バイデン大統領は就任以来、過去の問題ではなく将来の課題に取り組むと述べてきた。過去の問題とはアフガニスタンでの対テロ戦争と国家再建のことであり、カブールの陥落が想定よりも早かったにもかかわらず、バイデンがアフガニスタンからの撤退方針で揺るがなかったのは、ビン・ラディンを殺害した時点で終わるべきであった対テロ戦争に終止符を打つという信念を貫いたからである。

 一方、将来の課題とは中国との戦略的競争を意味する。米国が20年にわたる「永遠の戦争」の泥沼にはまっている間に、中国は高い経済成長を背景に軍事力の近代化を進め、米国の覇権に挑戦するようになった。バイデン政権は、中国との戦略的競争に本腰を入れるため、インド太平洋地域を重視する姿勢を示しているが、アフガン戦争の終結によってこれを実現することができるのであろうか。

(AP/アフロ)

中国を戦略的競争相手とみなす中でのアフガン戦争

 米国はジョージ・W・ブッシュ政権以来、中国を戦略的競争相手とみなし、アジアを重視する姿勢を示してきた。しかし、ブッシュ政権は9・11によってアフガンでの対テロ戦争と国家再建を余儀なくされ、またイラク侵攻によって自ら中東に戦線を広げてしまった。

 続くオバマ政権はこれら2つの戦争を終結させ、アジアに軸足を移すリバランシング政策を掲げたが、ビン・ラディンの殺害後もアフガニスタンの治安は安定せず、またイラクでのイスラム国の台頭などにより中東から抜け出すことはできなかった。

 トランプ政権は、対テロ戦争よりも中国との戦略的競争を国家安全保障戦略の柱に据え、アフガン戦争を終結させるためにタリバンと平和交渉を行い、米軍を撤退させることに合意した。バイデン政権は、トランプ政権の方針を引き継いでアフガン戦争を終結させたことになる。

 しかし、アフガンからの米軍撤退によって、バイデン政権が中国との戦略的競争を必ずしも有利に進めることができるとは限らない。