長男のにぃくん、次男のおとくん、夫のだんさんと暮らす、4人家族の星田つまみさん(@hoshi.da)は、子供のことを中心とした家族の話を漫画にしてInstagramや育児系メディアで発信中。フォロワー3.5万人(2022年8月現在)を誇る、人気インスタグラマーだ。優しいタッチの絵で描かれた、兄弟愛や親子愛があふれたエッセイには、フォロワーからも「泣きそうになるくらい共感しました」「うちの子供たちも一緒です!」など、ほのぼのコメントが多数並んでいる。

今回紹介する「産声を聞かせて」は、現在9歳の長男にぃくんが、新生児仮死で産まれた時の出産レポート。第1話の冒頭に「結果的に母子ともに無事なお産となりましたが…」とあらかじめ断り書きを入れるほどシリアスな内容だ。「出産という貴重な経験、しかも異常分娩ということで、自分の中でもいつかこの出来事をまとめておいて、忘れないようにしたいという思いがありました」と描いたきっかけを語る。

■異常分娩の体験を忘れないようにと漫画に
物語は、第一子の陣痛が始まり、病室に来てくれた星田さんの実母がお腹の中の赤ちゃんの徐脈(脈が遅くなる不整脈のこと)に気づいたことから展開される。心拍が安定しないまま分娩することになり、その時の看護師や医者の判断、分娩法などに疑問を持ちながらも出産。

動かず産声も上げないわが子と対面したのは、出産してから15分後。そのうえ、赤ちゃんが生まれて7分間呼吸がなかったことから大きな病院へ搬送されることになり、母子が別々の入院生活を送ることに。NICU(新生児集中治療管理室)で治療する赤ちゃんの容態に異変が起きるたびに「分娩時の産院の対応に医療過誤があったせいじゃないの?」と疑ったことや、自身の行いに間違いがあったのではないかと思い悩んだ気持ち、担当医や看護師との心温まる触れ合いなど、入院生活での体験がつづられている。

■共感のメッセージに、同じような出産が起きていることを実感
「(この漫画を)誰かのために役立てたいとか、そういう思いはあまりありませんが、『母子ともに無事であることが当たり前じゃない、無事に生まれた場合は本当に奇跡』だと、そう実感した自分の気持ちは伝えたいと思って描きました」と星田さん。「ただ、現在妊娠中の方、出産を控える家族がおられる方には、不安を煽る内容になるだろうな、というためらいはありました。今回のような事態は事前に何か対策できるものではなく、アドバイスのようなこともできないので、ただただ『こういう事例もあるから心して』というだけのレポートになってしまうので、申し訳ないな、という気持ちです」

それでも、この漫画に救われたという声は多い。「この出産レポを描き始めてから、常位胎盤早期剥離や新生児仮死、NICUなどの経験者の方から『私も(同じ)です』とのDMをとてもたくさんいただきました」という。

「『数日前に産んで、今まさに赤ちゃんはNICUに入っています。これからのことが不安ですが、この漫画の赤ちゃんが今はもう元気なお兄ちゃんに成長していることを知って勇気もらえました』という方もおられました。共感を得たり、誰かの励みになるような漫画を描いていたつもりはなかったので、そういう言葉をもらえたことがとても驚きで、うれしかったです。割合的には少なくて稀な事例だとしても、やっぱり同じような危険な出産がある程度現実に起きていることを実感できました」と、実体験を語ることの意義を感じたよう。

また出産から8年半ほど経過し、描くことは自身の当時の気持ちを思い出すきっかけにもなるそうだ。「元気にすくすく成長した長男に対しては、最近はやんちゃがすぎてかなり強く叱りつけることも多くなりましたが、この漫画を描くことで『ただただ、元気でいてくれてありがとう』という当時の気持ちを改めて思い返すことができ、長男を叱りつける時も、脳裏に浮かぶ戒めのようになりました」と語る。

■今後は、ほっこりするよりハラハラする新連載を考え中!
「2人目の産休中にInstagramでよく育児漫画を閲覧して、何気ない日常を描き出した漫画に癒やされていました。わが子の日々成長していく様子もメモ的に絵にできたらな」と漫画を描き始めた星田さん。絵を描くことが趣味でもあり「描き始めると楽しく、あとで読み返して『こういうこともあったか』と思い出せることがうれしくて」と、描きためてInstagramで配信するようになったという。

今後の漫画については「連載で長く描くものは、わが子の話というよりも、私自身の今や過去の話になると思います。ほっこりする話よりもハラハラする話の方が描きやすくて、そういう過去の出来事を掘り起こして描いていこうかなと考えています」とのこと。また、「なにかと徒然クライシス」というブログでは、家族のエピソードを絵日記などで発表している。星田さんの今後の活動にも期待しよう。

※漫画は、星田さんの個人的な体験を元に描かれたものです。すべての類似したケースに当てはまるとは限りませんのであらかじめご了承ください

取材・文=澤田佳代