地域ブランドを構築するヒント

地域ブランドを構築するヒント

【緊急告知】

未来を創る財団プロジェクトの一つ「地域おこし人サミット」で第2回サミットを開催いたします。
日時:6月29日(土)14:00 〜 6月30日(日)15:30
場所:千代田区永田町「全国町村会館」帝国ホテルグループ
地域おこしのキーパーソン100名が全国各地から集結し、うんちくを傾け、交流を通じて、さらなる地域おこしに邁進します。
土曜日夜は、18:00〜キーパーソンの集う懇親会を開きます。会費は5000円ですが、ニュースレター読者と記載いただけば、ご招待申しあげます。詳しい内容、お申し込みはつぎのURLでお願いいたします。
http://www.theoutlook-foundation.org/admin/wp-content/uploads/2019/05/173026fec50c3b083b69a0494ac61041.pdf

 経済ジャーナリスト磯山友幸氏による、月刊Wedge連載「地域再生のキーワード」では丸4年全国48カ所をめぐってきた。このほど、連載のなかで登場していただいた方々を中心に集合していただき、「未来を創る財団」(國松孝次会長)主催で「地域おこし人(じん)サミット」を開催した。今回のテーマは「地域ブランド構築」。

水代 コーディネーターの水代優です。「地域ブランド構築」をテーマに、カテナ代表の宮田理恵さんにプレゼンテーションをしていただきます。地域ブランドを担う商品をどうやってつくっていくかとか、それを盛り上げるイベントとか、どういったことをやられているかという事例を簡単にまずはご説明いただきたいと思いますので、宮田さん、どうぞよろしくお願いいたします。

宮田理恵氏(写真、生津勝隆)

宮田 私は宮崎でカテナ株式会社という女性だけの会社をやっております。特に地域のことを盛り上げる商品開発のアドバイスだったりブランディング、それからデザインなど、トータルでつなげていくということをしています。それから、その中でも輸出入の事業で、EUを中心とした輸出ですとか、逆にイタリアを中心とした、日本に輸入するという形のお手伝い、つなげるお手伝いですね。

 「カテナ」というのがラテン語で「つながり」とか「鎖」という意味があって、私は「何業ですか?」とよく皆さんに言われるんですが、「つなぎ業」というふうに言っています。つなげることのトータルプロデュースのお手伝いが主になっています。そのほかにも最近、宮崎市の移住センターという場所で、移住政策などもやらせていただいています。

 特に私が今中心に行っていることが、宮崎の素晴らしい文化を世界中の人にもっと知ってもらうということ、それをまた地域をつなげるということに力を一番入れていっています。宮崎伝統野菜の「佐土原ナス」のブランディングです。また「フーディング宮崎」といって、飲食業、レストランのシェフなどをつなげることで、レストラン業・飲食業のレベルを上げて発信していくことで、また、技術を磨いていく。これによって国内外からのお客様を宮崎に逆に呼び込むというような仕掛けづくり、こういったこともやっています。

 今日、皆さんにお話しする一つは、宮崎完熟キンカンの「たまたま」というフルーツについてです。こちらの仕掛けのお話を中心にさせていただきたいなと思います。

 実は宮崎県は、キンカンの生産量が全国の60%以上と、日本一の生産量を誇っているんです。ただ、キンカンというと、皆さん、どうですか。どういうふうに食べることをイメージされますか。お正月にお母さんが炊いてくれたような感じの、甘く炊いてくれたようなイメージがあって、なかなかキンカンが好きという人に今まで会ったことが私もなかったんです。

 知らない方も多いと思うんですが、かつて冷害があって、キンカンの木がたくさん枯れてしまった年があったそうなんです。こんなことが今後も起こるなら、いっそハウスの中に入れて育ててみようということで入れたら、玉が大きくて甘い、ふわふわとした玉がたまたまできた。このたまたまから、じゃあ、品種が違うわけでもないんだけれども、ハウスに入れてたまたま大きく甘くなったものを、「たまたま」という別ブランディングにして出そうということになったんです。

 それで、「たまたま」というのと「たまたまエクセレント」と、2種類のブランドフルーツとしてブランディングを始めています。品種は一緒で、大きさと糖度の違いだけで別ブランドとして出すというやり方なんです。

 よく「品種が違うんですか?」と言われるんですが、実は皆さんたちが普段食べているキンカンと同じ品種なんです。ただ、甘さが本当に甘くて、生で食べてもらいたいということで、生食を推進していっていたのですが、実際は県民ですら約7割が食べたことがない。

 私がやった5年前から、宮崎県の「みやざきブランドマーケティングアドバイザー」というのに就任させていただいたときに調べた調査によると、県民でさえ3割ぐらいしか食べたことがない。自分も食べたことがないものをほかに贈ったりしませんよね。これが私の最初のミッションで、知事のほうから「『たまたま』をはやらせろ」というのが私の最初のミッションでした。

 私の考え方としては、やはりまず地元から。地元の方が推奨しなければ、いくら県外、国外に持っていったところで人気が出ない。もしくは人気にちょっと火がついても長く続かせることができないというのが私の持論なんです。

 そこで、どうやったら生でキンカンを食べていただくことができるかなと思ったときに、私は実はワインソムリエでもあるんですね。フランスのボージョレ・ヌーボーというのが、世界ではやっているのは唯一日本だけなんです。

 以前ほどの人気はないにしろ、フランスの国民ですらボージョレとかそんなに言わない、と。「ボージョレ村ではなくて、実はほかにも9地区がヌーボーを推進しているのに、どうして日本人はボージョレ村が好きなんだ?」と質問をされるほどなんですね。

