毎日のように「Amazon」の箱が、自宅に届くという人は少なくない。しかし、そのワンクリックの背後でどんなことが起きているのか。実際に目にしたことがある人は多くないだろう。今回、相模原市が開催したプレスツアーで、2022年10月に稼働したアマゾンの配送センターである相模原フルフィルメントセンター(FC)を取材することができた。

メインエントランスの前は、相模原駅、橋本駅行きのバス停がある。数千人とも言われる人が働くために設けられているのだろう。
アマゾンのFCに入るためには厳重なセキュリティチェックがあり、免許証などの身分証明証が必要になる。弊誌の6月号特集『暗黒大陸・物流 2024年問題に光を灯せ』の取材で、他社の物流倉庫などを取材したが、ここまで厳しいところはなかった。
塩分補給のタブレット
メインエントランスを入って左手にある食堂の入り口には、塩分補給のタブレットが置いてあった。季節的には、まだそれほど暑くないのにどうしてだろう? と思ったが、後でその理由が分かった。
ここから商品の保管、棚出しが行われる場所に入るためには、さらに空港の検査場にあるようなゲートを通らなければならない。エレベーターの壁紙はお馴染み、アマゾンの箱のデザインがペイントされていた。時折、研修を受けているらしき人が通りすぎていく。

内部に入ってみて、塩分補給のタブレットが置いてある理由がわかった。暑いのだ。とてつもない広さがあるので、室内全体を冷そうとすると大量のエネルギーが必要になる。そのため、人が作業をする場所に、直接冷気を吹きかけるためのパイプが用意されていた。

そして、目に飛び込んでくるのは、冷蔵庫を大きくしたような形の黄色いボックス(ポッドと呼ばれる)だ。自動で作業をする人の前までやってくる。ポッドの下には、水色の平べったい4輪車があって(アイロボットの「ルンバ」のようだ、という声も上がった)、床にあるQRコードを読み込んで自動で動いているのだという。

ここで人が行うのは、棚入れと棚出しだ。まずは、プラスチックのボックスに入った商品が作業台にカートで運ばれてくる。どのポッドに入れるかは、データで管理されているため、自動でやってくるポッドの棚が空いている所に入れるだけでいい。ポッドは商品の種類にもよるが、10段程度の棚があるため、高い棚には階段状になった踏み台を使って入れる。今はマンスリーセールの前ということもあって、在庫の積み増しをしているそうだ。
次は棚出し。ポッドが作業台の前にやってくると、取り出すべき商品がある場所がライトで照らされる。これだといちいち探す手間を省くことができる。
このロボティクスシステムが導入される前までは、データをスキャンして、人が棚まで行って、商品の出し入れをしていた(今も一部残っている)。作業効率が上がる一方で、人員の省力化にもなったという。思わず、そう遠くない将来、これら全ての作業に人手が必要なくなるのかもしれないと想像してしまった。

全体を見渡すことができる場所に登ると、威容であり、異様でもある様子を見ることができた。遠くが霞んで見えると言っても過言ではない広さの中、無音で動いていくポッドは、壮大なパズルのようで、まさに威容だった。一方で、ポッド同士が道を譲り合いながら、整然と移動していく様子は、少し不気味な気もした。
しかし、このようなポッド、そして働く人々のおかげで、われわれが朝クリックした商品がその日のうちに届くといった離れ業が実現しているのである。