2021年6月25日(金)19時よりオンラインにて、東京大学名誉教授・村上陽一郎氏と京都大学教授・佐藤卓己氏によるメディアと専門知をめぐるイベントが開催される。イベントは村上陽一郎氏のオンライン私塾「専門家とは何か」の第2回にあたる。イベント開催にあたり、スピーカーの佐藤氏よりイントロダクションが届いたのでここに紹介したい。

スピーカー 佐藤卓己氏によるイントロダクション

村上陽一郎先生には、以前に毎日新聞で拙著『輿論と世論―日本型民意の系譜学』(新潮選書・2008年)を書評していただいた。今回の対談もその延長上のことだと考えている。最近、『Voters』(明るい選挙推進協会)6月号の世論調査特集で「輿論主義(デモクラシー)と世論主義(ポピュリズム)」を書いたが、反時代的だと思いつつも「世論の世論化」を訴えた。それは「ポスト真実時代」の今日、メディアの役割を考える上で重要なことだと考えている。そもそもメディアはいつから「真実」を伝える媒体になったのか。

共同研究『近代日本のメディア議員』(創元社・2019年)で100年間の衆議院議員5579人を調査をした。その結果、「メディア関連議員」は17・6%であり、1937年4月総選挙では実に34.1%に達していた。新聞人が多数を占めた国会にもかかわらず戦争を阻止できなかったのか、あるいは、「世論を反映する新聞人」が多数だったから民意に流されたのか。この戦間期は「政治のメディア化」mediatization of politicsの枠組みでは「政治家とジャーナリストの分離」する第Ⅱ期にあたり、まさにこの時期にメディア研究は大学で制度化された。総力戦体制の政策科学としてドイツ新聞学、やがてアメリカのマス・コミュニケーション研究が体系化されたプロセスとその鏡像関係は拙著『ファシスト的公共性』(岩波書店・2018年)で論じたが、いずれも情報の「崩壊モデル」を前提としていた。そのため、キャントリル『火星からの侵入』が描いたメディア・パニックが本当に起こったものだと信じられてきた。もちろん、実際にパニックが起こったと考える歴史家は少ない。

いま必要なのは、流言や誤報の存在を前提に思考する、情報の構築モデルではないだろうか。清水幾太郎は『流言蜚語』(1937年)において、「潜在的輿論」として流言を積極的に評価した。この場合、メディア・リテラシーとは曖昧状況に耐える力にほかならない。そもそも歴史上、「真実の時代」はいつ存在したか。それは幸福な時代だったのか。むしろ、ポスト真実時代にこそメディアの果たすべき役割があるのではないか。そうした問題提起を行いたい。

佐藤 卓己(さとう・たくみ)
1960年生まれ。京都大学大学院教育学研究科教授。メディア史、大衆文化論を専攻。2020年にはメディア史研究者としては初めて紫綬褒章を受賞した。著書に『メディア論の名著30』(ちくま新書)、『大衆の強奪―全体主義政治宣伝の心理学』(創元社)、『流言のメディア史』(岩波新書)など。

スピーカー

村上陽一郎・佐藤卓己

イベント詳細

科学哲学者・村上陽一郎氏による私塾「専門家とは何か」の第2回です。ZOOMミーティングを利用し、参加者とともに専門家や非専門家の役割を考えていきます。

開催スケジュール等

日 程:2021年 6月25日(金曜)19:00〜(約2時間のトーク&ディスカッションの後、交流会を開催)

会 場:Zoomを利用したオンラインイベントです。

参加料:¥4500(税込)
※チケットの購入期限は当日6月25日の午前中までとさせていただきます。

申込み:Peatixよりお申し込みください。(申込みはこちら(http://ptix.at/CnlCWR))事前招待メールをお送りします。
主 催:WirelessWireNews編集部