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 第8回横浜トリエンナーレは、横浜の街全体をアートと捉えているのが大きな特徴。美術館のみならず、街のあちこちにアート作品が展示され、横浜の街を彩ります。

 横浜トリエンナーレに合わせて開催されるアートプログラム「アートもりもり!」では、横浜駅から山手地区におよぶいくつかのアートスポットで作品を展示しています。

 トリエンナーレの本会場でもある横浜美術館を堪能したら、横浜の街歩き。新高島駅・黄金町・山下公園エリアのアート作品を鑑賞に行きましょう。

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【前篇】リニューアルした横浜美術館を中心に横浜トリエンナーレを堪能し尽くす! を読む


市内のアート拠点を総括した「アートもりもり!」

 近代的なビルが立ち並ぶ一方で、古いものを愛する「ハイカラ」な雰囲気もある横浜はアートが盛ん。行政的にも港を囲む独自の歴史や文化の活動を応援する土壌が根付いています。こうした背景が都市型の大規模な国際展「トリエンナーレ」の開催につながり現在に至ります。

 横浜トリエンナーレ会期中は、「アートもりもり!」と題して、横浜駅から山手地区におよぶ広いエリアで期間限定のアートを展示します。市内のアート拠点が点在する「アートもりもり!」の見どころをピックアップしました。

新高島駅構内にもアートがずらり! 横浜にちなんだユニークなアートに目が釘付け

 2004年の活動開始から20年にわたり、都市と対峙しながらオルタナティブなアート・スペースの運営を続けてきたBankART1929。紹介するみなとみらい線「新高島駅」構内の「BankART Station(バンカートステーション)」のほか、みなとみらい21地区、関内地区、ヨコハマポートサイド周辺地区の3つのエリアの日常空間に作品を展開しています。

 BankART1929の中核的な施設となる「BankART Station」は、展示室と倉庫からなる約1,500平米のスペース。新高島駅地下1階に広がる大空間であり、外部空間への結節点でもあります。

 トリエンナーレにあわせて開催される7回目となるバンカートライフのテーマは「再び都市に棲む」。横浜にちなんだ作品が多く、身近に感じるものばかり。横浜のどこだろう? と考えを巡らせながら作品を鑑賞していくと、よりアートを楽しめます。

◆身近にあるもので作った伊勢佐木町の街並み

 日常の出来事をシンプルな現象で再現するキネティック作品と、印刷物などからの想像や類推でイメージを展開させていく平面作品を組み合わせた空間構成が特徴的なアーティストユニット作品です。

 この作品は伊勢佐木町あたりの風景を身の回りのもので再現しています。よく見ると段ボールやレシートなど身近なものが使われているのがわかりますか? 廃棄されるもので作られた新陳代謝を繰り返す伊勢佐木町の街並みという素材と図案がユニークで見入ってしまいます。

 今の伊勢佐木町の風景を今の素材で形づくって残すことで、何年か後の未来に見たときに、この作品をどう受け止めるのか。この町の景色がどう変わっていくのか、次が見たくなってきます。

◆グーグルアースで見つけた“落書き”を立体作品に

 街の中にある落書き(グラフィティ)を、木彫りにした作品。ゲリラ的に描かれた落書きは目を止める人は少ないかもしれません。もしかしたら消されてしまう可能性のある落書きを都市の記憶として彫刻に落とし込み、作品として残しています。作品の近くにあるQRコードを読み込むとグーグルアースや地図が映し出され、実際に作家が落書きをキャプチャした場所を見ることができます。

 長い年月が経つとなくなる可能性のある落書きに注目し、横浜の今の姿を映し出しています。

◆「中華街」と「山下公園」をブレンドした臭いを表現

 臭いを想像させる作品を作るさとう くみ子は「臭い」で都市を表現。天井に繋がっている2本の編み込まれた筒は、それぞれ「中華街」と「山下公園」に繋がっています。中華街と山下公園が合わさってできた臭いはイガイガした黒い物体としてつくられます。これは、おいしそうとは言い難いけれど…と考えを巡らせていると箱の中から「ごはんできたよー」の音が聞こえてきます。ちなみに、無味無臭の作品です!

 音が鳴る、動くなど五感に響き直感的に楽しめるアートが豊富なので、子どもから大人まで、アート初心者でも気軽に楽しめそう。駅構内なのでサクッと立ち寄りやすいのも高ポイントです。

 また、入場時には会期中何度でも入場できるパスポートとともにガイドブックとマップがもらえるので、それらを片手に、屋外や周辺地図に設置された作品巡りに出かけることもできます。

BankART Station

所在地 みなとみらい線新高島駅構内地下1F
https://bankart1929.com/life7/

2024.05.03(金)
文=桐生奈奈子
写真=佐藤 亘、Katsuhiro Ichikawa