「あまり売れない色」が使われることも多数! クルマのカタログ表紙などのボディカラー「訴求色」ってどう決まる?

この記事をまとめると

■カタログのメイン写真などに使われているボディカラーは「訴求色」と呼ばれる

■訴求色というのは「白」「黒」「シルバー」といった売れ筋のカラーでないことも多い

■同じモデルでもグレード毎に色を変えてクルマのキャラクターを個別に表現している

あまり売れるイメージのない訴求色、どうやって決めてる?

 日本におけるボディカラーの定番と言えばホワイト、ブラック、シルバーといったモノトーン基調のカラーたちだ。しかし、クルマのカタログを見ると、表紙を飾っているのはカラフルなボディカラーを身にまとったクルマばかり。売れ筋であり、リセールバリュー的に有利になりがちな定番カラーではなく、なぜカラフルなボディカラーが選ばれるのだろうか?

訴求色はどうやって決まるの?

 カタログの表紙などに使われるボディカラーはその車種のイメージカラーやテーマカラー、訴求色などと呼ばれる。この訴求色は車種ごとのコンセプトやブランディング、マーケティング上の狙いによって決められている。

 わかりやすい例で言えば、マツダの「ソウルレッドクリスタルメタリック」やスバルの「WRブルー」などだろう。マツダの「ソウルレッドクリスタルメタリック」は2016年にCX-5で初登場したが、カラーも造形の一部として考えており、このカラーはマツダのデザインテーマである「魂動デザイン」の造形美を質感高く際立たせるため、またマツダ車のデザインに合うように開発された。だから「最近のマツダと言えば赤」というイメージが強いのだろう。

モデルごとに訴求色が異なるメーカーは?

 自動車メーカーによって考え方は多少違うものの、多くのモデルの訴求色は、フルモデルチェンジやニューモデル登場時にモデルやグレード、世界観やターゲット、コンセプトなどさまざまな要素を加味して訴求色を決めている。

 コンセプトがわかりやすいモデルとしてジムニーを例に見てみよう。本格クロスカントリーモデルであるジムニーは、ファッション性や高級感よりも、性能を第一に考えている。そんなジムニーでは機能として、「目立つ性能を持つ色」と「隠れる性能を持つ色」に目標を定めた新色が開発された。それがジムニーの訴求色となっているキネティックイエローと、ジムニーシエラの訴求色となっているジャングルグリーンだ。

 目立つ性能を意識したキネティックイエローは、林業従事者や山岳レスキューなど、森のなかで目立つ必要がある人たちを中心にターゲットとしたカラー。暗い森の中や悪天候でも目立つ色を求め、もっとも視認性の高い色を追求して開発された。

 隠れる性能を意識したジャングルグリーンは、ハンターなど森のなかで隠れたい人たちを中心にターゲットとしたカラー。自然と一体になることをテーマに、自然への馴染みや目立たないことを第一に考えて開発された。そのため、アルミやパールなど光輝材などを一切使用しないソリッドカラーとなっている。つまり、迷彩色と同じキャラクターだ。

 このように、機能性を持たせたカラーを訴求色にするあたりは、ジムニーのコンセプトが明確に表れた結果と言えるだろう。クルマのコンセプトやイメージ、さまざまな背景から訴求色は決められているのだ。

同じクルマでもキャラクターが異なればボディカラーも変える

グレードごと訴求色を用意することも

 プラットホームや基本デザインを共通とする車種でも、グレードなどが異なれば、それぞれに訴求色を用意する場合もある。たとえばホンダのステップワゴンがそれにあたる。

 現行ステップワゴンはAIRとSPADAのふたつのグレードが用意されている。シンプルでクリーンなAIRには2色の専用カラーが用意されていて、そのなかから色彩の明るいフィヨルドミスト・パールがAIRの訴求色として選ばれている。

 対するSPADAは、力強く品格があって精巧なイメージを重視している。このイメージに合わせてコチラも2色の専用カラーが用意されているのだが、どちらもあえて色彩の暗い色となっている。このなかからSPADAの訴求色としてトワイライトミストブラック・パールが選ばれている。

 このように、同じ車種や兄弟車であっても、それぞれのグレードやブランドのイメージによって異なるカラーを訴求色とすることがあるのだ。

新色をあえて訴求色にすることもある

 そのほか、マイナーチェンジなどで新色がラインアップに加わったときは、そのカラーを訴求色に採用する例などもある。たとえば去年マイナーチェンジを行ったフィットには、追加グレードとしてRSがラインアップに加わった。このRSの訴求色として選ばれたのが新色のスレートグレー・パールであった。スポーティなRSのイメージに合わせて、クールなイメージであり、新色として認知を広めたいカラーを選んだという狙いがあったものと思われる。

 このように、訴求色は車種やグレードごとのイメージやマーケティング上のターゲットによって決められる。「自分が好きな色を選ぶ」というのも重要だが、自分が理想とするライフスタイルのテーマカラーをイメージし、そのカラーに近い訴求色を採用しているモデルがあったら、そのクルマは自身の生活にピッタリの選択かもしれない。