7月26日から8月11日にかけて開催されるパリオリンピック2024。そのパリ五輪で新種目となり注目を集めているブレイキン。日本からは、昨年のアジア大会で優勝したShigekixが既に内定を決めている。
パリ五輪への出場権は、男女各16で各国上限は2枠。現時点では昨年の世界選手権優勝者1枠、各大陸王者の5枠が既に決定済み。そして開催国フランス1枠、国際オリンピック委員会(IOC)などが割り当てるユニバーサリティ2枠はOQSの結果に応じて決まる中、残る7枠は今回の上海と6月にブダペストで行われるOQSでの上位7人に与えられることが決まっている。予選大会を通じてOQSの出場資格を得たファイナリストは世界で40名(男女それぞれ)。
日本人選手は、この数年間で五輪フォーマットの大会において数多くの好成績を残しており、男女共に五輪出場への期待が高い。
ブレイキン注目選手
Issin
今年2月に行われた日本ブレイキン選手権では、パリ五輪へ内定しているShigekixに勝利し、初の日本一を手にしたIssin。2022年からは、Red Bull BC One World Finalなど、世界トップクラスの大会でも活躍することが多くなり、この3年間で一番伸びしろのあった日本人Bboyといっても過言ではない。
元々はパワームーブを強みとし、ダイナミックでパワフルな技を武器とするスタイルだが、近年は世界でも活躍する中で、ムーブの独創性や音楽性も進化しており、まさに無双状態である。ただし、ムーブ数が多く必要となる五輪フォーマットでは、体力面や技の成功確率が勝負を左右するため、Issinにとってはそこがポイントになるだろう。
毎回、世界大会向けに新技を仕込み、ジャッジやオーディエンスにサプライズを与えるIssinが、今回はどのような戦いで世界に挑戦するのか要注目だ。
Hiro10
2024年のジャパンオープンを優勝、日本ブレイキン選手権は2位と、この一年で日本のトップランカーへ一気に駆け上がったHiro10。彼もIssinと同様に、パワームーブを中心に組み立てるスタイルで、そのスキルは世界も圧巻させるものがある。
既にShigekixが内定を決めているため、男子日本代表の出場枠は残り1枠。世界の頂上決戦で繰り広げられる、Issinとの日本代表争いにも注目が集まる。
Ami
今回の日本人出場選手で、近年、最も多くの世界タイトルを獲得しているBgirl。五輪フォーマットである世界選手権の王者、そして20年の歴史を持つ世界最高峰の大会、Red Bull BC One の世界王者にも輝いた経験を持つ。
ブレイキンが五輪新種目に決まった時から、既にシーンの第一線で活躍していた彼女は、パリ五輪開催が近づくにつれて注目が集まる中で、世間一般に向けてもブレイキンの魅力を発信し続けてきた。
今回のOQSを勝ち抜き、五輪出場を決めることで、ダンススポーツやカルチャーといった、ブレイキンの中でのカテゴリに囚われない本当の強さを示すことになる。五輪前の世界戦で集大成を見せることが出来るか、Amiの活躍にも注目。
日本人出場選手
Bboy:Issin (菱川一心)、Hiro10 (大能寛飛)
Bgirl:Ayumi (福島あゆみ)、Ami (湯浅亜実)、Riko (津波古梨心)
大会スケジュール
以下すべて現地時間。日本時間は1時間進んでいる。
※日程は変更になる可能性もある。
5月18日(土)
・15:15 〜 男女 1次予選(プレセレクション)
・19:00 〜 女 2次予選(プレクオリファイヤー)
・20:15 〜 男 2次予選(プレクオリファイヤー)
5月19日(日)
・10:00 〜 女 ラウンドロビン(グループステージ)
・13:45 〜 男 ラウンドロビン(グループステージ)
・17:30 〜 男女 準々決勝
・18:30 〜 男女 準決勝
・19:00 〜 男女 決勝
大会の模様はオリンピックチャンネルで視聴可能
オリンピック予選シリーズ (OQS) 上海大会の戦いの模様はOlympics.comのオリンピックチャンネルで配信が予定されている。また最新情報も同ウェブサイトからチェック可能。なおパリオリンピック公式アプリをダウンロードすると随時最新情報を気軽にチェックできるためオススメだ。
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skateSkateboarding Unveiled vol.12 ~ストリートとパーク~2024.05.29フォトグラファーの多様化 スケートボードが世の中に広く認知されたのは東京オリンピック。これに異論がある人はいないだろう。 それに伴い、最近はスケーターを撮影するカメラマンも多様化してきたと感じている。ではどう多様化してきたのか。今回はそこを2タイプに分け、特性を分析していきたいと思う。 ストリートとパーク ストリートとパーク。この2つはロケーションだけでなくカメラマンの特性も変わってくる 最もわかりやすいのが撮影ロケーションにおける分類だ。ストリートとパークに分けると、二極化ともいえる現状があると思っている。ただ気をつけていただきたいのが、オリンピック競技種目の「ストリート」と「パーク」ではないということ。 ここでは、社会に存在する皆が共有している公共空間としてのストリート(そもそも滑るべきではないという主張は、今コラムでは置いておく)と、スケートパークという意味でのパークを指す。 この2つは撮影場所もシチュエーションも大きく異なるので、カメラマンの特性も大きく異なってくるのだが、ストリートは、ほぼ100%の確率でカメラマン側もスケートボーダー。より専門的で尖った芸術家タイプが多く、後者のパークはスケートボードをスポーツのひとつとして撮影しており、マスに向けた写真を撮る商業家タイプが多いと感じている。 多くの方がよく目にするのは、間違いなく後者だろう。今やX GAMESなどの国際大会はもちろんのこと、全日本選手権にも多くのマスメディアが駆けつけるようになったし、優勝者が囲み取材を受ける光景も決して珍しいものではなくなった。ただこういったコンテストを撮影するフォトグラファーは、実はオリンピック種目になって以降増加した後出の部類になる。 ただ今はそこから発展して、アクションスポーツ(アーバンスポーツ)フォトグラファーと名乗る人も増えてきているように感じるので、そういったところからも社会的認知度が上がったと感じている。 求められるのは即時性 先日の全日本スケートボード協会の関東アマチュアサーキットより。皆の喜ぶ表情がライディング写真の価値を高めている。 このパークという区分におけるカメラマンの仕事の特徴は即時性が求められるところだろう。1日何千枚という写真を撮って、そこからいかに素早くセレクト・編集するか。撮影から納品までの効率的なワークフローが重要なファクターを占めている。そのためイベントフォトグラファーと言い換えることもできるだろう。 ただそれはどんなスポーツでも同じこと。スケートボードの世界においてストリートの撮影と決定的に違うところは、自分の狙ったアングルで撮影できるかどうかにある。コンテストは当然自由に撮影はできない。オフィシャルカメラマンで入っているならまだしも、外部からメディアとして取材に入る場合、大概は指定されたわずかな取材エリアでしか撮影できない。そうした限られた条件の中で納品レベルの写真を数多く撮影できるかが重要になってくる。 さらに選手のトリック写真はもちろんのこと、その裏には多くの喜怒哀楽が詰まっているので、そういった要素も踏まえて全体をドラマのように記録できるかも大切だ。そうすることでトリック写真の価値も上がってくるだろう。 またこういった条件下では必然的に納品枚数が多くなってくる。その分一枚に対する比重は低くなるので、言い換えればそこまでスケートボードの知識が深くなくてもこなせるが、スケートボードを知ってるだけでもこなせない多方面でのスキルが必要になるのが特徴であると思う。社会に認知されてきた分、社会性のある仕事(=商業写真)が加味されたのがパークで写真を撮る人物に求められていることだとも思う。今の自分は、こちらの仕事をこなすことの方が多い。 一枚の芸術の追求 ライティング、構図、ボケ、それら全てにこだわった一枚を追求する作品作りがストリート 対してストリートでの撮影は、人数でいえば今は少数派ではないかと思う。そのため、これから述べることに対して理解を得ることは難しいかもしれない。そういう方も”双方を比べた違い”という観点だけで捉えていただけたら幸いだ。 そこを一言でいうなら「一枚の芸術の追求」になると思っている。ストリートは基本的にどこで何をやるのも自由(もちろん他人に迷惑をかけてはいけないという前提のもとで)なので、場所だけでなく時間帯や季節、時間帯にまでこだわった絵作りをするケースもあるし、カメラマンから見ても、アングルはもちろん使うレンズやライティングも、基本的に自らの好きなように組み立てることができる。 