もうすぐ梅雨の時期を迎えます。外出の予定がある中で雨が降ると嫌なものですが、それ以外にも『気象病』の症状に悩まされることがあります。

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前回の「気象病って何?チェックリスト」に続き、気圧予報・体調管理アプリ「頭痛ーる」監修医師である久手堅司先生(せたがや内科・神経内科クリニック院長)の著書『気象病ハンドブック 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(誠文堂新光社)より

✅ ピークはどんな時期?

✅ 雨降り前がつらい理由は?

などの疑問についての解説をお届けします。また、緊張型頭痛のセルフケア方法も要チェックですよ!

ピークは梅雨と台風シーズン

※画像はイメージです

Q. 低気圧と聞くと、梅雨と台風のイメージです。 その時期さえ対策をすれば良いのでしょうか?

気象病のピークは、梅雨入り前の5月のGW明けくらいから7月の梅雨の終わり頃まで、そして9〜10月の台風シーズンです。特に、台風シーズンは気圧の変動が大きいので、1年間で一番つらいという方が多いですね。

5〜7月の中では、7月は体調が比較的良いという方が多いです。その理由は、梅雨が終わりかけて体が慣れてきているからなのか、あるいは気圧の微妙な変化なのかもしれません。正確な判断はまだ難しいのが現状です。

とにかく梅雨と台風シーズンは要注意ですね。

気圧変化で不調を訴える方は、慢性的になると少しの変化でも症状が出ます。そのため、ピーク時だけ対策を行えば良いというわけではありません。しかし、日頃の対策がある程度上手くできていると、時期に関係なく症状は出にくくなります。

気象変化はどうすることもできませんが、体調管理を含めた対策は自分でもできますよね。気圧変化で体調不良になる方は、ベースとなる不調の影が見え隠れしていることが多いので、日頃から体のメンテナンスが必要になります。

何らかの不調がベースにあると、気象変化の影響を受けやすくなる。

体調管理を含めて、自分で対策をする時のポイントは?

元気な時の体調を0として、100以上になると気象病の症状が出るとしましょう。気圧の影響を受けにくい方は、「気象変化がない時は0、気象変化があっても100以下」に留まるため、体調不良を起こしません。

では、気象病の方はどうでしょうか? 気圧の影響を受けやすい方は、もともと何らかの不調がベースにあるため、気象変化に対する耐性が弱い体になっている場合がほとんどです。特に、首肩こりは慢性的で気づいていないケースが多く見られます。そのため、気象変化による負荷で、すぐに100を超えて体調不良が出てしまうのです。つまり、気象病の方は、もともと持っている20〜70の不調を減らすように対策を行えば、多少の気圧変動でも100を超えません。ベースにある不調と向きあうことで、気象変化が起きても体調は悪化しにくくなります。

雨が降る前の方がつらいのはなぜ?

※画像はイメージです

Q. 私の友人は「雨が降る前の方がしんどい」と言います。 雨が降っていなくても、症状は出るのですか?

気象病は、「雨が降ると体調が悪くなる」というイメージが強いですよね。しかし、実際には雨が降ってしまえば症状は軽減している場合が多いです。気圧がぐんと下がるのは、雨が降る前です。そこが気象病の大きなポイントです。クリニックを受診した患者さんに聞くと、ほとんどの方が「気圧が下がっている時の方が、下がった後(雨が降っている時)よりつらい」と言われます。

台風の影響で不調になるのは、直撃する前と通過した後です。台風の目(中心付近)に入っている時は、症状が消えているという方の割合が高いです。また、台風が遠くで発生したり、近づいてくる最中でも、不調を感じる方が多いようです。

どうしてそんなことが起こるんですか?

