ロシア軍がウクライナとの国境地帯に集結し、ウクライナとロシアとの緊張が高まっていた。戦車、軍用機、海軍艦艇とともにロシア軍兵士約10万人が展開し、米国とNATOはこれを厳しく非難していた。

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 この展開についてロシア側は、部隊は演習をしているのであり、誰に対する脅威でもない、と言ってきた。4月23日、ロシアのショイグ国防相は、演習は終わったとして部隊に撤収を命じた。ただし、ショイグは、NATOの年次欧州防衛演習(東欧諸国で6月まで行われている演習)で不利な状況が出て来た場合にすぐ対応できるようにロシアの全部隊は即応体制にとどまるべきである、とも述べている。

 ウクライナのゼレンスキー大統領の補佐官の一人は、撤退が正確に何を意味するのか確かではないと注意喚起した。彼は「撤退は歓迎されるが、最近の数か月と過去数年の前例のないロシア軍の増強を見ると、撤退声明が何を意味するのかはっきりしない、まだこの件がどう展開するか、予見するのは難しい」と述べている。

 とはいえ、緊張は緩和されつつあると見てよいだろう。歓迎できる展開である。

 ロシアがどうして撤収に踏み切ったのかについては、4月13日にバイデン大統領が欧州のどこかで米ロ首脳会談を開くことを提案し、ウクライナ問題も話し合うことを電話でプーチン大統領に提案したことが大きな役割を果たしたという説が多い。おそらく、その通りなのだろう。

 ロシアの今回の演習は、ウクライナ領内に侵攻する能力を誇示し、ウクライナを恫喝することを目的にしていた。

 プーチンに敬意を示していたトランプと違い、バイデンはロシアに厳しく、クリミア併合についても認めていないし、今後も認めるつもりはないと明言している。これを受け、ウクライナのゼレンスキー大統領もクリミア奪還を言うなどしている。今回の演習はそういうことも考慮したうえで、バイデン政権を試すものであったと思われる。

 今後の米ロ首脳会談がどういう話し合いになるのかが注目されるが、プーチンもバイデンも基本的な立場を変えるとは思われない。この問題は米ロ間で意見が異なる問題として残っていくことになろう。

 ロシアとウクライナの関係は、こういう演習騒ぎや東部ウクライナでの紛争の激化を受けて、どんどん悪くなっていくだろうと思われる。プーチンの支持率を80%以上に押し上げたクリミア併合は、ロシアとウクライナ関係に大きな懸案として残るだろう。

 なお、1994年に米英露は、ウクライナが非核兵器国となることの見返りに国境の尊重などをいわゆるブダペスト合意で約束した。この合意は政治的なものであるが、ロシアにより破られた。

  
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