主治医から「子宮頸管が短い」として今後の治療などについて説明を受けたものの、十分な理解ができなかった。そのようなケースは間々あるようです。体調や妊娠経過などは個別性が大きいことですから、どのような説明についても、不安や不明な点は率直に伝え、十分に聞いて、自分の状態を理解することが大切です。

この記事の執筆・監修ドクター 松峯美貴先生
医学博士、東峯婦人クリニック副院長、産前産後ケアセンター東峯サライ副所長(ともに東京都江東区)妊娠・出産など女性ならではのライフイベントを素敵にこなしながら、社会の一員として悠々と活躍する女性のお手伝いをします!どんな悩みも気軽に聞ける、身近な外来をめざしています。
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子宮頸管の場所と役割

最初に子宮頸管がどこにあり、どのような役割をもっているか紹介します。

どこにある?

女性の子宮は「子宮体部」と「子宮頸部」に分けて見ることがあり、妊娠した女性の子宮頸部の内側(管状の部分)を子宮頸管と呼びます。

つまり子宮頸管は子宮の一部、子宮の(赤ちゃん側からの)出口部分、腟との境にあります。

役割は?

妊娠していない時期の子宮頸部は閉じていての内側は狭く、分泌物(頸管粘液)で栓(粘液栓)をするように腟と子宮腔の間を遮断し、細菌などの侵入を防ぐ役目を(感染予防)果たしています。また、生理周期の中で分泌液の性状(性質と状態)を変化させ、排卵の時期以外は精子が子宮内に侵入しにくい性状になっています(受胎調節)。

妊娠すると粘液栓で感染予防しながら、強度を保って妊娠の維持に役立つものの、徐々に短くなります。そして出産が近づくと全く様子が変わり、徐々に柔らかく、さらに短くなります。子宮口が開き、分娩直前に産道が整うときには見かけ上は消失しています。

頸管の長さと早産の関係

妊娠によって子宮頸管は変化します。変わり方には個人差があるものの、ここでは一般的にどのように変わっていくのか、また早産との関係も紹介します。

妊娠していない時の子宮頸管の長さは?

非妊娠時は子宮全体が鶏卵サイズといわれ、その約1/3が子宮頸部です[*1]。

子宮頸部の内側(管状の部分)が子宮頸管に当たりますが、非妊娠時には「子宮頸管長」として測ることは通常ありません。

妊娠している時の子宮頸管の長さは

妊娠初期〜中期(16~27週)に頸管長は約40mmになり、32週以降は25~30mmに短縮します[*2]。妊娠24週の頸管長の平均は約35mmとされています[*3]。

「頸管の短縮」とは?

子宮頸管の短縮とは、文字通り「子宮頸管が短くなること」で、頸管の長さは経腟超音波検査で測定されます。妊娠後期、さらに柔らかく短くなるのは、分娩に向けた生理的な変化(子宮頸管の熟化)です。

早産との関係は?

著しく短縮している場合、切迫早産のリスク因子と考えられることがあります。

早産リスクについて、頸管短縮のない人(平均約35mm)と比べた結果では、妊娠24週の頸管長が25mm未満の場合は約6倍、13mm以下では約14倍とされています[*3]。そこで、妊娠中期以降の妊婦健診で、複数回頸管長を測定するのが望ましいとされるのです。

とはいえ子宮頸管が短くなることは妊娠経過によって起こる生理的な変化でもあり、また、そもそも“もとの長さ”に個人差があります。そのため頸管長について、生理的な短縮と評価するか、著しく短縮していると評価するかは測定のタイミング(妊娠週数)、もとの長さとの比較、妊婦の体調や既往歴などと併せて判断されます。

「妊婦健診の目的のひとつは、早産になりやすい状況を早い段階で見つけ、早産予防への対処をすることです。頸管長だけでなく、さまざまな視点でリスクを見逃さないように診察する必要があるので、妊婦検診を受けることがとても大切になります。ただし、子宮頸管が短くても、そのまま正期産の時期まで何事もなく出産する人もいます。頸管の長さだけに神経質にならないようにしましょう」(松峯先生)

