4月16日の日米首脳会談の共同声明について、台湾の蔡英文総統は歓迎と感謝の気持ちを述べつつ、「民主主義や人権などの価値を共有する台湾は、平和で繁栄したインド太平洋を作り上げるため、われわれのパートナーたちと一緒に取り組んでいきたい」と述べ、「日米両首脳が台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて確認したことを評価する」と述べた。

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 これに関して、4月18日付の台湾の英字紙Taipei Timesは、台湾海峡の平和と安定へのコミットメントを強調した日米共同声明を歓迎する解説記事とともに、尖閣諸島に関する台湾独自の立場や福島第一原発の処理水の海洋放出といった懸念もあるとする社説を掲載している。

 台湾の総統府報道官は、今回の日米首脳会談が「インド太平洋地域の平和と安定に役立つ」と歓迎の意を示しつつ、その上で、台湾海峡問題がすでに両岸(台湾と中国)の範囲を超え、世界の関心を集めているとの認識を示し、「北京当局が地域の一員としての責任を果たし、プラスの貢献をする」ことに期待を寄せた。台湾外交部は、台湾は中国の防衛ライン「第一列 島線」(九州―沖縄―台湾―フィリピン)の中枢に位置しており、地域の安定と繁栄の鍵となる役割を担い続けていると指摘している。自由で民主主義的な制度を持ち、2300万人の人口を擁する台湾は、すでに主権の確立した独立国家である、というのが蔡英文政権(民進党)の立場である。ただし、それを強調することによって中国をいたずらに挑発することなく、対話を通じ平和的に現状を維持したいとの方針を堅持している。今回の日米首脳会談の共同声明が、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、中台間で平和的に台湾問題を解決するよう促したことを高く評価したのも理解できる。これに対し、中国は「一つの中国」の原則に基づき、外交、軍事、経済など諸方面において台湾を威圧・併合しようと腐心している。

 最近、岸信夫防衛大臣が、沖縄県与那国島を訪問し、日本の最西端に位置する同島で、駐屯する自衛隊の陸、海、空の隊員たちを視察したことをTaipei Timesはとりあげている。この論評は、「台湾有事」が「日本有事」に直結していることを含意しているのだろう。同論評は、同時に、台北にある日本駐台湾代表(大使に相当)の住む公邸に今年初めから、日本の国旗が掲揚されていることを記述 している。北京からの圧力に抗した形で、日台関係が進展していることを記述するものである。 

 Taipei Timesの社説が尖閣諸島について述べている点は、台湾当局の旧来の立場である。尖閣諸島の領有権の問題については、台湾側としては、尖閣諸島が自らの領土であるとの立場を崩していない。2013年に日台間で漁業取り決めが円満に結ばれてからは、尖閣諸島が日台間で政治・外交上の問題となることはほぼなくなったが、台湾の旧来の主張は変わっていないというのが本社説の言わんとするところである。日台関係を考える際に、潜在的問題点として日本側としても念頭に入れておく必要がある。 なお、蔡英文(民進党)政権は本件を日本側との間で取り上げることによって問題を表面化させたくないとの立場をとっているように見えるが、国民党の立場は必ずしもそうではないという点にも注意が必要だろう。

  
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