日本では最近、銀座の高級宝飾店が昼間に強盗に襲われるという大変ショッキングな事件がありました。私がこの事件を見てとても驚いたのが、日本では高級品を扱っている銀座の店舗ですらセキュリティ対策が大変緩かったということです。そもそも日本では、高級品の店であっても店舗に入るのに予約は必要ない場合が多いですね。

欧州の場合は、高級店の場合は事前予約が必要な場合が結構あります。もちろん入店の前には審査があります。そして冷やかしや一見さんはお断りという場合があります。これは、単にちゃんとした見込み客に時間を費やしたいという目的もありますし、やはり最も重要なのはセキュリティの確保です。

日本はこれまで性善説でやってきましたが、欧州並みにセキュリティをタイトにするべきではないかと考えています。

2点目は、日本の店舗でも街中でも監視カメラや顔認識が驚くほど活用されていないということです。

実は、欧州で使われている顔認識技術やセキュリティシステムの少なからずは日本のメーカーが提供しているものです。中国製は、セキュリティ的に問題があり、安全保障の観点からも使うことができないので、空港や政府の設備などでは日本製が活用されています。

ところが、銀座の事件を見ていると、日本はイギリスや欧州ほどそういったものを活用してないようです。イギリスも欧州も北米も、とにかく機械化をどんどん進めていますから、 店舗も街中も監視カメラだらけです。もちろん、テロリストや 犯罪者の洗い出しにはAIがどんどん 活用されています。

ロンドン市警は、2016年から大々的な実証実験(https://www.met.police.uk/SysSiteAssets/media/downloads/central/services/accessing-information/facial-recognition/met-evaluation-report.pdf)を行っており、今や地方の警察でも活用は当たり前です。しかし欧州の場合は、GDPR(EU一般データ保護規則)がありますし、イギリスはEU を脱退したとはいっても国内法でGDP Rに準拠する法律がありますので、個人情報の保護に関しては日本よりはるかに厳しいのです。

その厳しい状況の中でも、犯罪抑制にはAIや顔認識が使用可能なわけです。なぜ規制がはるかに 緩い日本ではできないのか。これは、単にセキュリティ対策に対しての投資が十分ではないということと、日本国内では反対する声が大きいからです。

しかし、プライバシーに遥かにうるさい欧州の人々は、テロ防止や安全性を優先させるので反対の声それほどありません。

日本は、技術があるのに実装がなかなか進みませんが、このような凶悪事件が今度も増えていくことを考えると、優先順位というものについてもっと真剣に議論するべきでしょう。とはいえ、議論には材料が必要です。

導入に当ってロンドン市警は、実証事件の結果やアルゴリズムについての報告書をWebで一般公開(https://science.police.uk/research/resources/operational-testing-of-facial-recognition-technology/)しています。日本の警察はじめ交通機関などは、このような「わかりやすい実証実験の情報公開や報告書の公開」がありません。一部公開していても、一般の人が読みたいと思うような形態ではなかったり、実に伝わりにくい内容です。それでは説得できなくて当たり前です。

さらに「なぜ導入するのか」「その効果は何か?」といった説明が上手くできていないように思います。コミュニケーション下手だなあという印象ですが、治安維持を円滑に進めていくにはこのような説明力が必須です。

イギリスの場合は、政府や警察も、文書作成の専門家がいたり、外部の編集者やコンサルティングファームに外注したり、専門家のアドバイスを受けるのがごく当たり前です。日本の警察や交通機関にも、もっとコミュニケーションの重要性を理解していただきたいです。