国内観光客とインバウンド観光客の双方に人気の高い京都は世界に名だたる観光都市と言える。欧州で一大観光地とされるスペインのバルセロナは、人口160万人に対して年間3200万人の観光客が訪れると言われており、住民人口に対する観光客倍率は約20倍である。対して、京都府は人口250万人、観光入込客数は6668万人、京都市は人口143万人で観光入込客数が4361万人なので、住民人口に対する観光客倍率はそれぞれ約25倍と約30倍である。

 世界に目を向けると、イタリアのベネチアが人口5万人に対して2000万人の観光客と、交流人口倍率は400倍と突出した数字もあるが、京都は交流人口倍率の観点からも相当の観光客を受け入れているといえよう。

国内外の観光客に人気の京都はさまざまな視点からのオーバーツーリズム対策が必要となっている(Buddhika Weerasinghe /gettyimages)

 そんな京都がバルセロナやベネチアと同様に悩ませているのがオーバーツーリズムである。すでに対策も取られているが、その定義や影響を考えると足りない視点もある。改めて検証してみたい。

観光客の分散化、教育・啓蒙

 京都市のオーバーツーリズム対策は、例えばアクセス対応として、今年は最長10日間になるゴールデンウィークに備え、4月27日〜5月6日の土日祝日、JR京都駅から清水寺や祇園を結ぶ市バスの路線を増便し、特に混雑する午前中は3〜4分間隔で運行。他にも臨時バスの運行や地下鉄の増発などで市バスの混雑緩和を図った。

 また、ホームページには清水寺、金閣寺などの人気スポットへの混雑をさけたアクセス方法を掲載している。分散化対策としては、嵐山や伏見稲荷大社、北野天満宮など市内10カ所に設置しているライブカメラ映像にも、日本語、英語、中国語で混雑する日時や交通に関する情報を表示し、観光時間帯や場所の分散化を促そうとしている。

 観光客の教育・啓蒙では、マナー順守などを呼びかけるため、京都観光ガイドラインのメッセージ(例えば、荷物を預けて手ぶら観光する、神聖な場所ではおとなしくする、京都に暮らす人々の生活を尊重するなど)を掲げた人の写真をインスタグラムなどのデジタル広告に複数言語で掲載している。

 これらの対策の評価は、京都以外の地域も含めて効果測定結果が発表されたのちに考察してみたいと思っているが、視点を変えた対策もまだまだ打てそうだ。