だからこそ撮影する側も楽しく、スケートボーダー側も撮れた時はコンテストで優勝した時と同じくらい嬉しいと多くの選手が語っている。プレイヤーとクリエイターの共同作品作りというとわかりやすいだろうか。 そういった条件下であれば、当然コンテストほど多く撮影することはないし、プレイヤーと1対1でトリックを撮るなら、多くても数十枚だろう。一枚に対する比重がコンテストよりも格段に重くなるのが特徴だ。 しかも共同作業になるので双方でしっかりとコミュニケーションをとる必要があるだけでなく、スケートボードの専門知識やライティング技術も身につけておかなければならない。 撮影後のレタッチも含め、時間を費やして1枚の写真を仕上げる。そこにオリジナリティや個性も加味してオンリーワンに仕上げていくのがストリートの撮影であり、こういった写真がスケートボードブランドの広告として専門誌やホームページに大々的に掲載される。 これはオリンピック競技に採用されるはるか前からずっと行われ続けてきているものなので、現在ストリートをメインに活躍しているフォトグラファーは、少なからず過去のそういった創造性ある写真のカッコ良さに魅かれてキャリアを歩み始めた人が多いのではないかと思う。かくいう自分もその1人だからだ。 スケートボードのハレーション スケートボードは社会においてハレーションが起こりやすい現状がある 以上がスケートボードフォトグラファーのタイプ別分析になる。では最後になぜこのようなことを書いたの述べて締めたいと思う。 自分はフォトグラファーとして、業界のメインストリームがストリートからパーク(コンテスト)に移り変わる様を、専門誌というフィルターを通してメディア側からリアルに見てきた。それは社会的に見てアンダーグラウンドからメジャーへの階段を駆け上がっていった過程でもあったと思う。 それと同時に、スケートボードは日本社会においてものすごくハレーションを起こしやすいものであることも身に染みて感じている。 だからこそ双方にとって良い未来が実現できるように、間に立ってクッションとなる存在が必要であると思うし、それができるポジションのひとつが、業界の深いところからマスまでを見てきた自分ではないかと思っている。 実は今回が「Skateboarding Unveiled」コラムの最終回。 もともとハレーションという言葉は写真用語のひとつで、強い光の影響を受けて発生する現象を指すことから、「悪影響を及ぼす」といった意味でビジネスでも用いられている。そこでスケートボードで起きやすい社会的なハレーションを、自分の専門分野である写真から間接的に表現し、これから解決すべき課題を挙げさせていただいたつもりだ。自分はこれからもスケートボードの明るい未来のために活動していきたいと強く思っている。 皆さんがもしスケートボードに興味があれば、これからも私の写真や記事を目にすることがあるはずです。その数が多ければ多いほど明るい未来に進んでいると思ってください。これからもそのために全力で突っ走ります。どうもありがとうございました。 吉田佳央 / Yoshio Yoshida(@yoshio_y_)1982年生まれ。静岡県焼津市出身。高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本の監修や講座講師等も務める。ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている。
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skate壮絶な代表権争いの火蓋が切られた「オリンピック予選シリーズ(OQS)」上海大会 男子スケートボードパーク種目2024.05.24パリオリンピック予選大会最終シリーズとなる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」の1戦目である上海大会のスケートボード・パーク種目が、中華人民共和国・上海にて開催され、競技最終日の5月19日(日)に男子決勝が行われた。 フェーズ2として該当する今大会は、フェーズ1を終えた時点の世界ランキングポイントに基づいて選出された44名の選手に出場権があり、パリオリンピック予選大会の中でも全体の得点の3割以上のポイントが与えられることから、結果次第ではこの一大会で逆転して出場権争いに大手をかけるチャンスであり選手たちの一挙手一投足がパリオリンピックへの出場を左右する独特な緊張感を持つ戦いとなった。 今回はやはり一大会だけでフェーズ1で積み上げたものがひっくり返るということもあり、世界ランキングトップ勢が満を持して登場し、全44名の出場者の中で予選・準決勝と狭き門を勝ち抜き決勝へ進出。なぜ彼らが世界トップなのかを示す展開となった。合計8名で競われる本決勝のスタートリストはギャビン・ボットガー (アメリカ合衆国)、キーラン・ウーリー (オーストラリア)、ジャガー・イートン (アメリカ合衆国)、アウグスト・アキオ (ブラジル)、ペドロ・ バロス (ブラジル)、ルイージ・チーニ (ブラジル)、テイト・カリュー (アメリカ合衆国)、キーガン・パルマー (オーストラリア) の順に。今回唯一日本人として出場した永原悠路は準決勝15位で惜しくも決勝進出とはならなかった。 大会レポート 【ラン1本目】 ペドロ・ バロス Photo: OIS/Bob Martin. Handout image supplied by OIS/IOC オリンピックルールにて決勝は45秒のラン3本目のうちのベストスコアが採用される一方で、一度トリックを失敗した時点でランを続行できなくなるフォーマットのため、後半でのスコアアップのため難易度の高い攻めのライディングをするためにも、1本目では手堅く安定したスコアを残しておきたい。そんな中で80点台後半以上の高得点をマークしてきたのはキーラン、ジャガー、ペドロの3名だ。 オリンピック金メダリストのキーガン・パルマーに並び、オーストラリアのスケートボードパークシーンを代表しているキーラン・ウーリーがまず自身の得意とするコーナーのコーピングでの長いグラインドトリックを生かして「フロントサイドフィーブルグラインド」や「バックサイドスミスグラインド」をメイクし流れを掴むと、「キックフリップインディグラブ」や「バックサイド360ノーズグラブ」などを様々なセクションでメイクし86.25ptをマーク。 ジャガー・イートン Photo: OIS/Bob Martin. Handout image supplied by OIS/IOC そのキーランに続き1本目での最高スコアを残したのはジャガー・イートン。今大会では唯一ストリート種目との二刀流で出場しており、なんとストリート種目では見事優勝。そんなストリートの決勝から約2時間後に行われた本決勝でも疲れを感じさせない見事なライディングを見せた。コーナーでの「キックフリップバックサイドリップスライド」をはじめ、ディープエンドでの「インディグラブ540」、「ブラントキックフリップ」など高難度トリックを様々なセクションで決めてフルメイクでランを終えるとガッズポーズし91.06ptを90点台をマークした。 そしてジャガーほどのハイスコアとはならなかったものの幸先良いスコアを残したのはブラジルの生きるレジェンドであるペドロ・ バロス。東京オリンピックの金メダリストである彼はハイスピードかつ高さのある豪快なエアーの中でトリックを詰め込んだランを展開。「メロングラブ540」や「ステールフィッシュグラブ540」そしてボックスジャンプからその先のコーナーまでトランスファーしながら「インディグラブ270」をメイクして会場を盛り上げるとそのランは88.96ptという評価を受けた。 【ラン2本目】 ラン2本目も1本目と同様に全体的にはしっかり決め切った選手がいる中で、いまいちスコアに結び付けるライディングができずにもどかしい気持ちを抱える選手もいる中、90点台をマークして一つ頭を抜けてきたのはジャガーとテイトだった。 1本目で90点台を叩きだしたジャガーは1本目のランをアップデートして2本目で得点を伸ばす。より完成度の高い「キックフリップバックサイドリップスライド」を皮切りに、各トリックのクオリティだけではなくフローも改善して、最後には「キックフリップバックサイドディザスター to リバート」へトリックを変更するとスコアを91.61ptへ引き上げた。 テイト・カリュー Photo: OIS/Bob Martin. Handout image supplied by OIS/IOC しかし、ジャガーのスコアを超える見事なランを見せたのはアメリカのテイト・カリュー。ハイエアーで豪快な「スイッチステイルフィッシュグラブエアー」をはじめ、ディープエンドでの「ボディバリアル540」そしてラン1本目でミスした「ヒールハードフリップインディグラブ」。さらにボックスジャンプでの「キックフリップインディグラブ」からディープエンドでの「ヒールフリップインディグラブ」でつなぐトリックアフタートリック。最後は「テールグラブ540」を決めるとランをフルメイクでまとめて93.33ptをマーク。やり切った様子を見せたものの想像以上のスコアだったのかチームとハイタッチなど喜びを共有する様子も見られた。 【ラン3本目】 表彰台を獲得するには90点台を出しておくことが重要となる最終ラン、各選手がジャガーとテイトを追うことになる展開となった中、アメリカ人選手とオーストラリア人選手がナイスランを見せる一方でブラジル人選手たちは苦戦を強いられた。 まずこのトライで決勝一番のランを見せたのはギャビン・ボットガー。「メロングラブ540」をはじめ、エクステンションのロングレールで「フロントサイドクルックドグラインド」をメイクすると、彼の代名詞であるオリジナルトリック「アリウープアラウンドザワールド」や「ボディバリアルフリップバックサイドディザスター」、そして最後は2本目に失敗した「キャバレリアルヒールフリップインディグラブ」を決め切りフルメイクでランを終えた。ジャッジはスコアリングに時間をかけたが90点台に届かない86.58ptという評価となった。 キーラン・ウーリー Photo: OIS/Bob Martin. Handout image supplied by OIS/IOC そして3本目でベストスコアを更新してきたのはキーラン。「モンティグラインド(バックサイドスミスグラインド)」や「ヒールフリップインディグラブ」を含め、1・2本目を上回る完成度のライディングを見せ、終盤には「バックサイド5-0グラインド180フェイキー」をメイクするなど新しいトリックを含めた豊富なバラエティを披露し90.19ptまでスコアを伸ばした。その後にライディングしたジャガーはさらなるスコアアップを目指すも序盤の「キックフリップバックサイドリップスライド」でスリップダウンしランを終えた。 今大会で実力を出しきれない難しい戦いとなったのはブラジル勢。その中でもアウグスト・アキオとルイージ・チーニの2名は一度もフルメイクできないという結果となった。アウグストは一番スコアの高かった2本目においても「キックフリップインディグラブ」や「フロントサイドオーリーワンフットリップスライド」などトリックを決めていたが、1本目と同じ「スイッチバックサイドボードスライド」をボックスジャンプ横のレールで決めきれずミス。ベストスコアを73.04ptとし大会を終えた。またルイージに関しては各ランでそれぞれ違うトリックを失敗していたが一番スコアの良かった2本目では後半のディープエンドでの「キックフリップバリアル540」で高さが足りず着地ミスし53.13ptで大会を終えた。 キーガン・パルマー Photo: OIS/Bob Martin. Handout image supplied by OIS/IOC そして最後に注目となったのはテイト・カリューとキーガン・パルマーの戦い。テイトが3本目のラストトリックで「ヒールフリップ540」に失敗したためベストスコアを93.33ptとしている中、準決勝首位通過を果たした東京オリンピック金メダリストのキーガンがどんなランを見せてくるのかに期待が集まった。彼はセクションを大きくトランスファーする「キックフリップフロントサイドエアーテールグラブ」や「キックフリップメロングラブ」などをメイクしていくと、最後は残り8秒の中に「フロントサイドキックフリップインディグラブ」「スイッチノーズグラブ」「バックサイドエアーインディグラブフェイキー」を詰め込みフルメイク。見事なランに本決勝にて一番時間がかかるジャッジタイム。緊張の末に出たスコアは92.30ptで2位となった。スコアが出た瞬間にキーガンが駆け寄ったのは優勝したテイトの元。仲が良いことで知られているこの2人はワンツーフィニッシュできたことが嬉しかったのかお互いの健闘を称えあった。 大会結果 優勝 テイト・カリュー (アメリカ合衆国) / 93.33pt2位 キーガン・パルマー (オーストラリア) / 92.30pt3位 ジャガー・イートン (アメリカ合衆国) / 91.61pt4位 キーラン・ウーリー (オーストラリア) / 90.19pt5位 ペドロ・バロス (ブラジル) / 88.96pt6位 ギャビン・ボットガー (アメリカ合衆国) / 86.58pt7位 アウグスト・アキオ (ブラジル) / 73.04pt8位 ルイージ・チーニ (ブラジル) / 53.13pt 最後に 左からキーガン、テイト、ジャガーの順 Photo: OIS/Bob Martin. Handout image supplied by OIS/IOC 今大会での結果により今後楽しみになるのがアメリカとブラジルの出場権争いとなるだろう。正直今回の決勝のメンバーは誰が優勝してもおかしくない世界のトップオブトップの面々。ただその中でしっかり自分の持つトリックを全て出しきれたテイトや、最後に大きなプレッシャーを押し退けてみせたキーガン、そして二刀流にも関わらずストリート種目での勢いそのままに疲れを見せず強靭なメンタルとフィジカルで戦ったジャガーがその表彰台の座に相応しかったということだろう。 さて今大会を終えた現在の世界ランキングを振り返り、出場権争いが激化するアメリカとブラジルの状況を見てみよう。まずアメリカの現在の国別世界ランキングは、トップが今回優勝して世界ランキング1位となったテイト・カリュー、テイトに続き今回3位となったジャガー・イートンが世界ランキング2位、そして同じく決勝に残ったギャビン・ボットガーが世界ランキング1位から3位と順位を下げたもののトップ3の座をキープしている状態。そしてこの3人を追う形になっているのは今回9位で決勝進出を逃した世界ランキング9位のトム・シャー、続いて世界ランキング18位のリアム・ペイス、世界ランキング25位のテイラー・ナイだ。実際1大会で最大21万ポイントが加算される今大会。9位のトムには関しては十分に逆転できる位置でありまだまだこの出場権争いは波乱がありそうだ。 一方でアメリカ以上に厳しい戦いを強いられると想定されるのがブラジルだ。現在の国別世界ランキングは、今回決勝に進出したアウグスト・アキオが世界ランキング5位、ペドロ・バロスが世界ランキング6位、そして決勝進出を果たしたものの不調だったルイージ・チーニが世界ランキング8位。そしてこのトップ3を追うのは世界ランキング15位のペドロ・キンタス、世界ランキング19位のペドロ・カバーリョ、世界ランキング24位のムリーロ・ペレスだ。今大会の決勝では出し切れなかったブラジルのトップ3だが、その雪辱を果たすだけではなく後続を引き離し出場権を確保するためにも大事になるのが次戦のブダペスト大会だ。 そして忘れてはいけないのは日本人唯一の出場選手である永原悠路。今大会を終えて世界ランキング14位であり現時点ではオリンピック出場権を獲得できるが、度々言及しているように本フェーズの「オリンピック予選シリーズ2024(OQS)」の2大会に関しては最大21万ポイントの超高得点配分がされており、次のブダペスト大会でも一発大逆転が起きうる展開になっているので、永原に関しても次戦はしっかり決勝進出を果たしてポイント獲得しオリンピック出場権を確かなものにしたいことだろう。また編集部としては現在前回の「WST Dubai」の王者であるスペインのダニー・レオンの次戦での活躍も期待したい。今回は惜しくも14位で決勝進出とはならなかったが世界ランキングは10位につけており、ブダペスト大会のパフォーマンスによってはパリオリンピック本戦でのメダル争いにも食い込むことだろう。 泣いても笑っても次戦のブダペスト大会でパリオリンピック出場選手が決まる。本当の意味での最終戦が差し迫る中で、誰も油断できないこの出場権争いはどんな終わりを迎えるのだろうか。ブダペスト大会は予選から目が離せない熾烈な戦いになることは間違いない。 各競技で協力してTEAM JAPANのサポートを実施 またオリンピック予選シリーズ (OQS) 上海大会では日本人選手たちが最高のコンディションで試合に臨めるように、味の素株式会社「ビクトリープロジェクト」が帯同・サポートしている。本プロジェクト内容については下記の通りだ。 ビクトリープロジェクトは、2003年から味の素株式会社と日本オリンピック委員会(JOC)が共同で実施している選手のコンディショニングサポートプロジェクト。選手の目指す姿や目標に合わせた栄養サポートを提供し、パフォーマンスの最大化と意識改革に貢献している。 特に大会期間中は、「補食」を通じて選手のコンディショニングをサポート。具体的には、エネルギー補給を目的とした「パワーボール」と、カラダのコンディションを維持するためのアミノ酸サプリメント「アミノバイタル」を提供している。 今回のオリンピック予選シリーズ(OQS)では、スケートボードだけでなく、BMX、ブレイキン、クライミングチームにも「パワーボール」と「アミノバイタル」を提供し、全ての競技で選手が最高のコンディションで試合に臨めるよう支援した。選手一人一人のコンディションを詳細に把握し、適切な栄養プランを提案することで、長期間にわたり安定したパフォーマンスを維持できるようサポートしている。
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skate日本人選手たちが好発進!「オリンピック予選シリーズ(OQS)」上海大会 女子スケートボードパーク種目2024.05.23パリオリンピック予選大会最終シリーズとなる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」の1戦目である上海大会のスケートボード・パーク種目が、中華人民共和国・上海にて開催され、競技最終日の5月19日(日)に女子決勝が行われた。 フェーズ2として該当する今大会は、昨シーズンの結果に加えた世界ランキングポイントに基づいて選出された44名の選手に出場権があるため、世界中からパリオリンピック出場を目指す世界ランキングトップ選手たちが出場。なお今大会はパリオリンピック予選大会の中でも全体の得点の3割以上のポイントが与えられることで、結果次第ではこの一大会でフェーズ1のビハインドを取り戻すどころか逆転が可能になる大きなチャンスである一方でミスが許されないシビアな戦いとなった。 そして日本からは、フェーズ1を終えた時点で世界ランキング1位で東京オリンピック銀メダリストである開心那、世界ランキング2位でアジアチャンピオンの草木ひなの、そして世界ランキング5位で東京オリンピック金メダリストである四十住さくらをはじめ、「X Games California 2023」の銀メダリストで「WST Dubai」で3位となった期待の新星長谷川瑞穂、そしてアジア大会に出場した菅原芽依、国際大会での経験が豊富な実力者の中村貴咲の6名が出場となった。 一方で海外からは世界ランキングの上位勢が出場者として名を連ねる中、世界ランキング3位のスカイ・ブラウン(イギリス)が膝関節の内側側副靭帯の損傷の怪我により不在、また世界ランキング4位のナイア・ラソ(スペイン)が大会直前練習で鎖骨を骨折するなどトップ選手が優勝争いに食い込めない展開に。そしてアジア大会で優勝した草木ひなのも準決勝9位であと一歩決勝進出に届かないなど表彰台が期待された面々が辛酸を舐める大会となった。 そんな本決勝はフェーズ1を通過した全43名の出場者の中、予選・準決勝を勝ち上がった合計8名で競われる形。今大会のスタートリストはルビー・テルー (オーストラリア)、ブライス・ウェットスタイン(アメリカ合衆国)、ドーラ・ヴァレーラ (ブラジル)、四十住さくら、イサドラ・パチェコ (ブラジル)、 アリサ・テルー (オーストラリア)、開心那、 長谷川瑞穂の順となった。 大会レポート 【ラン1本目】 オリンピックルールにて決勝は45秒のラン3本目のうちのベストスコアが採用される一方で、一度トリックを失敗した時点でランを続行できなくなるため、1本目では後半でより攻めるライディングをするためにもある程度のスコアを残しておくことが必要となる。そんな中でちょっとハプニングがあったものの80点台後半の高得点をまず残してきたのがイサドラ・パチェコだ。 イサドラ・パチェコ Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC スピード感があるライディングでスタートしたイサドラは、中盤で「バックサイドスミスグラインド」でミスし1本目は良いスコアを望めないと思われたが、ジャッジや運営の準備が整う前にライディングしたことが発覚しリトライするチャンスを得た。そして再度スタートし直すと「ステールフィッシュ」や「バックサイドスミスグラインド」、「フロントサイド50-50 to フェイキー」をフルメイクでランを終えると86.77ptをマークした。 そんなイサドラの後に滑走し1本目でのベストスコアを叩き出したのはオーストラリアの新星アリサ・テルー。昨年7月に開催された「X Games California 2023」ではパーク及びバーチカルの両種目で金メダルを獲得する大会最年少記録を持つ彼女は決勝で見事なランを見せた。「キックフリップインディグラブ」や「540」、「バックサイド360」などの高難度トリックをふんだんに盛り込んだライディングを見せると89.18ptをマークして幸先良いスタートを切った。 長谷川瑞穂 Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC そして1本目ではアリサに追随する形で、その後滑走した開心那が得意とするコーピングトリックとフローでしっかりまとめ88.04ptをマーク。また準決勝1位通過を果たした長谷川瑞穂も「クレイルスライド」や「メロン540」など豪快なトリックを決めると86.20ptをマークした。 【ラン2本目】 1本目では全体的にしっかりランをまとめてきた選手が多い印象を受ける中、2本目では勝ちにいくために攻めのライディングが求められる中で独特なプレッシャーも相まってかミスをする選手が増えたランとなった。 四十住さくら Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 2本目でまずトリックを決めきって強さを見せたのは四十住さくらだ。ラン1本目ではファーストトリックの「ヒールフリップインディグラブ」でミスし得点を伸ばせないでいた。2本目では見事修正した上でボックスジャンプでの「バックサイド360」やエクステンションでの「フロントサイドブラントスライド」などを決め切りフルメイクで終えるとベストスコアを87.02ptへ引き上げた。 アリサ・テルー Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC そして勢い止まらずベストスコアを伸ばしてきたのはアリサ。ラン1本目でも高得点を残した彼女はさらに1本目のトリックの完成度を上げたライディングを2本目で見せる。「マックツイスト」や「フロントサイドリップスライド」など様々なトリックをクリーンに決めていく中、ボックスジャンプとディープエンドの2箇所で「キックフリップインディグラブ」をメイク。同じトリックをランで入れることに対してどうスコアリングされるかが注目されたが、1本目のスコアを上回るも91.17ptをマークし、より優勝に近づくランを見せた。 開心那 Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC そんなアリサを追う形で90点台を叩き出したのは開。1本目でメイクした特徴的なコーピングトリックをさらにブラッシュアップしたライディングの中に「キックフリップインディグラブ」を追加してスコアアップを図るも、見事狙い通りに90.18ptをマーク。冷静に分析してしっかりスコアにつなげてくるところが世界ランキング1位の強さのように感じた。 【ラン3本目】 ブライス・ウェットスタイン Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 選手によって様々な心境が行き交う中で迎えたラスト1本、ベストラン採用のためここで決めれば十分巻き返すチャンスがあるが暫定のトップ3はアリサ、開、四十住の順は変わらなかった。 ルビー・テルー Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC まず今回非常に難しい戦いを強いられたのはオーストラリアのルビー・テルー。今回3本を通して前半でおなじディープエンドでの「540」を上手く決められないまま終えた。一方でスコアアップさせてきたのはブライス・ウェットスタインとドーラ・ヴァレーラだ。ブライスは様々なトリックチョイスで見せ、「ジュードーエアー」「フロントサイドフィーブルグラインド to フェイキー」そして「ハーフキャブロックンロールスライド」をメイク。ブライス自身も自分の納得いくランを決めることができたからか喜びが溢れて自分が用意したバラを観客にあげる様子も見られた。そんなランのスコアは83.78ptの評価。そしてドーラは「ヒールフリップインディグラブ」「アリウープ」「フロントサイドフィーブルグラインド to フェイキー」などをスイッチスタンスなどの難しい姿勢でメイクしたことで85.26ptをマークした。 