7月2日付のTaipei Times紙は、中国共産党創建100周年式典での習近平の演説への台湾の大陸委員会の反応と、台湾人の共産党への感情調査の結果を報じる解説記事を掲載している。

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 中国共産党創建100周年の記念日を迎え、習近平主席は演説の中で、台湾問題を解決し「祖国の完全な統一を実現することは、党の歴史的な任務である」と表明した。そして、平和的な統一を進めると強調しつつ、「いかなる台湾独立のたくらみも粉々に粉砕する」と強調した。習はそのスピーチの中で「一つの中国の原則」といわゆる「1992年コンセンサス」を台湾の平和的統一の手段として堅持する、と述べた。

 このような習近平の演説に対し、蔡英文政権の大陸委員会委員長(両岸関係を所管する閣僚)は、2300万人の台湾人は一方的な「一つの中国の原則」や「1992年コンセンサス」に反対してきた、として台湾の現実を直視するよう中国共産党に求めた。

 Taipei Timesの論説は、習近平演説が台湾の現実を無視し、台湾および世界の民主主義に深刻な脅威を与えるものとして非難している。

 「1992年コンセンサス」と言われるものは、中台関係を律する同床異夢の用語である。中国側はこれまで主として「一つの中国の原則」を中台関係を説明する用語として使ってきた。もともと「92年コンセンサス」とは台湾の馬英九・国民党政権の時に使用し始めた用語である。「一つの中国、各自解釈」という言葉で表現され、「一つの中国」とは台湾側にとっては「中華民国」を意味し、北京にとっては「中華人民共和国」を意味するとされた。ただし、ここには曖昧さが隠されており、北京の側は「各自解釈」の部分は認めていない、という。

 そのような曖昧さが残されている用語に習近平が演説であえて言及した理由はなにか。蔡英文・民進党政権はいざ知らず、せめて台湾・国民党を引き付けておくためには「92年コンセンサス」は役に立つと思っているのかもしれない。今日の台湾の現実を見れば、的外れと言わざるを得ないだろう。

 なお、蔡英文・民進党政権は、「一つの中国の原則」も「92年コンセンサス」も共に認めていない。自由で民主主義が定着し、主権の確立した独立国(「中華民国」〈台湾〉)というのが蔡英文政権の立場であるが、中国をいたずらに刺激することなく、中国との間では、対話を通じ現状を維持したい、との方針を堅持している。

 台湾の民意調査については、多くの調査機関が行っており、必ずしも明確ではない。Taipei Times紙が指摘するように、「台湾民意基金会」によれば、7月1日に行われた調査結果は、圧倒的多数の台湾人が中国共産党に対し、「負のイメージを抱いているか、無感情であることを示している」という。

 これまで、30年間にわたって毎年行われてきた民意調査(国立政治大学の実施)によれば「自分は台湾人である」、「自分は中国人である」、「自分は台湾人でもあり、中国人でもある」という三つの選択肢の中では「自分は台湾人である」と考える人の数が着実に増えてきたことがわかる。