2013年のカープ。エルドレッドの一発で暗黒期に終止符。キクマルも台頭し、いざ黄金期への夜明け
 5年ぶりのBクラス沈んだ1998年から続いていた長い長い暗黒時代に終止符を打った記念すべきシーズンとなった2013年。広島の球団史において大きな意味を持つこのメモリアルイヤーを余すことなく回想したい。

◎苦境の中で光った若手

 「伝説」の2013年シーズンを語る前に、当時の広島の状況を説明しておこう。

 2013年は、1998年から続く暗黒時代にあった。その不振を脱却するために2010年から就任した野村謙二郎監督もこの年で4シーズン目。若手を多く起用しなければならないチーム事情の中、我慢のシーズンが続いていた。それでも、2010年の26から、16、10と年々負け越しの数を減らしてきたように、辛抱して使ってきた選手たちが徐々に力をつけきていた。

 特に大エースへと成長を遂げた前田健太(現ドジャース)を筆頭に、野村祐輔、バリントン、大竹寛(現巨人)からなる先発4本柱はリーグ屈指の陣容を形成。抑えには安定感のあるミコライオが控えるなど、型にハマれば上位進出も夢ではない? そんなところまでチーム力は向上していた。

 とはいえ、主砲・栗原健太の不振で軸を欠く攻撃陣、手薄な選手層を見ると、戦力的には上位との差があることは歴然。シーズン前の下馬評は決して高くはなかった。

 そんな期待と不安が交錯する中でスタートした2013年は、引き分けを挟み4連敗と嫌な形での幕を開ける。その嫌な流れを断ち切ることができず、6月終了時には29勝39敗1分と、10個の借金を抱え、6月28日には早くも自力優勝が消滅する苦しい展開に。4月に前田智徳、エルドレッドという打の中心選手を死球による骨折で欠き、ウイークポイントだった打線がさらに弱体化してしまったことが痛かった。

 それでも、交流戦では11勝13敗で8位。借金は2ケタながらリーグ4位と大崩れせず、ギリギリのラインで粘れたこととで、CS進出には望みが残っていた。

 その原動力となったのが先発4本柱の力投と、この年に大ブレイクした1番・菊池涼介、2番・丸佳浩(現巨人)のキクマルコンビの活躍だ。丸は盗塁王、菊池は二塁手捕殺記録を打ち立てるなどめざましい活躍を見せた。

 中でも際立ったのが5月12日の中日戦で見せたアベック満塁ホームランだろう。スピードが武器だった両選手が長打で魅せたこのシーンは、新時代の広島を印象づけた。終わってみると2ケタに乗る本塁打を記録し、スピードに加えて1発も期待できる若手の登場にファンの胸は熱く高鳴った。2016年からのリーグ3連覇達成時に主役となる彼ら若手野手の台頭こそが、3位争いに踏みとどまれた大きな要因と考える。

◎ハワイからの救世主・キラ現る

 先発陣、菊池と丸の奮闘でなんとか3位争いに踏みとどまる広島だったが、打線の弱さは顕著だった。特に6月はチーム打率.218、本塁打は14。得点はリーグワースト2位の53得点と得点力不足は深刻だった。

 そんな危機的状況の中、救世主となったのが途中加入の外国人選手・キラだ。7月9日のDeNA戦で1軍初出場を果たすと、第3打席で来日第1号の本塁打をバックスクリーンに叩き込む。翌日も2号ツーランを放つと、その翌日には2本塁打を含む6打点と大暴れ。貧打に喘ぐ打線の起爆剤としてチームに勢いを与えた。

 打線の軸ができたことで、得点力不足が解消した広島。7月の月間得点は113と、6月の倍以上の得点を記録。キラ加入前は1試合平均3.2点だった得点が加入後は4.6まで上昇するなど、ハワイアンパワーが広島の野球を一変させたのだった。