ドーラ・ヴァレーラ Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC その後、アリサのスコアを超えて優勝の座を奪取するべくラストランに臨んだのは開と長谷川。まず開は「バックサイドノーズグラインド」、「フロントサイドスミスグラインド」、「キックフリップインディグラブ」などをメイクしていき2本目のルーティンの完成度をあげるランを見せるも90.06ptとポイントは伸ばせず2位でフィニッシュ。また逆転を目指してラストランに挑んだ長谷川はボックスジャンプでの「360」やディープエンドでの「540」を次々メイクしていくも「バリアルフリップ」のメイクに失敗し表彰台の座はアリサ、開、四十住に譲ることとなり、この瞬間アリサの優勝が確定した。 こういったプレッシャーの中で自分のパフォーマンスをしっかり出し切って優勝できるアリサ・テルーの強さを今回感じた。なお3本目では「スイッチ540」にトライしていた彼女。今回メイクすることはできなかったが、決まるといったいどんなスコアが出てくるのか気になる。パリオリンピックでの金メダル候補に名乗りをあげた彼女が、次のブダペスト大会でも良いパフォーマンスを見せてまずパリオリンピックへの切符を掴み取ることだろう。 そして編集部としては今回怪我から復帰後初の表彰台を獲得した四十住さくらがトライした「ノーグラブ540」がアリサの「スイッチ540」に対抗する技になるだろう。パリオリンピックに向けて選手たちが秘密にしてきたトリックの数々の片鱗が見えてきた。本番ではどんな戦いになるのか楽しみだ。 大会結果 左から開、アリサ、四十住の順Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 優勝 アリサ・テルー (オーストラリア) / 91.16pt2位 開 心那 (日本) / 90.18pt3位 四十住 さくら (日本) / 87.02pt4位 イサドラ・パチェコ (ブラジル)/ 86.77pt5位 長谷川 瑞穂 (日本) / 86.20pt6位 ドーラ・ヴァレーラ (ブラジル) / 85.36pt7位 ブライス・ウェットスタイン(アメリカ合衆国) / 83.78pt8位 ルビー・テルー (オーストラリア) / 28.00pt 最後に 左から開、四十住の順Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 今大会で印象に残ったのはOQSが放つ独特な緊張感が選手たちに与える影響だ。まず本決勝の戦いの前に世界ランキング2位の草木ひなのが決勝進出を逃すなど今までの予選大会では見られなかった光景だろう。一方で決勝での緊張からかベストランを見せられなかった長谷川瑞穂など多くの選手がいつも以上にミスをしている様子でもあった。やはり1大会でパリオリンピック出場を左右するこの大会は選手たちにプレッシャーを与えているということ分かった。 次のブダペスト大会が本当の意味での最後の予選大会になる中で、いま一度現在の世界ランキングを振り返ってみる。実際今回の結果に応じて世界ランキング内でもいくつか変更があった。まずは世界ランキング1位の開心那が2位になったことで352,000ptを保持し後続に大きく差を付けた。そんな開に続くのが今回の優勝で大きくジャンプアップしたアリサ・テルー(世界ランキング2位)、そして四十住さくら(世界ランキング3位)が着実に順位を上げている。また今回決勝進出を逃した草木ひなのだが順位を2つ下げた世界ランキング4位を保っており、まだパリオリンピック出場は射程圏内に収めているので次のブダペスト大会での活躍に期待だ。そうして日本人内の出場枠争いで言うと長谷川瑞穂が世界ランキング9位までジャンプアップしたため、ブダペスト大会の結果によっては出場枠獲得も見えてくる。 まだまだ続く一発大逆転が起きうる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」。世界から誰がオリンピックへの切符を獲得できるかが決まる次回最終戦だが、特に日本人国内枠である3枠を誰が勝ち取るのかに特に注目だ。 各競技で協力してTEAM JAPANのサポートを実施 またオリンピック予選シリーズ (OQS) 上海大会では日本人選手たちが最高のコンディションで試合に臨めるように、味の素株式会社「ビクトリープロジェクト」が帯同・サポートしている。本プロジェクト内容については下記の通りだ。 ビクトリープロジェクトは、2003年から味の素株式会社と日本オリンピック委員会(JOC)が共同で実施している選手のコンディショニングサポートプロジェクト。選手の目指す姿や目標に合わせた栄養サポートを提供し、パフォーマンスの最大化と意識改革に貢献している。 特に大会期間中は、「補食」を通じて選手のコンディショニングをサポート。具体的には、エネルギー補給を目的とした「パワーボール」と、カラダのコンディションを維持するためのアミノ酸サプリメント「アミノバイタル」を提供している。 今回のオリンピック予選シリーズ(OQS)では、スケートボードだけでなく、BMX、ブレイキン、クライミングチームにも「パワーボール」と「アミノバイタル」を提供し、全ての競技で選手が最高のコンディションで試合に臨めるよう支援した。選手一人一人のコンディションを詳細に把握し、適切な栄養プランを提案することで、長期間にわたり安定したパフォーマンスを維持できるようサポートしている。
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skate波乱の展開の中で強さを見せたのは赤間凛音と吉沢恋「オリンピック予選シリーズ(OQS)」上海大会 女子スケートボードストリート種目いよいよ残り2戦でパリオリンピック出場が決まる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」、フェーズ2の第1戦目となる上海大会のスケートボード・ストリート種目が、中華人民共和国・上海にて開催され、競技最終日の5月19日(日)に女子決勝が行われた。 男子同様に出場権争いが非常に激化している女子カテゴリー。今大会前まで世界ランキング3位の織田夢海がまさかの予選敗退。そして世界ランキング1位で前回五輪王者の西矢椛が準決勝で姿を消す波乱の大会となった。 決勝に勝ち上がったのは、ポエ・ピンソン (アメリカ合衆国)、ウェンフイ・ゼン(中国)、チェンシー・チー(中国)、中山 楓奈(日本)、ライッサ・レアウ(ブラジル)、吉沢 恋(日本)、赤間 凛音(日本)、クロエ・コベル(オーストラリア)の8名だ。今回は中国勢が決勝に2人勝ち残る結果となり、アジアでは日本1強というイメージだがそこへ中国人選手が割って入っていく展開となった。 出場権争いは日本国内が非常に混戦模様となっており、現在日本でのトップ2である西矢と織田が決勝に残れず、この2人を追いかける中山、吉沢が決勝に残り順位を逆転できる可能性が高まった。そして現時点での出場枠圏内につけている赤間が唯一の決勝進出者となり、その地位を確実なものにすべく今大会での大幅なポイント獲得を狙えるのかといった構図だ。海外勢では中国のチェンシーとウェンフイが世界ランキングを上げるチャンスとなりパリオリンピック出場へ大きく前進しそうだ。いずれにせよ各ライダーの決勝での順位が非常に重要になる。 大会レポート 【ラン1本目】 まず一歩前へ出て幸先良いスタートを切ったのは日本の吉沢恋。ハンドレールで「バックサイドスミスグラインド」からバンクトゥバンクで「トレフリップ」と繋いでいき、ラストの「バックサイドビッグスピンフロントサイドボードスライド」まで完璧に決め切り84.04ptのハイスコアをマーク。 吉沢の作った良い流れに続きたい赤間凛音もきっちりフルメイクし87.41ptと首位に躍り出るが、これに続いたのがオーストラリアのクロエ・コベルだ。「フロントサイドフィーブルグラインド」で勢いよくスタートしていくと、「バックサイドテールスライド」、ステアでの「スイッチキックフリップ」から「スイッチフロントサイドボードスライド」と繋ぎ、ラストトリックのビッグステアでの「キックフリップ」までパーフェクトラン。87.34ptとこちらもビッグスコアで暫定2位につけた。 クロエ・コベルPhoto: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 【ラン2本目】 2本目ではアメリカのポエ・ピンソンと中山楓奈がそれぞれ80ポイント台としっかりスコアを残す中、1本目のスコアを大幅に上回ったのが日本の赤間とブラジルのライッサ・レアウだ。