ホテルやレストランで破損した食器を回収し、農業用肥料にリサイクルする計画が今年度中にも始まる。陶磁器大手が販売先企業と連携する。肥料の主原料である希少資源のリンを多く含む食器が対象。新たな「都市鉱山」から資源を循環させるモデルケースとして期待される。

「環境保護が企業の存続にも関わる時代」

 石川県白山市の陶磁器大手「ニッコー」が、同社の主力食器「ファインボーンチャイナ」をリサイクルする。白く仕上げるために牛骨由来の「リン酸三カルシウム」の含有率が約50%と一般的な磁器より高く、国内外の高級ホテルや飲食店で使われている。

 肥料を市販するには、農林水産省の認定が必要。リン酸肥料はリン酸アンモニウムなどが主に使われるが、同社には製造過程で生じた不良品を砕いて粒状の肥料に加工する技術があり、同省から2022年、リン酸肥料として認定を受けた。

 現在進められている計画では、新たに使用済みで破損した食器を対象にする。農水省と協議中で、早ければ今年度中にも肥料として認定される見通しだ。認定後、ホテルの厨房ちゅうぼうなど全国約100か所に廃食器の回収拠点を設ける。数年後には、同社の不良品年間12トンを加え、年間数十トンの肥料化を見込む。

 廃棄される食器は埋め立て処分が一般的で、同社の三谷直輝専務は「環境保護が企業の存続にも関わる時代。貴重な資源として活用したい」と話す。

 ホテル大手「ホテルオークラ東京」や東急ホテルズ傘下「ザ・キャピトルホテル東急」、高級レストラン運営「ひらまつ」が協力する意向。各社はSDGs(持続可能な開発目標)推進のため、リサイクル肥料で育てられた農作物を料理で提供することも検討する。

 農水省によると、リン酸アンモニウムはほぼ全量を輸入に頼り、その6割を中国からが占めている。自国内でリンを賄う取り組みで、一般社団法人「リン循環産業振興機構」の大竹久夫理事長(大阪大名誉教授)は、「国内のリン資源を有効活用できる重要な取り組み。活動を広げるには、肥料を使う農家との連携も欠かせない」と話している。