沖縄は23日、多くの住民を巻き込んだ太平洋戦争末期の沖縄戦の戦没者らを悼む「慰霊の日」を迎えた。組織的な戦闘の終結から79年となり、最後の激戦地だった沖縄県糸満市摩文仁まぶにの平和祈念公園では、県と県議会主催の「沖縄全戦没者追悼式」が営まれた。今も世界で戦争や紛争が絶えない中、参列者は不戦の誓いを新たにした。

 式典には、玉城デニー知事や岸田首相、衆参両院議長、遺族会代表ら約4500人が参列。正午に約1分間黙とうし、冥福めいふくを祈った。

 玉城知事は「平和宣言」で、米軍基地の過重負担に加え、台湾有事を念頭にした南西諸島防衛の強化に関して「自衛隊の急激な拡張が進められている」と指摘。「悲惨な沖縄戦の記憶と相まって、県民は強い不安を抱いている」と訴えた。

 東アジアの安全保障環境については初めて中国に言及し、「米中対立や中国の軍事力の強化、台湾や朝鮮半島を巡る問題など、自国の軍事増強により、抑止力の強化がかえって地域の緊張を高めている」との認識を示し、各国・各地域に「平和的外交・対話のプロセスを通した問題解決」を求めた。

 岸田首相は来賓あいさつで、「戦争の惨禍を二度と繰り返さないという決意の下、誰もが心豊かに暮らせる世の中を実現する」と誓った。また、米軍基地の集中による負担の軽減に向け、西普天間住宅地区の返還跡地(宜野湾市)に来春、健康医療拠点が誕生することを踏まえ、「成果を着実に積み上げる」と強調した。

 沖縄戦では、米軍が1945年3月26日に慶良間けらま諸島、4月1日に沖縄本島に上陸し、旧日本軍と苛烈な地上戦を繰り広げた。日本軍は本島南部に撤退して多くの住民が巻き込まれ、日米の犠牲者約20万人のうち約9万4000人に及んだ。

 沖縄戦などの犠牲者名を刻んだ同公園内の「平和のいしじ」では、遺族らが次々に訪れて手を合わせた。今年は県内外の181人の名前が新たに刻まれ、刻銘者数は計24万2225人となった。