超新星SN 1987Aの残骸に中性子星を発見 ウェッブ望遠鏡による観測

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた超新星SN 1987Aの残骸。左は2023年にウェッブ望遠鏡のNIRCam(近赤外線カメラ)で撮影されたもの。右はMIRI(中間赤外線装置)とNIRSPEC(近赤外線分光器)の画像で、イオン化したアルゴンからの光を示しています。どちらも残骸の中心にアルゴンの光がみられます。Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Claes Fransson (Stockholm University), Mikako Matsuura (Cardiff University), M. Barlow (UCL), Patrick Kavanagh (Maynooth University), Josefin Larsson (KTH)
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた超新星SN 1987Aの残骸。左は2023年にウェッブ望遠鏡のNIRCam(近赤外線カメラ)で撮影されたもの。右はMIRI(中間赤外線装置)とNIRSPEC(近赤外線分光器)の画像で、イオン化したアルゴンからの光を示しています。どちらも残骸の中心にアルゴンの光がみられます。Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Claes Fransson (Stockholm University), Mikako Matsuura (Cardiff University), M. Barlow (UCL), Patrick Kavanagh (Maynooth University), Josefin Larsson (KTH)

1987年2月、地球から約16万光年離れた大マゼラン雲で輝き始めた超新星SN 1987Aが観測されました。その後、5月に明るさがピークに達しました。肉眼で観測できる超新星としては、1604年のケプラーの超新星以来のものでした。

SN 1987Aは「II型」と呼ばれるタイプの超新星爆発です。II型超新星爆発は、大質量星の中心核が重力的に不安定になってつぶれて重力崩壊し、それが引き金となって大爆発を起こすものです。

SN 1987Aでは、超新星爆発によって中性子星かブラックホールのいずれかが形成されたと予想されました。それ以来、超新星残骸の中心にあるコンパクトな天体の証拠の探索が続けられてきました。しかし中性子星の存在を示唆する間接的な証拠は見つかっていたものの、その存在を直接的に示すものは観測されていませんでした。

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ウェッブ望遠鏡の観測データが中性子星の存在を示した

ストックホルム大学のClaes Fransson氏らの研究チームは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使ってSN 1987Aのスペクトルを観測。スペクトルの分析から、高度にイオン化したアルゴンや硫黄の存在を示す輝線が検出されました。アルゴン(原子番号18)は、18個の電子のうち5個を失ったイオンが発見されました。そのようなイオンの形成には、高エネルギー光子が必要となります。

「私たちが観測したイオンの生成には、SN 1987Aの残骸の中心に高エネルギー放射源が存在しなければならないことは明らかでした」とFransson氏。論文ではさまざまな可能性について議論。可能性がありそうな少数のシナリオのいずれもが、新たに形成された中性子星が関係していることが分かったとのことです。

(参考記事)超新星1987Aの詳細構造をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測

(参照)Webb Space TelescopeESA/Webb