イラン攻撃1週間、イスラエルが圧倒的軍事力で戦果…出口戦略示さず体制転覆も公言
読売新聞6/20(金)6:51

19日、テヘランで、イスラエルの攻撃を受けたイラン国営テレビの建物内で片付けにあたる人たち=ロイター 【読売新聞社】
【エルサレム=福島利之、カイロ=西田道成】イスラエルは、20日で1週間となるイランとの交戦で圧倒的な軍事力を背景に戦果を上げてきた。明確な出口戦略を示さないまま、イランの体制転覆まで公言していることには国内でも懸念が出ている。
航空戦力で圧倒
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は18日、イランの核兵器と弾道ミサイルの脅威除去のため軍事作戦を始めたとして「一歩ずつ前進している」とする声明を出した。
米国から高性能な兵器の供与を受けるイスラエルは、長年の制裁で兵器の更新が遅れているイランに対して優位に立つ。13日にイランへの空爆を開始して以来、核施設やミサイル発射拠点などを次々と空爆し、軍の主要幹部を殺害した。弾道ミサイルの半数近くを破壊したとしている。
英国際戦略研究所の「ミリタリー・バランス2025年版」によると、予備役を含まない兵力はイスラエルが約17万人でイランの3割以下だが、900キロ・メートル以上を隔てた両国の衝突では、航空戦力やミサイルの性能が重要だ。イスラエルが保有する米国の最新鋭ステルス戦闘機F35は、1979年のイスラム革命前に導入した米戦闘機F14やロシア製の旧型機が主体のイラン側に性能面で勝る。
イランは遠隔から直接攻撃できるミサイルの開発に注力してきた。2023年には初の極超音速ミサイルを公開し、昨年10月のイスラエルへの攻撃から実戦投入している。これに対し、イスラエルは長距離弾道ミサイル迎撃システム「アロー」などで守りを固めており、イランの攻撃の大半を迎撃している模様だ。
ただ、最先端の迎撃システムもイランからの弾道ミサイルを全て防げるわけではなく、19日現在で24人が死亡、838人が負傷した。19日もイランのミサイル攻撃があり、南部ベエルシェバでは病院に着弾した。
「出口戦略なし」
イスラエルの高官が頻繁に口にするのが、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師の殺害と体制崩壊だ。
ネタニヤフ氏は16日、米ABCテレビのインタビューでハメネイ師の暗殺を排除しない考えを示した。英拠点のイラン反体制派のテレビ局の取材に「あなたたちが自由になる時は近い」と述べ、交戦がイランの体制崩壊につながるとの認識を示した。
イスラエルのヤアコブ・アミドロール軍予備役少将は本紙などの取材に対し、イランを攻撃する目的は「核兵器開発の阻止だ」と述べ、イランの体制転覆を目標とすることに批判的な考えを示した。
そもそも体制転覆をイスラエルの軍事力だけで達成するのは難しく、イラン国民の離反頼みというのが実情だ。カッツ国防相は18日、「(イランで)群衆は避難している。いかに独裁体制が崩壊するかを示している」との声明を出した。
イスラエル政府は、軍事的な成果に触れて体制崩壊への期待感を示す一方、和平交渉や戦後処理の方針を示していない。有力紙イディオト・アハロノトは、出口戦略なくイラン攻撃を始めたと指摘する。
テルアビブ大のデイビッド・メナシュリ教授(イラン研究)は本紙に対し、「イスラエルの攻撃は、イランの核開発計画を遅らせただけで、イランはいつか再起するだろう。体制崩壊は、イラン内部からしか起こらない」と指摘した。











