マキシマム ザ ホルモンが大好きな30代主婦で、1歳半差の年子がいる丸田マノさん。実体験を元にした育児漫画や創作漫画をInstagram(@marutama_mama)やブログなどで発表している。

Instagramをスタートさせたのは、2021年1月から。「自分が育児を始めて、さまざまな子育て漫画を見かける機会が増えました。私も漫画で記録を残せたらいいな」と思ったのをきっかけに描き始め、現在フォロワーは2.8万人を超える。

■娘の足の付け根がぽっこり膨らんでいる…。それが、大ごとになるなんて!
さまざまな作品の中でも、読者からの反響が大きかったのが、「娘が『そけいヘルニア』で手術した話。」。そけいとは、足の付け根の部分(そけい部)のこと。そけいヘルニアとは、そけい部の筋膜が弱くなることで、腹膜や腸の一部が皮膚の外に出てしまうという病気。子供の場合は、生まれた時から筋肉の一部が薄くなってしまっていることが原因のようだ。

※本作で紹介している症状は、個人の体験談でありすべての人に当てはまるものではありません。症状で悩んでいる場合は医師・看護師等の専門家に相談してください。また、センシティブな内容を含む為、閲覧にはご注意ください。

この作品は「娘(当時4歳)の手術が決まったときに、検索サイトやSNSでいろんなことを調べる“検索魔”となってしまったんです。でも意外とまとまった情報が見つからなかった。そこでそけいヘルニアで手術する人が同じことで困らなければ良いなと…。またその不安な気持ちに寄り添えるようなものが描けたらいいな」と描き始めた。

そのとおり、読者からは「自分も●歳の時に手術しました」「子供が手術します」などのコメントが多く、「想像以上に、ご自身やご家族が同様の手術を経験された方が多く驚きました」と、マノさん。そして「自分の家族のように娘を心配してくださった方、私に応援の言葉をくださった方に心から感謝しています」と語る。

■「同意書が怖い」「自分が判断したことの責任の重さから手が震えた」など心境を素直に描写
マノさんは、娘が手術した当時、心境などを書き止めることはせず、「無意識に覚えている部分=印象が強かった部分だと信じて、その部分にフォーカスを当てて描いたつもり」とか。

漫画では、ぽっこり膨らんだそけい部に初めて気づいた時や、その後にどんなタイミングで再度気づいたか、またSNSで調べた時の気持ちなど、状況や心情が細かく表現されていて、臨場感にあふれている。

『手術の同意書の内容が怖い』と描かれた第9話では、麻酔のリスクや身体抑制の同意などが扱われている。「万が一そういったリスクがあっても同意しなければならないというのは、身が削られる思いだった」という丸田さんの心情が描かれていて、読んでいても胸が締め付けられるような思いに。コメント欄でも同じような経験をした人たちが同意書にサインをする戸惑いや恐怖などを書き込むなど、大きな共感を呼んでいる。

また、この作品を描くにあたり「きれいごとだけで終わらせないようにしました。例えば13話では自分の失敗に焦点を当てて描いています。『これはお母さん(私)が悪いわ』などDMで厳しいお声もいただきました。ですが備忘録として残す以上、漫画上でもそこも含めた“ノンフィクション”を貫こうと思い描きました」と言う。そんな真摯な姿が反響の大きさにつながっているのだろう。

■これからは創作漫画を中心に展開予定!書籍化を目指します
2人の子供の育児漫画も人気があるが、創作漫画にも取り組んでいるマノさん。「ことし、子供が主役の漫画の割合を減らす予定」と、SNSで報告している。「育児記録として漫画を描き始めましたが、今は絵を描く楽しさや漫画の奥深さに触れ、創作漫画を中心に描いていきたいと考えています。テーマ性のある創作漫画(『ぼくのパパにはタトゥーがある』ではタトゥーの在り方について考える作品を描きました)や、現在は古典落語『芝浜』を原作に『お金と幸せ』についての創作漫画を描いています」

さらに「自分の漫画が書籍化されるのが夢です。そして追いかけて約18年目の、世界で一番好きなバンド、マキシマム ザ ホルモンさんから絵のお仕事の依頼が来ることが夢でございます!!夢はでっかく!」とのこと。これからの活動にも注目したい。

取材・文=澤田佳代