ライッサは「キックフリップフロントサイドボードスライド」から「フロントサイドノーズグラインド」、「キックフリップバックサイド50-50」、「バックサイドテールスライドショービットアウト」、ラストはハンドレールで「フロントサイドブラントスライド to ショービットアウト」と異次元のパーフェクトランで92.23ptをマークした。 ライッサ・レアウPhoto: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC そんなライッサに続いたのが赤間。「バックサイドスミスグラインド」や「フロントサイド360オーリー」など1本目同様に繋いでいくが、途中の「フロントサイドビッグスピン」を「フロントサイドビッグスピンヒール」にアップデート。ラストの「フロントサイド180スイッチ5-0」まで完璧に決め90.11ptライッサを射程圏内に収めて追走する形に。ランを終えた時点でライッサと赤間が頭一つ抜けた形でトリックセクションへ。 赤間凛音 Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 【ベストトリック1本目】 まずベストトリック1本目でハイスコアを出したのが中国の新鋭、チェンシー・チーだ。ビッグステアに設置されたハバレッジで「キックフリップバックサイド50-50」を決め85.51ptをマーク。世界大会2回目の決勝とは思えない堂々としたライディングを見せた。 チェンシー・チー Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC そんな中でベストトリック1本目のハイエストスコアを出したのが吉沢。「キックフリップフロントサイドボードスライド」を決め88.05ptと、ここでも幸先の良い出だしに。 【ベストトリック2本目】 吉沢は続く2本目でも「フロントサイドハリケーングラインド」をしっかり決め85.64ptとスコアを揃えた。パリオリンピック出場権争いで追いかける立場の中山はモヒカンレッジで「フロントサイドクルックドグラインド」を決め83.84ptをマークし残りのトライに勝負をかける。 ライッサもこの2本目で「キックフリップバックサイドリップスライド」をハンドレールで一発メイクし91.81ptをマーク。1本目に続きフルマークし他のライダーにプレッシャーをかけた。 ライッサ・レアウPhoto: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 【ベストトリック3本目】 分岐点となることが多い3本目でスコアを残したのはアメリカのポエと中国のウェンフイだ。ポエは1本目と2本目とミスしていたバンクトゥオーバーの「フロントサイドスミスグラインド」を決め85.77ptとようやくスコアをマークした。 ポエ・ピンソン Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 久しぶりの世界大会での決勝となった中国のウェンフイは1本目と2本目で狙っていたトリックを、ハンドレールでの「バックサイドテールスライド」に切り替えて一発で仕留め、86.13ptというハイスコアを収めて上位戦線に踏みとどまった。 【ベストトリック4本目】 4本目にまず流れを動かしたのがチェンシー。ステアに設置されたハバレッジで「キックフリップバックサイド5-0グラインド」にトライ。グラインド中にバランスを崩したかと思えたが見事着地で持ち直す勝負強さを見せた。スコアも85.07ptとこれでフルマークとなった。 ここまでランでハイスコアを出しながらも、ベストトリックでは1本目以降なかなかスコアを出せていなかった赤間がここでビッグスコアを叩き出した。ハンドレールで「フロントサイド270フロントサイドボードスライド」を決め92.55ptに。 赤間凛音Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 暫定首位のライッサに対して1ポイント差以内に収めプレッシャーをかけると、ラストトライを前に暫定首位にライッサ、2位に赤間、3位は序盤でのアドバンテージを守っている吉沢と続いた。 【ベストトリック5本目】 この上海大会からわずか1つの順位の差で大きく獲得ポイントが変わるため、当然1つでも順位を上げておきたいところ。そんなプレッシャーの中でラストトライを決めて順位のジャンプアップを実現させたのがアメリカのポエだ。バンクトゥギャップオーバーのレールで「バックサイド5-0グラインド」をバランスを崩しながらもなんとか成功させ88.11pt、トータルを254.06ptとしチェンシーを抜いて4位に浮上した。 ポエ・ピンソンPhoto: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 赤間に逆転されるの可能性を残して最終トライを迎えたライッサ。百戦錬磨、勝負所を理解している彼女はここで「ヒールフリップフロントサイドボードスライド」をハンドレールで決めた。スコアは90.85ptと赤間を突き放すことに成功。最終トライの結果を待つことに。 ライッサ・レアウ Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 赤間は逆転優勝には92.24ptが必要な中、持ち技を考えれば十分に可能性がある。彼女が最後に選んだトリックはハンドレールでの「フロントサイドフィーブルグラインド・フロントサイド180アウト」でこれをしっかり決め切ったが、結果はわずか0.54pt及ばず2位でフィニッシュとなった。 大会結果 優勝 : ライッサ・レアウ (ブラジル) / 274.89pt2位 : 赤間 凛音 (日本) / 274.35pt3位 : 吉沢 恋 (日本) / 257.73pt4位 : ポエ・ピンソン (アメリカ) / 254.06pt5位 : チェンシー・チー (中国) / 247.44pt6位 : 中山 楓奈 (日本) / 165.86pt7位 : ウェンフイ・ゼン (中国) / 164.74pt8位 : クロエ・コベル (オーストラリア) / 87.34pt 左から赤間、ライッサ、吉沢の順Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 最後に まず今まではライッサ・レアウ、クロエ・コベル、西矢椛が世界のトップ3であると言われていた勢力図だったが、今大会でも強さを見せた赤間凛音や、今回惜しくも予選敗退という結果で一転パリ五輪出場権争いの中で追う立場となった織田夢海、また今大会で3位に入り一気にパリ五輪出場圏内にジャンプアップした吉沢恋が入ったことで勢力図はややフラットと言える状況に。 そんな中、スコアメイクや試合運びを考慮するとライッサが、頭一つ抜けている印象だ。ただ今大会では本調子を出しきれなかったクロエもこのままいくとは思えない。やはりライッサとクロエを相手に日本人勢がどのように頂点争いを繰り広げるのかという図式はパリオリンピックまで続くと考える。 そして注目のパリ五輪出場権争いは今大会を終えて大きく入れ替わる結果となった。ブラジルのライッサが同国4番手のライダーが次戦で優勝してもライッサを上回れないので出場確実という結果になった。 一方で大混戦なのが日本の出場権争いだ。世界ランキングトップ10にフェーズ2に進んだ全員が入るというスケートボード強国ぶりを見せている。今大会前まで世界ランキング1位だった前回オリンピック王者の西矢椛が5位と日本人では3番手に、そして世界ランキング3位だった織田夢海が7位で日本人5番手とそれぞれランクダウンした。前回のオリンピック経験者で今大会で出場権獲得圏内まで順位を上げたかった中山楓奈は世界ランキング6位と順位をキープしたが日本人では4番手と圏内には入れなかった。彼らと裏腹に一気にジャンプアップして出場権獲得圏内に入ったのが今大会3位となった吉沢恋だ。世界ランキングも3位と4つ順位をあげ日本人でも2番手に躍り出た。現在、日本人トップの赤間凛音が386,771ポイントと次戦ブダベスト大会を前に非常に有利なポジションとなった。しかし、ポイント差ではトップの赤間と世界ランキング10位の伊藤美優までが245,754ポイントとなっているが、次戦の優勝ポイントが260,000ポイントとなっているので逆転できる可能性が残っている。つまりこれは最終戦、ブダベスト大会まで全員がパリオリンピック出場の可能性を残しているということだ。 オリンピック出場権を争っているライダー達は計り知れないプレッシャーと戦いながらこの予選を戦ってきている。自分自身とも戦いながらパフォーマンスを出さなくていけない非常に難しい状況の中、今大会のように何が起こるか最後までわからないオリンピック予選大会。次戦、パリオリンピック予選最終戦となるブダベスト大会は予選から決勝まで全く目が離せない大会になりそうだ。 各競技で協力してTEAM JAPANのサポートを実施 またオリンピック予選シリーズ (OQS) 上海大会では日本人選手たちが最高のコンディションで試合に臨めるように、味の素株式会社「ビクトリープロジェクト」が帯同・サポートしている。本プロジェクト内容については下記の通りだ。 ビクトリープロジェクトは、2003年から味の素株式会社と日本オリンピック委員会(JOC)が共同で実施している選手のコンディショニングサポートプロジェクト。選手の目指す姿や目標に合わせた栄養サポートを提供し、パフォーマンスの最大化と意識改革に貢献している。 特に大会期間中は、「補食」を通じて選手のコンディショニングをサポート。具体的には、エネルギー補給を目的とした「パワーボール」と、カラダのコンディションを維持するためのアミノ酸サプリメント「アミノバイタル」を提供している。 今回のオリンピック予選シリーズ (OQS) では、スケートボードだけでなく、ブレイキン、BMX、スケートボード、クライミングチームにも「パワーボール」と「アミノバイタル」を提供し、全ての競技で選手が最高のコンディションで試合に臨めるよう支援した。選手一人一人のコンディションを詳細に把握し、適切な栄養プランを提案することで、長期間にわたり安定したパフォーマンスを維持できるようサポートしている。
