自民党派閥の政治資金パーティー収入を巡る裏金事件を受け、改正政治資金規正法が通常国会で成立した。そもそも政治資金パーティーとはどのような会で、なぜ政治家は規制に慎重なのか――。秘書への取材などで政治家の“言い分”に迫った。(川尻岳宏)

18〜22年で21団体

 コロナ禍だった近年、富山県内では大きなパーティーの開催は少なかったが、自民党県連は2022年5月、富山産業展示館(富山市)で大規模パーティー「政経文化セミナー」を開催している。来賓は、元首相の安倍晋三氏と党組織運動本部長(当時)の小渕優子氏。2人は1時間15分ほど話し、さらに作家の竹田恒泰氏もオンラインで登場して約1時間、講演した。

 政治資金収支報告書(収報)によると、このセミナーに参加するためのパーティー券(1万円)は7832人に販売された。会場使用料などを差し引くと県連は5000万円の収入を得ており、これが後に行われた参院選での活動資金となった。

 パーティー券は政治家に販売枚数のノルマが課せられる場合もあるが、県選出国会議員の秘書は「『普段は聞けない貴重な話を聞ける』と楽しみにしている支援者もいる」と語る。

 パーティーの形態は〈1〉ホテルでの立食形式〈2〉著名評論家の講演会〈3〉政治家自ら政策を論じる勉強会――などがある。県選挙管理委員会に届け出がある政治団体はこのようなパーティーを18〜22年で延べ21団体が開催しており、それによる収入は20万〜9600万円だった。

やるべき事おろそかに

 パーティーで集めた政治資金は、政治家の様々な支出に使われる。

 その一つが秘書の人件費だ。国会議員は公費で秘書を3人まで雇えるが、大半の議員はそれ以上の人数を雇っている。こうした私設秘書の給与や社会保険料は議員の負担になる。選挙区が広ければ複数の事務所を設けることになり、人件費に加えて家賃や水道光熱費などの経費も増える。

 ある秘書は「パーティーを禁止すると、私たちの活動は維持できなくなる。秘書に任せていた事務を議員がやり、本来やるべき政策の勉強や人に会うことがおろそかになる。政治からダイナミックさが失われるのではないか」と危惧する。

名前公開渋る場合も

 パーティー券は、購入額が一定の金額を超えると、収報に〈1〉個人・組織の名前〈2〉住所〈3〉購入額――が記載され、誰でも県のホームページで見られるようになる。今回の法改正で、公開基準は「20万円超」から「5万円超」に引き下げられた。

 ある秘書は「政治色を付けたくないので、券は購入しても名前は明かしたくない企業は多い」と推測する。特に富山では、この影響が強く出る可能性がある。与党に属さない県在住国会議員2人が元々は自民所属で、「古い付き合いで、自民と自民以外の双方から券を買う人は多い。そういう人は名前の公開を渋る。今後は購入額を5万円以下に減らすのでは」と予想した。

 別の秘書は「決まった法律に従うのは当然」とした上で、こう恨み節を漏らした。「そもそもの決まりを守り、券の収入を収報に記載していれば何も問題はなかった。一部の政治家が違法行為をしたせいで、有権者に『政治家がお金を集めることは悪い』というイメージがついてしまった」