早産とは

切迫早産とは「早産となる危険性が高い状態」のことで、早産とは「妊娠22週0日から妊娠36週6日までの分娩」のことです。日本での早産の割合は約5%とされています[*4]。

早産では、生まれてくる赤ちゃんが未熟なため合併症のリスクがあり、特に週数が早い場合には生命に関わることもあります。早産のリスク要因と考えられるのは次のような事柄です。

早産になりやすいリスク要因

・前回までの妊娠での早産

・子宮頸管の手術(円錐切除術)や頸管無力症※の既往

・何らかの原因で子宮頸管の長さが短い

・細菌性腟症(腟内の感染の一つ)

・歯周病などお口のトラブル

・多胎妊娠(双子や三つ子など)

このほか、喫煙やアルコール、低栄養、ストレスなど生活習慣に関わる“環境要因”もリスク因子になることがあります。

※頸管無力症とは、子宮頸部の強度が弱く、子宮収縮の症状はないのに子宮口の開き・子宮頸管の短縮が起こり、妊娠が維持できなくなる状態。

子宮頸管が短い場合の対処法

一般的に、妊娠24週未満で頸管長が30mm以下であれば「切迫早産の兆候」と見て注意が必要と考えられ、さらに25mm未満では、多くの場合は入院によって管理します。

ただし先にも述べた通り、頸管長の数値だけで対処法が決まるのではありません。

主治医は専門的な指標(Tocolysis Index)とも照らし合わせ、「頸管長」に加え、「お腹の張り具合・痛み(子宮収縮)」「破水の有無・状態」「出血の有無」「頸管の開き具合」などから総合的に次のような対処法を選びます。

・自宅安静(次回の健診日を早めに設定することも)

・自宅安静と子宮収縮抑制薬の内服

・入院による安静や子宮収縮抑制薬の点滴

主治医から安静と言われたら?

主治医から「自宅安静」と言われた場合、どのように過ごせばよいのでしょうか。

治療のための「安静」には様々なレベルがあり、状態によって安静度が変わります。子宮頸管の短縮があり、医師から「自宅で安静にしていてください」との指示があったら、まずはどのくらいの安静が必要なのか、どんなことを避けなければいけないのかを尋ねるといいでしょう。

基本的には、仕事や家事をせず体を休める必要があり、ただ家にいればいいということではなく、トイレ以外はほとんど横になって休んでいる状態を指しているので、必要なら医師の診断書をもらって職場対応などをしましょう。

「早産を予防するために大切なことは安静。薬などは補完的な役割であり、無理は禁物です。

自宅安静と言われたら、原則として仕事や家事は休んでください。子宮収縮抑制薬を飲みながら普段通りに働いたり、家事をするのでは、治療の意味がありません。どうしても環境的に自宅安静が難しい場合は、安静入院になる場合もあります」(松峯先生)

まとめ

妊娠週数を追うごとに子宮頸管が短くなることは、妊娠の生理的な変化ですが正期産前の著しい短縮は早産のリスク因子のひとつと考えられます。早産のリスクが高い状態である切迫早産と診断された場合、場合によっては入院するなどして管理する必要があります。

定期的に妊婦健診を受け、不安や不明な点については主治医からよく説明を受けて、どうぞ安心してお過ごしください。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]日本医師会 知っておきたいがん検診 子宮頸がん検診 子宮頸がんとは?
https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/cervix/what/
[*2]日産婦誌61巻9号 N264〜 切迫早産の頸管長による予知・管理.pdf
http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/61/9/KJ00005703741.pdf
[*3]国立成育医療研究センター 早産外来
https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/senmon/sozan.html
[*4]日本産科婦人科学会 早産・切迫早産
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=5
病気がみえるVol.10産科 第4版

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます