【医師監修】どんな人が「安産型」? 安産・難産って?

一般的にはよく「安産」「難産」などといいますが、では何をもって「安産」または「難産」なのでしょうか? 安心してお産にのぞむために知っておきたい、医学的な「安産」の捉え方などをまとめます。

この記事の執筆・監修ドクター 松峯美貴先生
医学博士、東峯婦人クリニック副院長、産前産後ケアセンター東峯サライ副所長(ともに東京都江東区)妊娠・出産など女性ならではのライフイベントを素敵にこなしながら、社会の一員として悠々と活躍する女性のお手伝いをします!どんな悩みも気軽に聞ける、身近な外来をめざしています。
http://www.toho-clinic.or.jp/

「安産」「難産」って?

出産をひかえ、誰もが安産を望むものでしょう。でも、そもそも安産とはどういうことを指すのでしょうか。

安産についての医学的な定義はない

「安産」や「難産」は一般的によく使われる言葉ではありますが、医学的にそのようなお産の定義があるわけではありません。

「お産のメカニズムは複雑で、出産前の状態やお産の経過は一人一人違うので、単純に『安産』『難産』などと分けられませんし、コントロールすることもできないものです」(松峯先生)

お産にかかる時間はどのくらい?

あくまで一般論で、一概にはいえないですが、お産にかかる時間は初産婦(初めての出産)と経産婦(二度目以降の出産)で大きく違い、初産婦は時間がかかる場合が多いことから「お産が大変」というイメージがもたれているかもしれません。

具体的には、分娩開始(1時間に6回以上で規則的な陣痛が始まる)から胎盤娩出(赤ちゃんが生まれた後、子宮から剝れた胎盤が出る)までの目安は、初産婦で12〜15時間程度、経産婦で5〜8時間程度とされます[*1](時間の幅は生理的な差や個人差によるもの)。

お産は次項で紹介する「分娩の3要素」が機能して成り立ちます。初産婦で30時間以上、経産婦では15時間以上経過した場合、「分娩の3要素」に何らかの異常が考えられる「遷延分娩(せんえんぶんべん)」として緊急帝王切開などの対象になることがあります。

「分娩の3要素」とは?

お産の経過にかかわる3つの要素を「分娩の3要素」といいます。

産道

産道は、外側の骨格部分の「骨産道」と、その内側の「軟産道」に分かれます。つまり「骨産道」は骨盤、軟産道は通過管(子宮下部、子宮頸部)と腟(ちつ)、外陰(がいいん)および会陰(えいん)です。産道の状態は妊婦さんの骨盤の形や、筋肉や脂肪のつき方などによって一人一人違うものです。

娩出物(赤ちゃん・付属物)

分娩によってお母さんの胎外に出るものを「娩出物(べんしゅつぶつ)」といい、その状態も一人一人違います。赤ちゃんの体型や頭の形が違うのはもとより、分娩開始時の体の向きや、生まれてくるときの回旋の様子なども異なります。そして胎盤や臍帯(さいたい)、羊水、卵膜など妊娠の終了とともに娩出されるものの状態にも個人差があります。

娩出力(陣痛・腹圧)

陣痛(子宮の収縮)と腹圧で赤ちゃんを押し出す力が「娩出力」です。これも妊婦さんにより個人差が大きい要素です。

この3つが関係し合って、お産が進行します。

3つの要素すべてがうまく機能し、お産がスムーズに進んで、目安の時間内に終了すると、一般的には「安産」と考えられます。

体型に「安産型」ってあるの?

お産にかかる時間の長さは、多くの要素が合わさっていることが分かりましたが、安産になりやすいか否かをお母さんの体型から判断することはできるのでしょうか。

もともとの骨盤の形だけでお産は決まらない

先にも述べた通り、骨盤は「骨産道」でお産の経過にかかわる3つの要素に含まれるものですが、かといって骨盤の形や骨盤腔(内径など)の広さだけがお産を左右するわけではありません。

そして妊娠中に多く分泌されるホルモン(リラキシン、エストロゲン、プロゲステロン) の作用によって骨盤と骨盤周囲の靭帯などがゆるみ、もともとの状態から骨盤腔は広がるのです。

骨盤の形はいくつかタイプがあり、人種による差が大きいと松峯先生は話します。

「骨盤は骨盤腔の特徴(以下、カッコ内)から『女性型(円形)』、『男性型(ハート形)』、『類人猿型(縦長)』、『扁平型(横長)』などいくつかのタイプがあり、大きさは日本人の場合、欧米人などと比べると小ぶりな人が多いと考えられてきました。

しかし最近は農耕民族である日本人に多いとされた女性型骨盤以外にも、生活スタイルの変化に伴って男性型骨盤や扁平骨盤も増えているように感じています。とはいえ、もともとの骨盤の形が直接的にお産に関係するとは言えません」(松峯先生)

先にも述べた通り、骨盤は「骨産道」でお産の経過にかかわる3つの要素に含まれるものですが、かといってお産を左右するのは、骨盤の形だけではありません。

妊娠中に多く分泌されるリラキシンというホルモンの作用によって骨盤と骨盤周囲の靭帯(じんたい)などがゆるむので、もともとの状態から骨盤腔は広がるのです。また、赤ちゃんは、児頭応形機能(じとうおうけいきのう)といって、分娩の際は、お母さんの骨盤の形に合わせて自分の頭の形を変化させて上手に産まれてくるのです。

骨盤が狭いって?

