイに生きている。

現在、コミックエッセイは2年前に描いた絵本のエピソードをもっと詳細にしようと制作中。「統合失調症を患った時のお話は人から印象的に思われるかもしれませんが、その後の私の人生が続いていく様子を描きたかったんです。絵本の中では表せなかった紆余曲折や地域の中で暮らす工夫などを伝えたいです」。そして、当事者の方やその家族はもちろん、中学生・高校生など若い世代の人に読んでもらえたらと、今後の希望を語る。

Himacoさんの当時の症状や感覚が、水彩画タッチの優しい絵柄でつづられ、統合失調症を知らない人にも病気のことを知ってもらえる作品。参考になるので、ぜひ読んでみてほしい。

※症状の内容は個人差があります。漫画はあくまでHimacoさんの体験を元に描かれたものです。

取材・文=澤田佳代