最期まで自宅で暮らす幸せを支援する医師・佐々木 淳

最期まで自宅で暮らす幸せを支援する医師・佐々木 淳

本記事掲載のWedge5月号『創刊30周年記念インタビュー「新時代に挑む30人」』では、「ホンダジェット」の生みの親・藤野道格氏 やラグビー日本代表・リーチ・マイケル氏、USJ復活の立役者でマーケターの森岡毅氏、大峯千日回峰行を満行した大阿闍梨・塩沼亮潤氏など様々な分野で令和の時代を牽引していく30人にインタビューを行いました。

2025年には5人に1人が75歳以上となる。自宅で最期を迎える時代を見据え、佐々木は開業医や介護施設を巻き込み、在宅医療というインフラづくりに取り組んでいる。

 佐々木淳が理事長を務める悠翔会は、首都圏を中心に在宅医療を展開する医療法人だ。日中に担当する患者は約4000人、休日夜間を合わせると7000人の患者に24時間体制で在宅医療を提供している。

 現在の東京の後期高齢者の数は23区だけで100万人、首都圏ではこれからの20年間でその数が2倍以上に増加すると言われるが、そのなかで彼は次のような問題意識を持って仕事を続けてきた。

 「誰もが自宅で亡くなる時代がやってくる。要介護者が急増する時期までに、どんな人でも穏やかに家で暮らし続けられる在宅医療の体制を作りたいんです」

 佐々木が悠翔会を設立したのは2006年。当時、アルバイトで勤務していた在宅医療のクリニックで、難病や不治の障害を抱えた多くの患者と出会ったのがそのきっかけだったという。例えば彼が今でも印象深く語るのが、人工呼吸器と胃ろうを付けて暮らすALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者のことだ。

 「人工呼吸器を付けると本人も家族も機械に縛られ、その後の人生を生きていくことになる。その選択は誰も幸せにしないかもしれないという思いがあり、人工呼吸器による延命治療に僕は否定的だったんです」

 だが、その女性患者の日々の生活は、これまでの自分の考えを変える力を持っていた。彼女は眼球の動きを使った文字盤での会話で、「人工呼吸器は設定をしっかり調整すれば、普段は付けていることも意識しないくらいだ」と言う。また、ときにはホテルのビュッフェに家族と行き、料理や好きな赤ワインを口に満たして味を楽しんでいた。目標は本を書くことで、目の動きによるキーボード入力で原稿を書いてもいた。


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