米国・サンフランシスコは、ゴールデンブリッジやチャイナタウン、ケーブルカーで日本人には馴染みのある観光地だが、最近は治安の悪化が盛んに報道されている。そこで、年末から年始にかけて現地を踏査してみた。

 ダウンタウンでは、明らかに治安が悪くて足を踏み入れないほうがよいと思われる通りと、市民や観光客が普通に行きかっている通りとに分かれる。市内周辺部では、良好に管理運営されている地域もある。通りや地域によって明暗が分かれるのはなぜだろうか。

ごみが散乱するサンフランシスコのダウンタウン(森口司氏撮影)

高いオフィス空床率と物価

 サンフランシスコに行くと誰でも最初に訪れるのがダウンタウンにあるケーブルカーの出発点だろう。ここは今日でも世界各地からの観光客であふれ、明るく華やかな雰囲気である。

 しかしその近くではデパートやフーズマーケットが閉店し、シャッターが閉められている。ちらほらと開店している店もあるが、閉店した小売店も多い。

 シリコンバレー銀行の倒産はあったが、サンフランシスコ大都市圏全体における景気は決して悪くない。スタンフォード大学やサンノゼ大学など工科系大学やベンチャーキャピタルの集積で新規開業も多く、新興テクノロジー系の企業が集積している。グーグル、 セイルスフォース、 X(旧ツイッター)、ウーバー、 リフト、 オープンAIなどIT企業が優秀な人材を大量に雇用し高給を支払っている。

 シリコンバレーに昨秋オープンしたグーグル・グラディエント・キャノピーはグーグル本社の社屋で、周辺では多くの人々が遊んでいる。サンフランシスコのゴールデン・ゲート・パークでも多くの人が楽しく遊んでいる。それなのになぜダウンタウンが荒廃するのか。

シリコンバレーに昨秋オープンしたグーグル・グラディエント・キャノピー(筆者撮影)

 IT関連の企業に勤めシリコンバレーに長く住む人に聞くと、コロナ禍でリモートワークが普及したためダウンタウンのオフィスに勤務する人が減少し、小売商店や飲食店の多くが立ち行かなくなったという。サンフランシスコ大都市圏のオフィス空床率は約23%と、米国平均の約18%より高い。店が閉まるとそこに勤める従業員が失業するなどしてホームレスが増え、市のシェルターの収容能力を超えた。

 サンフランシスコでは家賃も物価も高い。ワンルームのアパートでも月に40万円くらいする。サンフランシスコでは景観を維持するため4階以上のアパートを建築することが厳しく制限されている。

 客がレジに並ぶファストフードのようなシステムの店でハンバーガー一つが4000円くらいだ。カフェバーでビール1杯、ワイン3杯、シュニッツェル1枚で3万4000円も請求される(いずれも当日のレートで換算)。