◎628日ぶり登板の永川勝浩、劇的一発・石原慶幸らのベテラン力

 若手の台頭も去ることながら、ベテラン選手たちの活躍が光ったのも2013年だ。

 打線はシーズン途中で活性化したものの、7月も10勝12敗と負け越してしまうと、5位に転落。なかなか波に乗り切れない原因の1つがリリーフ陣の不調にあった。特に要の今村猛が不振に陥るなど危機的状況に。

 例年、広島は選手層の薄さから夏場に失速してしまう傾向にあり、今年もここまでか……。と、あきらめかけた時、この危機的状況を救ったのが、かつての守護神・永川勝浩と、セットアッパー・横山竜士の両ベテラン投手だった。

 7月、ケガで出遅れていた永川が628日ぶりに1軍マウンドに登板。かつての豪速球とフォークボールでねじ伏せる投球から、スライダーとシュートで打たせて取るスタイルにモデルチェンジ。この英断がハマり、与四死球率が大幅改善。ミコライオへと繋ぐセットアッパーとして、8月には月間3勝を稼ぐ救世主的な活躍を見せて完全復活を果たした。

 序盤は不振だった横山も7月以降はリリーフエースとして活躍。永川、ミコライオとともに勝利の方程式の一角として貢献した。必勝パターンが形成されたことで、救援陣の不安が一掃。勝負どころでチームに安定感が増した事で俄然勢いを増した。このあたりからCS進出が夢ではなくなってくる。

 また、投手陣のベテランもさることながら、野手のベテランも要所でチームを支えた。

 4月は相次ぐ主力の故障の中、廣瀬純が15打席連続出塁の快挙でチームを鼓舞。9月17日の巨人戦で放った石原慶幸のサヨナラホームランは、CS進出を引き寄せた一発といっても過言ではない。

 そして骨折した堂林翔太の穴を埋めて打率.325を残した木村昇吾の存在も見逃せない。守備のスペシャリストとして、毎年のようにいぶし銀の活躍を見せてきた。頼もしいユーティリティープレーヤーがベンチにいるだけで、どれだけチームは救われてきたことだろうか? その貢献は計り知れない。

 このように、経験のあるベテランが随所に光る活躍を見せ、延び盛りの若手と上手く融合できたことが、チームを大きく勢いづけたのだ。
 そして、8月13日の阪神戦に勝利すると、ついに中日を抜いて3位に浮上。8月は14勝12敗1分でシーズン初の月間勝ち越しを決めると、ここから広島の加速が始まった。

◎暗黒期の雲を切り裂く一発、そして夢舞台へ……

 9月に入ると一気にラストスパートを仕掛ける広島。10日から17日にかけて7連勝を飾ると、いよいよ夢舞台でしかなかったCSが現実のものとなってきた。

 そして迎えた9月25日、ナゴヤドームでの4位・中日と直接対決。0対0で迎えた7回表2死一塁、主砲・エルドレッドの放った打球は放物線を描きレフトスタンドに吸い込まれた。それはまるで、暗黒時代の厚い雲を切り裂く一筋の光にも見えた……。

 2対0。このまま逃げ切り、試合をものにしたことで、広島カープの16年ぶりのAクラス、初のCS進出が確定した!

 この結果にスタンドでは涙を流して抱き合うファンも数多くいた。

「優勝したわけじゃないのに?」

 そう思う他球団ファンも数多くいたことだろう。

 しかし、15年間苦杯を飲まされ続けたファンにとってAクラスという「称号」は優勝したに等しい喜びだったのだ。長年の暗黒時代に終止符が打たれたこと。そして、あと一歩のところで幾度となく阻まれてきた夢舞台についに到達できたこと。それが熱い涙につながったのだ。

 15年に渡る暗黒時代に終止符が打たれた2013年。我慢して育てた若手が育ち、その若手を補う形でベテランが躍動した見応えのある印象深いシーズンだ。長年の黒雲が晴れた広島はその2年後、25年ぶりのリーグ優勝を果たした。

 昨シーズンは4位と悔しい結果に終わった広島。今シーズンは、再び暗黒時代に戻らないためにもとても大切なシーズンとなる。新たな船出に期待したい。

文=井上智博(いのうえ・ともひろ)