【ソウル聯合ニュース】韓国政府が医師不足などの対策として発表した大学医学部の入学定員増の方針に反発し、専攻医(研修医)が集団で辞表を提出したほか、全国の医学部学生の一部が一斉に休学届を出すなど、医療現場の混乱が拡大している。

 専攻医や開業医団体、医学部学生が集団抗議を行うのは、政府との対立で医師側がこれまで「負け知らず」であることが影響しているとの見方が出ている。医師が代替不可能な人材であることから、医療崩壊を懸念する政府が結局は折れるというこれまでの経験が自信になっているという。

◇「免許取り消し」の警告も通じず 「政府は医師に勝てない」  

 政府は医学部の定員を増やす方針を発表して以来、職場離脱など医師の抗議行動があれば、法と原則に則って厳正に対応すると強調してきた。

 保健福祉部や法務部は職場から離脱した医師の免許を取り消し、集団抗議の首謀者は逮捕・取り調べする方針を発表したが、政府の警告をあざ笑うかのように専攻医の辞表提出や医学部学生の休学届提出は増加を続けている。

 保健福祉部によると、21日までに全国の主要な100病院に所属する専攻医のうち、74.4%の9275人が辞表を提出した。職場を離れた専攻医は8024人という。

 また教育部によると、この3日間で、34の医学部で1万1778人が休学を申請した。全国の医学部在学生1万8793人の62.7%に達する。

 政府の警告に対し、医療界関係者は「嘲笑」に近い反応を示した。大韓医師協会の盧煥圭(ノ・ファンギュ)元会長はSNS(交流サイト)で「政府は医師に勝てない」とし、「(政府が)医師たちに勝てると考えたこと自体があきれるほど愚かな発想」と発言。医療現場の混乱は避けられないだろうとする盧氏の指摘は現実化した。

◇自信高める医師たち 反発すれば政府が常に「白旗」

 医師たちの自信の背景には、これまで数回にわたり抗議行動で政府を「降伏」させた経験がある。

 2000年には医薬分業を進める政府の方針に反発した医師たちが大規模なストライキを実施するなど強く反発した。2014年には遠隔医療の推進を打ち出した政府に大韓医師協会が反発。ゼネストを主導して、各病院が診療時間を短縮するなどした。

 2020年にも政府は新型コロナウイルス感染拡大を受け、医学部の定員を増やす方針を打ち出したが、反発した医師団体がストを実施。政府は議論をスタート地点に戻すとする事実上の降伏宣言を出した。当時の医学部学生たちは政府案に反発して医師の国家試験をボイコット。政府は医学部の定員増を取り下げた後も再試験を拒否したが、医師団体の要求により再受験を認めた。また、業務開始命令に従わなかった専攻医に対する告発も取り下げた。

 市民団体の経済正義実践市民連合の関係者は、医師側はこれまでの経験から抗議活動を行っても処罰されないという自信を持っているとの見方を示したうえで、「しかし、今は医学部の定員増について賛成する世論が圧倒的だという事実も忘れてはならない」と指摘した。