これまでの人生を取り返すため、仕事を投げ捨てて“人生最高の旅”に出かけた男。その道連れは、ひょんなことから車に同乗することになった家出少女。陽気にふるまう二人の笑顔の裏には、それぞれの事情と闇が隠れていて――。

アプリ「マンガTOP」(日本文芸社)で連載中の漫画『この子知りませんか?』。本作は、無料のKindleインディーズマンガ(電子書籍)で20万DLを記録し、今年あらたに作者のてぃーろんたろんさん自身の手でリメイク連載がはじまった作品だ。

■おじさんと少女、ワケあり二人の“最高”で“最期”の旅
町工場で働く主人公の中山良平は、空白だらけの人生と訣別するべく、自動車で旅に出ることを決める。だが、その車中には、小学生の少女の姿があった。

彼女は、良平の職場によく顔を見せていた顔見知りの女の子・木口千秋。千秋は良平の計画を知り「あたしも町を出たいの!!」と同行をせがんできたのだ。もちろん、千秋をそのまま連れていけば良平はたちまち誘拐犯としてお尋ね者となってしまう。いきなり厄介事が舞い込み苦悩する良平だったが、彼女がワケありであること、そしてこの町から抜け出したいという思いは同じであることを察し、そのまま旅に連れていくことを決断する。

そうして始まった二人の旅。「やりたい事リスト」をもとに進む良平たちだったが、その雲行きは早くも怪しくなってくる。道中のトラブルのみならず、職場の上司や警察も彼らの足取りを追いはじめる。さらにはその過程で、良平の心の闇が断片的に浮かび上がり、普段は無邪気な千秋も、徐々に少女らしからぬ不穏な様子を見せはじめ――。

おじさんと少女、二人だけの逃避行と、その裏に見え隠れするさまざまな謎や思いが錯綜するロードムービー的作品だ。

■はじめての読者も二度目の読者も「驚ける」リメイク
インディーズの無料電子書籍では、読者の予想を裏切り続けるスリリングな展開の数々に反響を呼んだ作品。マンガTOPでの連載版では、作画の全てが緻密にリメイクされるだけでなく、インディーズ版にはなかったシーンも多く散りばめられ、ストーリーそのものも再構成されている。

2022年11月17日には待望のコミックス第1巻が発売され、ますます注目を集める本作。ウォーカープラスはその舞台裏を、作者のてぃーろんたろんさんにインタビューした。

――単行本の発売おめでとうございます。インディーズで話題を集めリメイク連載に至った本作ですが、もともと別作品の没ネタがベースにあったそうですね。

「もともとは『家庭環境が複雑な、本作の千秋のような子が、近所のおじさんの家にご飯を食べにくる』という内容のものでした。担当さんとともに企画は進んでいたんですが、ネタが弱いのと時代にそぐわないとのことでボツになりました。その後、アシスタントさんとの雑談の中で話が膨らみ、インディーズでの『この子知りませんか?』が生まれていきました」

――連載版では、まず緻密な作画が目を惹きます。良平の過ごしてきた町の存在感が増し、彼の息苦しさがより実感できるように感じます。

「連載版に描き直す際に担当さんに最初にお伝えしたのは、僕の出身地の雰囲気や、地元の人達の空気感でした。担当さんがそこを広げていきましょうといった話をしてくれたので、過去に自分の見た風景や思い出みたいなのを意識して作中の窪山町を描いていきました」

――また、インディーズ版にはなかったカットやシーンも多くあります。中でも、千秋のあどけなさと不気味さそれぞれを感じるシーンが散りばめられているのが印象的です。

「全体を通して、怖いだけじゃない話にしたいなとは思っていたので、千秋の可愛い部分と所々に出る人間味のなさは大事にした所ですね」

――シーンの追加やストーリーの補完に留まらず、物語そのものが再構成されていると感じます。リメイクする中で気付きや変化はありますか?

「打ち合わせをする中で、個人でやっていただけでは気づかない指摘があるので、そこでの気付きは多くあります。読者の方が、読んでいて『ここは分かりにくい』とか、『ここの話をもっと見たい』という形で話を再構成するので、楽しいですね」

――インディーズ版についてうかがった際、「個人連載時よりも先の2人の物語を描きたい」というお話がありました。連載版の構想は現在どの程度形になっていますか?

「打ち合わせや、プロットベースではざっくりと決まっています。ただ、インディーズ版と違ってめちゃくちゃバッドエンドになるだとか、物語の終わり方が大きく変わるようなイメージではないので、読者の方々には、そこはご安心いただければと思います」

――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

「『この子知りませんか?』をこの連載や単行本で初めて読む方には普通に驚いてほしいですし、インディーズ版からの読者の方には『めっちゃ描き直してんじゃん』と驚いてほしいなと思います」

『この子知りませんか?』(C)Tearontaron/日本文芸社