三菱が作ったPHEVの使用済みバッテリーを使った街路灯! じつはもの凄く合理的で優れたアイディアだった

この記事をまとめると

■三菱自動車は、電動車の使用済みバッテリーを活用した自律型街路灯の実証実験を開始

■日中の太陽光発電によって蓄電した電力を使う街灯を愛知県の岡崎製作所内に設置した

■日産自動車も2018年から同様の取り組みを行っている

リチウムイオンバッテリーは廃車後も60〜70%の容量が残っている

 三菱自動車工業は、プラグインハイブリッド車(PHEV)で役目を終えたリチウムイオンバッテリーの再利用として、系統電力に依存せず、日中の太陽光発電によって蓄電した電力を使う街灯を、愛知県の岡崎製作所内に設置し、今後の実用化へ向け実証実験をはじめた。

 同様の取り組みは、日産自動車も傘下のフォーアールエナジー社と福島県浪江町の協力により、2018年にプロジェクトとしてはじめている。

 電気自動車(EV)などに車載された駆動用のリチウムイオンバッテリーは、廃車後もまだ60〜70%の容量を残している。理由は、クルマは加減速を頻繁に行うため、瞬発力が必要で、バッテリー容量が少なくなると淡々と走行することはできても、発進加速や追い越し加速などで十分な動力を発揮できなくなるからだ。そこで十分な加速性能を実現できなくなった時点でクルマ用としての用途は終わる。

 しかしながら、定置型の電気製品では、急な出力変化は起こりにくく、ある一定の電流で使われることが多いため、バッテリー容量の減ったリチウムイオンバッテリーでも、まだ活路が残されることになる。

 リチウムなど資源の有効活用をするうえでも、廃車後のリチウムイオンバッテリーの二次利用は不可欠だ。また、リチウムイオンバッテリーを二次利用する場合は、その電気機器における製造時の二酸化炭素排出が無関係となるので、製造から廃棄までのライフサイクルでみた脱二酸化炭素においても、より環境負荷の少ない機器や施設として利用していくことができる。

自律型街路灯は山奥や荒野にも設置できる!

 ほかに、太陽光発電と二次利用のリチウムイオンバッテリーを活用した街灯の場合、系統電力と関係なく、必要な場所に明かりを提供できるので、設置費用を抑えることもできる。

 日本国内は、津々浦々に系統電力が整備されていると思いがちだが、人里離れた場所や、東日本大震災のような大災害にあった地域では、系統電力が行き届きにくい場所がある。そうした場所に街灯を設置しようとするなら、通常であれば電柱を立てるなどして系統電力を引き込まなければならない。しかし自律型の街灯であれば、山奥でも荒野でも、明かりを灯すことができるのである。

 闇夜に明かりがあることは、人の心を和ませる力もある。

 世界的なEVの浸透によって、一充電走行距離の長さや、短時間での急速充電の能力ばかりが取り沙汰されがちだが、じつは日産や三菱自のように、10年以上に及ぶEVとPHEVの販売経験を持つ自動車メーカーはほかになく、廃車後のリチウムイオンバッテリーの二次利用など、資源の有効活用に目を向けている例は限られている。

 海外では、ドイツのアウディが、急速充電施設の蓄電用として試作EVのリチウムイオンバッテリーの二次利用を行うが、販売された数多くのEVが廃車になるまでにはまだ数年の歳月が掛ると考えられる。そこで大量に使用済みとなるであろうEV用リチウムイオンバッテリーの再利用や二次利用まで手が回っていないのが実態だ。

 脱二酸化炭素の取り組みは、単にEVを普及させるだけでなく、リチウムイオンバッテリーという資源を最後まで使い切る、幅広く奥深い視野での資源の有効活用が不可欠である。そういう視点を持つ自動車メーカーとして、日産と三菱自は世界の先端にある。