 これはフランス食品振興会のもくろみが日本で当たったという、世界でも笑い話になる一つの事例なんですが、私は、これは日本人の根底にある初物の縁起物だったり、初物好きの性格という、それがぴったり合ったんじゃないかなというのをいつも思っていました。

 だったら、この「たまたま」にも解禁日をつくったらどうかと思ったんですね。市場関係者に聞いたところ、解禁日はなく、市場が決めている、大体、出るようになったら市場が決めているということを聞いたんです。だったらこちらのほうで決めましょうということで、1月15日を解禁日として定めました。

 勝手に5年前に県と相談して。普通、県庁とか官公庁と一緒に仕事をやるのは大変ないろいろなことが、進みが遅かったり難しいというふうにいわれているんですが、私は、一緒にやっていけないかな、もしくはJAさんとか経済連も一緒にやっていくのが私の夢で、私の事務所でこんなアホな顔をしながら、「たまたま」がはやる日を夢見ながら、夜な夜な会議を進めていったわけです。

 それで、その次の戦略として、解禁日をつくって、その後どうしたらいいかなというのをみんなで考えたところ、まずはわかりやすいシンボルロゴが要るんじゃないだろうか。またキーカラーも整えていこう。それからキャッチフレーズですね。これは炊いて食べるのではなくて、生で食べてもらうフレッシュフルーツなんだということをわかってもらいたい。それから、一番力を入れたのが、ブランディングのイメージアイテム。この4つがブランディングには必要じゃないかと私は感じていました。

 特にブランディングイメージアイテムとしては、「たまたま」自体はあまりブランディングできてないものだったので、それを引き上げてくれるようなパートナーを何にしようかということを考えました。

 ソムリエはマリアージュが大事ですから、食べ合わせでいくと、私は、ショコラかシャンパンが合うんじゃないかということを提案したんです。それで、どちらにしようかということになったときに、やっぱりシャンパンがいいということで、シャンパンと「たまたま」を一緒に、お祝いで「たまたまシャンパン」、通称「たまシャン」と呼ばれているんですが、「たまシャン」でお祝いしよう、ということがキャッチフレーズになり、また宮崎のフルーツキンカンということで、フルーツなんだよ、というようなことをアピールし、始まったイベントなんです。

 解禁日には、この「たまたま」のカラーであるオレンジの、お金をかけずに華やかさを出すということで、風船に新しいロゴを付けたものとか、「たまたまシャンパン」で乾杯するというようなイベントを、大体宮崎だと150人、東京だと100名ぐらいで開催をしたんですね。

 もちろん皆さんには自費で集まっていただいて、乾杯した後には「たまたま」料理を食べていただいて発信していただくということをやっていただいていて、今では、宮崎、東京、大阪以外でも福岡、あと県内でも5カ所くらいで自主開催で盛り上がっています。

 特に産地も、最初は農家さんたち、これに参加してほしいと言ったときに、メインカラーであるオレンジを必ず身に着けてください、ということを言ってあるんですね。しぶしぶ百均で買ったオレンジのネクタイをして、「何で俺たちがこんなのに参加しなきゃいけないんだ」とか、「こんなちゃらちゃらしたパーティーで本当にキンカンの人気が出るんだろうか」、ということをちょっと疑惑の目で、やる気なく参加をされたんですけれども、実際に参加された皆さんが、「おめでとう」とか「ありがとうございます」とか「一緒に記念撮影してください」とやることで、農家さんたちの気持ちがどんどん変わってきたんですね。

 今まで経済連に出しても「ありがとう」なんて言われたことが一回もない、「おめでとう」と言われたことがない、210日もかかってこの小さい果実をつくっているのに「ありがとう」と言われたことがないのが、「ありがとう」とたくさんの人に言われることですごく気持ちが変わる。

 ただ、1時間ぐらいしたらみんなで帰っていかれたんです。それで私、慌てて追い掛けていって、「何か嫌なことありましたか?」と言ったら、涙ぐんでいらっしゃって、「もう胸がいっぱいでこれ以上いられない」と。「来年は息子たちも連れてくるし、もっと多くの農家さんたちを連れてくるよ」と言って、今ではもう農家さんたちのほうがプロモーションという言葉を覚えて、「プロモーションやろうや、プロモーションやろうや」ということで積極的に参加をしていただいています。

ソーシャルメディアの活用

 また、パーティーの中では、必ず2時間のパーティーの中の真ん中の1時間後にソーシャルで発信してください、と。ソーシャルをやってない人は、電話でも電報でも何でもいいです、とにかく皆さん、1つは発信をするように、ということを事前に言っておきまして、カウントダウン、「3、2、1」で一斉発信というのをやるようにしているんです。

 これで参加者には必ず発信をしていただくということをやって、お金をかけずに発信するというスタイルをこの「たまたま」のヌーボーのパーティーで一つ確立をして、今本当に人気が上がってきて、年々派手になり過ぎて、ちょっと心配するぐらい盛り上がっているところです。

 特に地味だったキンカンをこのようなパーティーメニューで演出することによって、またビジュアルでソーシャル――インスタグラムとかフェイスブック、ツイッターなどで発信していただくことによって、タイムラインが一気にオレンジになった、とか、見ているうちに気になって注文した、というシェフが出てきたり、皆さん、イメージを起こすことによって初年度から売上と売上の金額、出荷の個数が増えて、農家さんたちはすごく盛り上がってきてくださっているんです。

 これは、宮崎の一番街という夜飲みに行くところの通りで一斉に7時に乾杯をしている様子です。もちろん知事も自らかぶり、一緒にサプライズゲストとして毎年参加していただいているんですけれども、このときにできるだけわかりやすくするために4年前につくったこのかぶり物が人気を得て、今ではたくさんのかぶり物ができました(笑)。


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