骨盤が狭いとは、骨産道(骨盤腔)が狭い状態で、医学的には「狭骨盤(きょうこつばん)」と言います。その原因としては、妊婦の低身長(150cm以下)、代謝性疾患や骨盤・脊柱疾患などがあり、日本産科婦人科学会が定める骨盤腔の基準値を下回るケースです。狭骨盤は、分娩の進行の妨げになるリスクがあり、経腟分娩が困難になる可能性があります。

ただし、たとえ骨盤腔が狭くても、十分な娩出力があり、骨盤腔が広がって、問題なく出産する場合もあるので、難産かどうかの判断は「分娩の3要素」を考慮し複合的に判断されることになります。

安産のためにできることはある?

「安産のためにできることがあればやりたい!」と思う人も多いでしょう。妊娠中に自分でできる、安産のためのコツなどはあるのでしょうか。

基本的に「〇〇したら絶対安産!」はない

医学的に根拠を示して「〇〇したら必ず安産になる」といえるようなことはありません。ですから、さまざまな方法で備えても分娩が長引くことはあります。

安産を願って柔軟性を高めるストレッチや分娩時の呼吸法など、試みてみたいことを実施し、備えることは、お産にのぞむお母さんの気持ちをリラックスさせるなど二次的効果もあるでしょう。ただし、練習した通りうまくできなかったとしても、刻々状態が変わっていくお産という一大事の最中、それも自然な成り行きです。

「どのようなお産であっても、妊婦さんが後で自分自身を責めるような問題は何もありません。そもそもお産はコントロールできない、自然な営みです。何かをしたから・しなかったからどうなる、というようなことではないので、決してそのように悩まないでください。リラックスして出産にのぞみ、産後は十分に心身を休めましょう」(松峯先生)

適度な運動や食事は“お守り”として

「運動していれば安産」「太ったら必ず難産」というわけではありませんが、妊娠に気づいてから出産まで、全期間を通じて心身ともに健やかであることは、とても大切なことです。そのためには基本的なこと、一般的な健康づくりにも通じる「運動・栄養・休養」と、健康状態のチェックができる「妊婦健診の受診」が重要となります。

・運動

妊娠中には体力を保ち、改善する適度な運動として、全身の筋肉を使って酸素を十分に取り入れる「軽い有酸素運動」が推奨されています。ウオーキングやマタニティプログラムのあるヨガやピラティスなど、無理なく続けられる範囲で習慣的に行いましょう。

・食事

つわりの時期には無理をせず、それ以外の時期はバランスのいい食生活を心がけましょう。妊娠後期ごろになると、頻繁にお腹がすいたり、食べるとお腹が苦しくなったりする人も少なくありません。その対策のひとつに「分割食」があります。食欲の有無や胃腸の調子にかかわらず、満足感を損なわず、適度に食べていける食べ方で、「半人前〜0.7人前程度(控えめ)×1日4または5回」の食生活にする方法です。

主治医から示された体重管理の目標値や1日にとるべきエネルギー量を意識して、過不足ない食生活で、適切なペースで体重をアップしていきましょう。

・ストレスケア

ストレスは自律神経のバランスに影響し、体や心の負担になります。運動や趣味の活動などで発散し、リフレッシュを心がけることがストレス予防に役立ちます。

そして即効性のあるストレスケアで、全身の休養としても重要になるのが「睡眠の確保」です。妊娠経過が進むにつれ、「寝つき」や「目覚め」など睡眠の問題を感じる人は増え るので、睡眠に問題を感じたら、就寝時間に自然な眠気が起こるよう、次のような生活上の工夫をしてみましょう。

●夕方以降は昼間の照明から明るさを一段階を落とした照明空間で過ごす

●食事は就寝3時間前、入浴は2時間前に済ます

●夕食後は脳の覚醒を促すブルーライトを発する機器(テレビ、スマホなど)からなるべく離れる

●寝室の温度は夏:25〜28℃、冬:15〜18℃、湿度は通年40〜60%に調整する

・妊婦健診の受診

標準的な妊婦健診(全14回)は、妊娠週数に応じて問診と診察、必要な検査、保健指導が行われ、妊婦さんから医師や助産師に「妊娠・出産・育児」について相談もできます。

受診には公費による補助制度があり、住まいのある市区町村に「妊娠届」を出した際に「受診券」または「受診補助券」の交付を受け、利用することができます。

まとめ

妊娠中、「安産」を願って運動や食事、体重管理などを心がけることは大切で、そのような丁寧な生活が母子の健康を保つ秘訣ではありますが、それが必ず安産につながるというわけではなく、どのように備えていてもお産が長引くことはあるようです。安産は、何よりもお母さんと赤ちゃんが元気に退院できること。そのように気持ちを安らかにもって出産にのぞみ、もしも不安なことがあったら主治医や助産師に相談して、心を軽くしていきましょう。

(文・構成:下平貴子/日本医療企画、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]医療情報科学研究所「病気がみえる Vol.10産科」(メディックメディア)p251

宋美玄「妊娠・出産パーフェクトブック」(内外出版社刊)
松峯寿美「やさしく知る産前・産後ケア 」(高橋書店)
古賀良彦「脳の疲れをとる本」(方丈社刊)
日本公衆衛生雑誌第50巻第6号「本邦における妊婦の睡眠問題に関する疫学的研究」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/50/6/50_526/_pdf

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます


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