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skate日本からは小野寺吟雲が準優勝「オリンピック予選シリーズ(OQS)」上海大会 男子スケートボードストリート種目2024.05.22いよいよ残り2戦でパリオリンピック出場が決まる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」、フェーズ2の第1戦目となる上海大会のスケートボード・ストリート種目が、中華人民共和国・上海にて開催され、競技最終日の5月19日(日)に男子決勝が行われた。世界ランキングによる各国の出場権争いはもちろんだが、日本国内の出場権獲得争いが激化している。逆転での出場権獲得に是が非でも表彰台に登りたかった前回オリンピック王者の堀米雄斗がまさかの予選敗退。さらにフェーズ1を終えた時点で世界ランキング1位であり、今大会でも優勝候補大本命だった白井空良が準決勝で姿を消した。波乱の様相を呈した今大会の決勝に名を連ねたのは、根附海龍、佐々木音憧、ジオバンニ・ヴィアンナ (ブラジル)、小野寺吟雲、クリス・ジョスリン (アメリカ合衆国)、ナイジャ・ヒューストン (アメリカ合衆国)、グスタボ・リベイロ (ポルトガル)、ジャガー・イートン (アメリカ合衆国)となった。 決勝進出者たち Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 今大会では日本の出場権争いが非常に注目で、根附、小野寺は後続を突き放すことは出来るのか。また、日本人5番手で追う立場の佐々木がどこまでランキングポイントを獲得できるか。一方でアメリカも熾烈な代表争いを繰り広げており、ナイジャ・ヒューストンが頭一つ抜き出て、今大会も決勝に残り大幅なポイント獲得が確定しているが、残り2枠を現在「パーク」との二刀流でのパリオリンピックを目指しているジャガー・イートンをはじめ、アレックス・ミドラー、クリス・ジョスリン、ブレイデン・ホーバンが団子状態で追いかけている。今大会ではジャガーとクリスが決勝に残り出場権争いにて1歩リードしたと言えるが、日本とアメリカの国内での出場権争いにそれぞれこの決勝での順位が非常に重要になってくる。 大会レポート 【ラン1本目】 流れを掴む上で非常に重要な一本目は佐々木が「ビガースピンフリップボードスライド」で勢いよくスタートしていくと、高さのある「ノーリーヒールフリップ」、「ノーリーノーズブラント」まで完璧にフルメイク、本人も納得の笑顔で88.78ptをマークした。 佐々木音憧Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC グスタボもテンポよくトリックを繋いでいき、ラストのモヒカンレッジでの「バックサイドクルックドグラインド・ノーリーキックフリップアウト」ではバランスを崩すも持ち堪え89.21ptに。ジャガーは得意のアールトリックで繋ぎ「スイッチバックサイドスミスグラインド」、「ノーリーハーフキャブスイッチ50-50グラインド」、ラストの「ブラントストールフロントサイド180アウト」まで完璧に決めて91.16ptと唯一の90点台でトップに躍り出た。 ジャガー・イートンPhoto: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 【ラン2本目】 1本目のミスを取り戻したい根附はアールでの「フルキャブヒールフリップ」、「バックサイド180レイトショービット」、「ヒールフリップバックサイドリップスライド」、「インワードヒールリアバート」まで完璧に1本目のミスをリカバリーし82.63ptをマーク。そしてジオバンニは「ハーフキャブノーズグラインド」をはじめ、その後は1本目と同様に繋いでいきラストトリックを「ハーフキャブフロントノーズスライド270アウト」にアップデートするも84点台とスコアを伸ばせなかった。一方で2本目でビッグスコアを出したのが日本の小野寺。「ダブルフロントサイドキックフリップ」、「バックサイド360キックフリップ」、ギャップオーバーの「フロントサイドブラントスライドショービットアウト」、「ビックスピンキックフリップショービットアウト」を完璧にリカバリーしフルメイク92.81と暫定トップに。 小野寺吟雲Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC クリスはギャップオーバーのバックサイドリップスライド、ステアのバックサイドビッグスピン、ノーリーヒールフリップをステアでこちらも完璧にリカバリーしフルメイクし87.87ptに。グスタボも途中で「キックフリップバックサイドノーズスライド・ビッグスピンアウト」にトリックをアップデートすると、1本目のラストトリックで少しスケッチーだった「バックサイドクルックドグラインド」を丁寧に決め、91.96ptにスコアを伸ばした。2本目でさらにスコアを伸ばしたのがジャガーだ。1本目のラストトリックを「スイッチバックサイドノーズグラインド」にアップデートして92.55ptと暫定2位で小野寺をしっかりとマークした。一方でナイジャのみがランセクションではフルメイクできず珍しい展開となった。 【ベストトリック1本目】 ランでのスコアを活かしたい佐々木は、最初のトライで「ノーリーハーフキャブスイッチ5-0グラインドリバート」をハンドレールで一発メイクしビッグスコアである91.64ptを獲得。 ブラジルでの五輪出場権争いが激しくなっているジオバンニは「キャバレリアルフロントサイドブラントスライド」をハンドレールで決めると90.92ptをマーク。 クリス・ジョスリン(左)とジオバンニ・ヴィアンナ(右)Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 【ベストトリック2本目】 ここでスコアをフルメイクし後続にプレッシャーをかけておきたい佐々木は「キャバレリアルノーズブラント」をミス。一方で同じくスコアを揃えておきたい小野寺は「フロントサイドブラントスライド・ビッグスピンフリップアウト」をハンドレールで決め93.07ptのビッグスコアを獲得し、この日最初のフルマークライダーに。 トリックを決め喜ぶ小野寺吟雲Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC そしてここでも暫定首位の小野寺をしっかりマークしたジャガー。「スイッチバックサイドノーズブラントスライド」を2本目でしっかり修正しモヒカンレッジで決め、93.13ptとここまでのハイエストスコアをマーク。 ジャガー・イートンPhoto: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 【ベストトリック3本目】 順位、スコアが大きく動いた3本目。根附は「ノーリーインワードフリップフロントサイドボードスライド」を着地がギリギリながらもなんとか耐え、3回目で決めこのセクション初めてスコアをマーク、92.14ptとした。日本のオリンピック出場権争いにおいてこの大会でなんとしても上位に入りたい佐々木は「キャバレリアルバックサイドノーズブラントスライド」を2回目で見事リカバリーし91.04ptとここでスコアをフルマークとした。 2本目でジャガーに追い越された小野寺は好調を感じさせるトライ後、この3本目でも「ギャップオーバートランスファー・フロントサイドブラントスライド・キックフリップアウト」を決め91.46ptと暫定首位の座を再び奪い返した。 