高校生の頃、友人から「自民党総裁と内閣総理大臣偉いのはどっち?」というクイズを出されたことがあった。残念ながら答えは聞きそびれたが、実際自民党65年の歴史の中で自民党総裁が内閣総理大臣になっていないのは2人のみでそのうちの1人が河野太郎候補の父である河野洋平氏であるのは歴史の巡り合わせと言えるかもしれない(もう1人は谷垣禎一氏)。

 内閣総理大臣に最も近いのが自民党総裁なのは間違いないから、自民党総裁選が注目される理由だろう。去る17日に告示された自民党総裁選は29日に投開票されるが、現段階で誰が選ばれるのか、神のみぞ知るところである。

(代表撮影/ロイター/アフロ)

自民党総裁選候補者の経済政策

 先に述べた通り、自民党総裁が一番内閣総理大臣への近道なので、財政規律と世代間格差是正を重んじる本連載の趣旨からは、4人の候補者の経済政策を若者の視点から評価するのが重要だろう。

 ただし、各候補者の公約を読む限り、総論が多く個別具体策を伺い知るのは難しい。

 それでも各候補の公約のエッセンスを抽出すれば、①積極的な総需要管理政策の展開、②所得再分配の強化、③生産能力の強化とまとめることができる。

 以下では、上記の3つの政策について、30代までの若者や0票世代にとって得か損かという観点から評価を加えてみたい。

①花見酒経済は若者の格差を拡大させる可能性大

 突然だが、花見酒という落語をご存じだろうか。二人の男が、向島で花見客に酒を売ってひと儲けしようと、酒を入れた酒樽を運ぶ途中、弟分の男が釣銭にとあらかじめ用意しておいたおカネを兄貴分の男に払って酒を一杯飲む。

 今度は、おカネを受け取った兄貴分が、そのおカネを払って一杯飲み、すると弟分がまたそのおカネを払ってもう一杯と、交互に飲み始めてしまい、向島についたときには酒樽は空っぽ。しかし、懐には当初の所持金しかなかったという噺である。

 この落語のオチを経済学的に解釈すれば、酒を売った代金で新たに酒を仕入れるなどの生産能力を増強させる投資に回さず、酒を売って得た代金を売り物であるはずの酒の消費に回したがために富が増えなかったと解釈できる。投資ではなく消費に回すことで資源を浪費する経済を「花見酒経済」と呼ぶこともある。

需要不足の埋め合わせは将来需要の先食い

 総需要管理政策の生みの親であるケインズも、一時的な需要不足を埋め合わせるためには、政府が借金して穴を掘ってそれを埋める公共事業を行うことで失業者を救済すればよいとしているが、永遠に穴を掘って埋めることを繰り返してもよいとは言っていない。つまり、ケインズの認識では、公共投資は企業家のアニマルスピリッツによる投資が出てくるまでの時間稼ぎに過ぎなかったのだ。民間による投資が増えて生産力が増えることがあくまでも経済を強くする基本と考えていた。

 要するに、財政政策だろうが金融政策だろうが、総需要を積み増すだけでは、富の持続的な創出につながらない。しかも、現在、赤字国債の発行によって政府に吸い上げられた国民の富は、現在の国民を救済するために利用されるが、そのツケは将来世代に先送りされる。