気象病の方は、「気圧変化(気圧差)があること」がつらいのです。雨が降っていても気圧があまり変化しない場合は、体調も安定しています。

気圧差の例えで、わかりやすいのはジェットコースターです。ジェットコースターに乗って、最上部から落ち始めている時をイメージしてください。上にいる時や落ちた後は平気でも、落ちている最中は落差が激しいほど体にこたえますよね。

気圧変化(気圧差)は、ジェットコースターに例えられる。

気圧差もそれと同じで、気圧が下がったり上がったりしている最中がしんどいのです。ただ、雨が降らなくても気圧は下がる時があるので、 気圧差を感じない人につらさを理解してもらうのはなかなか難しいところがあります。

最近は、気圧変化を教えてくれるウェブサイトやスマホアプリが充実しているので、活用するのも良いでしょう。

ジェットコースターの例えはわかりやすいですね。気圧差について、かなり理解できました。

気象病を発症するきっかけには、高層階への引っ越しが関係していることもあります。「オフィスが高層階へ引っ越した」「タワーマンションの上層階に引っ越した」という方で、エレベーターに乗って上昇している時、下降している時がつらいという方も多いです。高層階へ行っても長時間経つと症状は改善します。しかし、日々受けている気圧差の積み重ねは、より症状が出やすい状況を作り出します。

今すぐできるセルフケア|緊張型頭痛

頭を締めつけられるような痛みが続く

緊張型頭痛は、片頭痛より症状が軽いと思われがちです。しかし、実際には頭痛の時間が長く、痛みが常に続いている場合も多いため、片頭痛と比べて特に症状が軽いというわけではありません。

緊張型頭痛は、頭を締めつけられるような鈍い痛みで、左右の差があまり見られないのが特徴です。そこで触診をして、頭蓋周囲の圧痛の有無を確認しながら、頭痛の程度や片頭痛との違いを判断します。頭痛が起こる頻度としては、月に10回以上という方が多いですが、気象病の方は回数がより増える傾向にあります。

緊張型頭痛の改善には、鎮痛薬の服用が比較的効果があります。市販の鎮痛薬にも様々な種類があり、選択肢が多いです。しかし、長く服用を続けると、だんだん鎮痛薬が効かなくなってくるケースもあります。その場合は、マッサージなどのセルフケアを習慣づけるだけで痛みが軽減する方もいます。

頭部のマッサージ

【POINT】あぐらを組んで座り、骨盤をまっすぐに保ちましょう。頭や首の筋肉の緊張をほぐして血行を促し、脳の酸素不足による血管の拡張を和らげます。

首の後ろ 頭の骨から首に切り替わる部分に3本指を当て、指先で軽くマッサージする。

側頭部 両手を「熊手」にして、耳の真上を下から上へ軽くマッサージ。

こめかみ 緊張型頭痛で最も痛くなりやすい。指を広げて、小さく円を描くようにマッサージ。

長時間のパソコンやスマホ使用はNG!

緊張型頭痛の方は、首肩こりや眼精疲労が関係していることが多いです。血流が悪くなることで、脳の酸素不足が起きています。首の後ろにある頭板状筋、ストレスや緊張で無意識に食いしばることでこりやすい側頭筋(側頭部)、額を覆っている前頭筋(こめかみ)を中心にマッサージを行い、首肩こりや眼精疲労を少しでも解消するのがポイントです。

緊張型頭痛は、パソコンやスマホを使用している時間が長い方に出やすく、ここ数年は若年化してきている印象です。今後も職場などでリモートワークが進むにつれて、その傾向は強くなっていくでしょう。

参考:一般社団法人日本頭痛学会「国際頭痛分類 第3版」 

『気象病ハンドブック 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(久手堅司 著、誠文堂新光社)より一部抜粋・再編集

イラスト:植松しんこ、マッサージ写真 撮影:もろだこずえ、モデル:杜野まこ

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「頭痛ーる」監修医師が教える

自律神経が整う症状別のセルフケア

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気圧や気温、湿度など、気象変化に伴う体調不良(=気象病)を訴える人が増えています。その数は全国で1000万人とも。梅雨の時期に頭が痛くなったり、台風が近づくと耳鳴りがしたり…何となく思い当たる症状があるかもしれません。天気だけでなく、気圧の予報も気にする時代。私たちにとって、気象病はより身近な存在となってきました。しかし、その実態はいまだ謎めいています。それどころか、十分な予防対策も知られていないのです。

この本には、次のような特徴があります。

◎5000名以上の気象病患者を診てきた専門医によるカウンセリングを紙上で体験できます。

◎症状が出るタイミングや体の部位など、気象病の全体像を知ることができます。

◎不調の原因がわかり、痛みに応じたセルフケアを実践できます。

不調を和らげるヒントは自律神経にあった! 読むと少しラクになる、気象病に悩むあなたのためのハンドブックです。