ここまで思うように流れをつかめていなかったナイジャも「キャバレリアルバックサイドノーズブラントスライドフェイキー」の大技をモヒカンレッジでこちらも3回目のトライでリカバリーし93.65pt。この日のハイエストスコアを更新してみせた。 グスタボもこの流れに乗り、「フロントサイドオーバークルックドグラインドノーリーキックフリップアウト」さらにこちらも3回目でリカバリーして90.04をマークした。小野寺に再び首位の座を奪われたジャガーがさらにここで魅せた。「バックサイドキックフリップバックサイドノーズピックグラインド」をハンドレールにて一発で仕留め92.60ptと再度小野寺の前に出た。 再度首位に上がったジャガー・イートンPhoto: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 【ベストトリック4本目】 首位ジャガーと2位小野寺の差が僅か0.94ptと僅差のまま後半戦へ。本決勝3度目の逆転首位を狙う小野寺は「バックサイドテールスライドキックフリップアウト」を中央のモヒカンレッジで狙うもミス。勝負の4本目で唯一スコアをマークしたのがアメリカ国内での出場権争いを繰り広げているクリス。彼の代名詞であるビッグトリック、バンクトゥレールオーバーの「ビッグトランスファーバックサイド180キックフリップ」を最初のトライで決め92.86ptをマークしてラストトリックに望みを繋いだ。 【ベストトリック5本目】 なんとかフルマークしたい前回のドバイ大会王者、日本の根附は「ヒールフリップバックサイドノーズブラントスライド」をハンドレールで挑むもミス、スコアを揃えられず悔しい8位フィニッシュとなった。 暫定3位と表彰台圏内の佐々木もさらにスコアを伸ばすべくバンクトゥフルオーバーの「バックサイド360キックフリップ」をミス。ジオバンニもなんとかフルマークし、順位を少しでも上げておきたいところだったが「キャバレリアルバックサイドノーズピックグラインド」をミスしスコアを揃えられず7位で今大会を終えた。逆転優勝には92.40ptが必要な小野寺は4トライ目と同じく「バックサイドテールスライドキックフリップアウト」をモヒカンレッジで狙うも惜しくも決めきれず今大会を終えた。最終トライで魅せたのがアメリカ勢だ。まずはクリス・ジョスリン。4本目の勢いそのまま「ノーリーインワードヒールフリップリバート」をステア決め94.61ptとこの日のハイエストスコアを最後で更新、順位も日本の佐々木を抜き3位表彰台を獲得した。 最高得点を叩き出したクリス・ジョスリンPhoto: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC なかなか本調子が出せていたいナイジャも流石のスキルをみせた。ハンドレールでノーリーヒールフリップバックサイドボードスライドを見事リカバーし最終トライで89.13スコアを揃え5位浮上し今大会を終えた。 グスタボも「バックサイドクルックドグラインド・ノーリーバリアルヒールアウト」をモヒカンレッジで挑んだがミスしスコアを揃えられず6位でフィニッシュ。この瞬間ジャガー・イートンの優勝が決まった。 優勝を決めたジャガー・イートンPhoto: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 大会結果 優勝 : ジャガー・イートン (アメリカ合衆国) / 278.28pt 2位 : 小野寺 吟雲 (日本) / 277.34pt3位 : クリス・ジョスリン (アメリカ合衆国) / 275.34pt4位 : 佐々木 音憧(日本) 271.46pt5位 : ナイジャ・ヒューストン (アメリカ合衆国) / 239.07pt6位 : グスタボ・リベイロ (ポルトガル) / 182.00pt7位 : ジオバンニ・ヴィアンナ (ブラジル) / 177.39pt8位 : 根附 海龍 (日本) / 174.77pt 左から小野寺、イートン、ジョスリンの順Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 最後に 今大会非常に印象的だったのが終始メイク率、トリックのクオリティも高かった日本の小野寺だ。ラン、トリック、両セクション非常に高い評価を得られ、1度のミスでも大崩れしないメンタルの強化もうかがえた。もう一人は佐々木の名前も挙げておきたい。ドバイ大会では悔しい結果だったが、今大会は全体を通して非常に良いパフォーマンスだった。持ち技も十分に表彰台圏内を狙えるレンジのスコアトリックであり次のブタベスト大会に非常に期待が持てる。一方で前大会王者の根附はスコアメイクに苦しんでいたように感じた。OQS上海大会で最も注目だったのはアメリカ勢。ランでスコアが伸ばせないながらもしっかりと5位でフィニッシュしたのがナイジャ・ヒューストン。そして、冒頭でも挙げた熾烈なパリオリンピック出場権争いを繰り広げている中、今大会で一気にジャンプアップした3位のクリス・ジョスリンだ。これにより一気に世界ランキングも8位まであげ、アメリカ内でも3番手となり出場権獲得圏内まで上げてきた。上海大会で旋風を巻き起こしているのがパークスタイルでもファイナリストに残っているジャガー・イートンだ。何度もお伝えしている通り、二刀流でのパリオリンピック出場を目指しておりここまで世界ランキング12位と出場圏内ではあったがそのポイント差は非常に僅差だった。今大会でもパークとの両立から非常に過酷なスケジュールを予選からこなし、決勝まで勝ち上がった。さらにはその強靭なフィジカルでパフォーマンスも落とすことなく、今大会でも見事ストリートで世界チャンピオンとなった。その過酷さと思いからか表彰式では涙を見せたが、その姿が筆者には非常に印象的だった。これにより世界ランキングも一気にナイジャを抜いて2位に浮上、ストリート、パークの二刀流でのパリオリンピック出場に大きく前進した。そして日本勢のパリオリンピック出場権争いも非常に混戦となった。今大会2位となった小野寺が世界ランキング1位に浮上し非常に優位なポジションに。続いたのが世界ランキングを5位をキープもポイント差で日本人2番手に上がった根附、まさかの準決勝敗退でポイントを伸ばせなかった白井が6位の3番手、今大会で決勝に残り大幅にポイントを獲得した佐々木が7位に上がった。根附と白井が9986ポイント差、白井と佐々木が600ポイント差、根附と佐々木の差が10,586ポイントと、このフェーズ2では1つの順位でひっくり返る可能性のあるポイント差となっている。日本人トップの小野寺と2番手根附の差が98,850ポイントと小野寺が最終戦を前に非常に有利なポジションだ。前回のオリンピック王者で今大会まさかの予選落ちとなった堀米雄斗は130,110ポイントと出場権内の白井まで95,017ポイント、青木が97,716ポイントで白井まで127,411ポイント差と非常に難しいポイント差ではあるが逆転の可能性を残し最終戦であるブダベスト大会へ進む。このままでは終われないオリンピックディフェンディングチャンピオンの堀米がどこまで最終戦に修正を加えてくるか。今大会で逆転を許した白井もこのまま黙って終わるとは思えない。非常に有利な位置につけた小野寺はこのままキープできるか。はたまた好調な根附、佐々木の巻き返しなるか。アメリカをはじめ、日本以外の各国の出場権争いからも目が離せない展開。混戦のまま迎える最終ブダベスト大会は言うまでもないが、要注目だ。 各競技で協力してTEAM JAPANのサポートを実施 またオリンピック予選シリーズ (OQS) 上海大会では日本人選手たちが最高のコンディションで試合に臨めるように、味の素株式会社「ビクトリープロジェクト」が帯同・サポートしている。本プロジェクト内容については下記の通りだ。 ビクトリープロジェクトは、2003年から味の素株式会社と日本オリンピック委員会(JOC)が共同で実施している選手のコンディショニングサポートプロジェクト。選手の目指す姿や目標に合わせた栄養サポートを提供し、パフォーマンスの最大化と意識改革に貢献している。 特に大会期間中は、「補食」を通じて選手のコンディショニングをサポート。具体的には、エネルギー補給を目的とした「パワーボール」と、カラダのコンディションを維持するためのアミノ酸サプリメント「アミノバイタル」を提供している。 今回のオリンピック予選シリーズ(OQS)では、スケートボードだけでなく、BMX、ブレイキン、クライミングチームにも「パワーボール」と「アミノバイタル」を提供し、全ての競技で選手が最高のコンディションで試合に臨めるよう支援した。選手一人一人のコンディションを詳細に把握し、適切な栄養プランを提案することで、長期間にわたり安定したパフォーマンスを維持できるようサポートしている。