【ソウル聯合ニュース】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は1日、自身の政権時代に黄海上で起きた北朝鮮軍による男性公務員射殺事件の捜査について「安全保障体制を無力化する分別のない行いに深い憂慮を表する」との立場を表明した。

 文前大統領はこの日、最大野党「共に民主党」の尹建永(ユン・ゴニョン)国会議員が代理で発表した書面で「(当局の捜査は)安保事案を政争の対象とし、長年国家安保に献身してきた公職者の自負心を踏みにじっている」として「どうか度を越えないことを願う」と述べた。

 事件当時の政府の判断を巡る検察の捜査に対し、文前大統領が立場を明らかにしたのは今回が初めて。

 文前大統領は10月、監査院から事件に関する書面調査に応じるよう通知を受けたことに対し「非常に無礼な行為」と強い不快感を示していた。

 韓国海洋水産部所属の公務員だった男性は2020年9月、北朝鮮に近い韓国北西部の小延坪島付近で漁業指導船乗船中に行方不明となり、翌日に北朝鮮側海域で北朝鮮軍に射殺された。当時の文政権は男性が自らの意思で北朝鮮に渡ろうとしたと発表した。だが、海洋警察は今年6月、男性が自らの意思で越境したと断定できる根拠が見つからなかったとして、当時の判断を覆した。

 文前大統領は、越境を巡る判断の根拠となった情報や状況は変わっていないのに政権が変わったことで正反対の結論になったとして、男性が北朝鮮に渡った他の理由が説得力を持って提示されなければならないと主張した。

 このような立場を発表したのは、検察が当時の安全保障の責任者だった徐薫(ソ・フン)前国家安保室長の逮捕状を請求するなど、文政権の関係者を筆頭に野党に対する圧力が度を越していると判断したためとみられる。

 文前大統領が現政権の捜査を直接的に非難したことで、新旧政権間の対立が再び激化するのではないかとの見方も出ている。