【解説】備蓄米の「買い戻し」に2つの課題 生産量より需要が上回ってきたコメ、農政の転換期となるか

読売テレビニュース6/7(土)13:00

【解説】備蓄米の「買い戻し」に2つの課題 生産量より需要が上回ってきたコメ、農政の転換期となるか

安いコメ、いつまで続く?

 2025年6月3日、これまでの入札備蓄米の販売先について、小泉進次郎農水相は「中食・外食は本来の狙いではない。小売店の不足感を解消することが大事」と発言しました。そこで出てきたキーワードが『買い戻し』ですが、内容は非常に複雑です。政府が考えるべき課題とは?読売テレビ・指宿文解説委員の解説です。

■随意契約のほうが“お得”?懸念される競争入札の取引キャンセル

競争入札・随意契約の違い

 政府が随意契約で売り渡した備蓄米の販売が、各地のスーパーマーケットで始まりました。5キロ2000円台のコメを求めて、長い行列ができる店や、即完売してしまう店も…。その他にも、コンビニ大手・ファミリーマートは5日から東京・大阪の一部店舗で備蓄米の販売を始め、その価格は1キロ388円と少人数の家庭には手に取りやすい量・価格になっています。

 しかし新たな問題が出てきました。今回随意契約で売り渡したコメは2021・2022年産で、60キロあたり1万1556円と、年度は古いですが、5キロ2000円程度で販売されています。一方で、その前に競争入札で売り渡していたコメは2023・2024年産で、60キロあたり2万円台で落札され、現在5キロ3500円前後で販売されています。

小泉農水相が考える『買い戻し』

 そのため、競争入札のコメについて卸売業者と取引をキャンセルする小売業者が出てくるのでは、ということが懸念されています。これに対し、国がどのように対応するかが問われていて、小泉農水相は一旦、卸売業者や集荷業者にあるコメを政府に戻し、それを政府備蓄米として随意契約で再販する『買い戻し』も「選択肢だ」と発言しています。

■“買い戻し”2つの課題 国が出した選択肢は市場を混乱させる?

課題①手続き

 『買い戻し』をする場合、2つの課題が出てきます。1つ目の課題は、『手続き』です。すでに放出された備蓄米を買い戻して倉庫に戻す際にも、随意契約で再び出荷する際にも、運送費がかかります。流通経済研究所の折笠俊輔主席研究員は、「運送費がかさみ効率的ではない」と指摘しています。

 現在、卸売業者や集荷業者にある備蓄米を一度倉庫に戻すのか、随意契約で申し込んだ業者に直接輸送するのか、といった制度設計を検討する必要があります。

課題②価格

 2つ目の課題は、『価格』です。買い戻しする備蓄米には新米(2024年産)も含まれるため、随意契約で5キロ2000円台の販売になると、生産者は「安すぎる」と感じるかもしれませんし、競争入札に参加していた卸・小売り業者からは返品が相次ぐのでは、という懸念もあります。流通経済研究所・折笠主席研究員は、「物流を疲弊させ、市場を混乱させるだけになるのでは」と指摘しています。

備蓄米“買い戻し”現実味は?

 『買い戻し』の現実味について、スーパー『フレッシュマーケットアオイ』の内田寿仁社長に話を聞くと、「“2000円の備蓄米”が、そこまで出回るかどうか。3000円台の(コメの)買い控えは心配していない」と話していました。フレッシュマーケットアオイでは、6月末に3500円前後のコメを入荷する予定を立てていて、キャンセルするつもりはないということです。

 『買い戻し』という1つのキーワードから様々な考えが出ていますが、備蓄米という“国の財産”に対して国がどのような選択肢を出してくるか、これからの動向に注目する必要があります。

■「見立てを誤っていた」小泉農水相の発言は大きな転換点に?

これまでの政策を否定か

 小泉農水相は6月2日、大きな転換点になるのではないかという発言をしました。「今まで(需給の)見立てを誤っていたことも事実。“新米が出れば大丈夫”と言って、大丈夫ではなかった」と、これまでの農政を否定した形です。

農政の転換できる?

 コメの需要と生産量について、これまで「足りている」と言われてきましたが、実際は生産量が下がり続け、2021年産からは需要が生産量を上回る状況が生まれています。

 これまでは値崩れを防ぐために、生産調整としてコメを大豆・麦・飼料用米に変えることで補助金を出すという事実上の減反政策が続いていました。国としてはコメの国内生産を増やしたいという意向を持っていましたが、コメの需要が高まり価格が上がった結果、コメの民間輸入は増加。財務省の貿易統計によると、2025年4月は6838トンのコメが輸入されました。2024年の1年間では1008トンだったため、1か月で去年の約7倍の量が輸入されたことになります。

 そんな中、高値が続くコメをめぐり、はじめての関係閣僚会議が5日行われました。小泉農水相はコメ高騰の要因の一つとして、コメの流通ルートが複雑であることをあげ、詳しく分析していく考えを示しています。また、コメの安定供給にむけた中長期の対策についても触れ、コメの増産をする場合には海外のマーケットの開拓も必要だとして、生産者などに対し「今まで以上の体制、政策、支援が必要」だとしています。

 コメ農家や流通関係者からも物価高騰や人材不足などによる苦しい現状を嘆く声が挙がる中、消費者が待ち望む「安いコメ」が安定的に届くようになるのか、今後のコメの流通の動きが注目されます。

(「かんさい情報ネットten.」2025年6月4日放送に一部加筆)

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