原田ひ香さん、高校で出会った村上春樹の小説……「文体もすてき。わーって感動した」
読売新聞6/20(金)15:15

加藤祐治撮影 【読売新聞社】
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹著(新潮文庫) 上935円/下825円
中学生まで少年少女向けの全集のほか、夏目漱石や森鴎外、太宰治といった教科書に掲載されている文豪の小説になじんでいた。高校生の頃、ふと、「ここから先は何を読めばいいのだろう」と迷ってしまった。その時、小説好きの若い教師が貸してくれたのが、村上春樹さんの『カンガルー日和』だった。
村上さんの初期の短編集で、都会のモダンな雰囲気と洗練された文章に魅了された。「これまで読んできた作品とまるっきり違う。文体も素敵だし、わーって感動してしまったんです」
お金をためて、刊行されたばかりの『ノルウェイの森』や『ダンス・ダンス・ダンス』に読みふけった。とりわけ好きな作品が、幻想的な世界と冒険活劇が入り交じった長編『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』だという。
「(小説の中に)自分とは全く違う世界がある。ああいう心理世界を書いてみたいというのは、決してなくならない夢ですね。そういうふうに思われないかもしれないけれど、私が一番影響を受けた作家さんの一人です」
物語の途中、主人公の<私>は与えられた数値を脳内で変換し、まったく違う数字に置き換える「洗いだし(ブレイン・ウォッシュ)」という作業を行う。自身が作家になってから、「自分の脳を使って何かを変換して文章として出すということと、『洗いだし』の作業は近い」と気がついた。「村上さんもそう想像されたんじゃないかな」
かつて読んでいた文豪の作品では、「失恋、病気、貧乏」が定番の題材だった。「私もこの三つに当てはまるようなことを書いちゃう。村上作品は恋愛はあっても、『このスパゲティはいくらだった』とは言わないじゃないですか。新しかったんですよね」と笑う。
一昨年、村上さんの6年ぶりの新作長編『街とその不確かな壁』でも、刊行を楽しみにしていた。
「まるで『世界の終り』の続きのようで、何十年もたってあの時の続きを読むことになるとは思わなかったな、と思いながら読ませていただきました。一番たくさん読んでいる作家さんだし、今でも大好きな作家さんです」。リアルタイムで愛読できる作家がいる喜びをかみしめている。(小杉千尋)












