地球と同じく太陽の周りをぐるぐると回っている火星は、地球との距離が近いときは明るく、遠いときは暗く見える赤い惑星。火星と地球がそれぞれの軌道上で横並びになることを“最接近”と呼び、実は2年2カ月ごとに起こっている。2022年10月1日時点では約1億2000万キロも離れていた地球と火星の距離が、12月1日(木)には約8145万キロまで接近。距離が近づくにつれて、火星が非常に明るく見えるようになる。なお、最接近となる12月1日(木)の前後に、比較的長く楽しめるのも特長だ。

そこで、今回の最接近の楽しみ方を、プラネタリウム解説者の毛利勝廣さんに伺った。毛利さんは、ギネス公認の世界最大のプラネタリウムを備える「名古屋市科学館」(愛知県名古屋市)で天文主幹を務める、星空解説のプロだ。

■今回の最接近はここがスゴイ!
2年2カ月ごとに起こっている火星と地球の最接近。過去を振り返れば、2003年に約5575万キロという大接近があったが、今回はそこまでではない。それでも毛利さんが今回の観察をすすめる理由とは?

「太陽の周りを回る軌道は惑星ごとに異なり、地球はほぼ円形ですが火星は少し楕円形になっています。そのため、それぞれの軌道上で横並びになる最接近は2年2カ月ごとに起こりますが、距離も観測できる季節もそのときによって違います。今回は、それほど距離的に近いわけではないのですが、季節は最高です。全天に21個しかない一等星のうち、冬には7つが見えますが、ここに赤く明るい火星が加わるのです。冬の一等星とは、オリオン座のリゲルとベテルギウス、おおいぬ座のシリウス、おうし座のアルデバラン、こいぬ座のプロキオン、ふたご座のポルックス、ぎょしゃ座のカペラです」

■冬の夜空に「赤い三角形」が出現
冬の星座に、一等星にも負けない明るさで輝く火星が加わることで、夜空に出現する「赤い三角形」にもぜひ注目してほしい。

「星の色は白や青に見えるものがほとんどですが、冬の星座には赤や黄色の星が多く、ほかの季節よりも夜空がにぎやかになります。注意深く観察すると、冬の一等星のうち、プロキオンとカペラは黄色、ポルックスはオレンジ、ベテルギウスとアルデバランは赤に見えるでしょう。ここに、赤い火星が加わると、ベテルギウス、アルデバラン、火星による赤い三角形が完成。これはぜひチェックしてほしいですね!ちなみに、火星が赤い理由は、星の表面を鉄さびの砂が覆っているからなんですよ」

■火星が星の間を行ったり来たり!?
最接近となる12月1日(木)、火星は18時ごろに東の空から上ってきて、観測しやすい高さになるのは21時から真夜中にかけて。地域によって角度は異なるが、おおよそ東の空を見上げると見つけられるはずで、付近で最も明るく輝いているのが火星だ。年末にはちょうど日が暮れて空が暗くなったころから観測できるようになり、2023年春までは毎晩楽しめるだろう。

「火星最接近は、月食や日食と違って、長期にわたってその影響を観測できる天文現象です。惑星は星の間を縫うように移動していくので、この惑星ならではの動きを追うことも、今回の楽しんでほしいポイント。明るい冬の星座の中をどのように火星が移動していくのか、毎日の位置の変化を気にしてみるとおもしろいですよ。火星がこのような動きに見えるのは、地球が火星を追い抜くからです。並行して走る電車に乗っている時の光景を思い浮かべるとわかりやすいですね。自分が相手を追い抜くとき、相手が下がっていくように見える現象と同じ理屈です。スマホのカメラでもちゃんと撮影できますので、せっかく見るなら写真で見比べるといいかもしれません」


街中でも肉眼で十分に楽しめる火星。この冬は夜空を見上げて、赤い三角形を探してみよう。そして、時期によって三角形の形が変わっていく点に注目してほしい。


取材・文=大川真由美/取材協力=名古屋市科学館