人口減対策、司令塔組織を 国への緊急アピール採択 将来世代応援知事同盟

 福島県など25道府県の知事で構成する「日本創生のための将来世代応援知事同盟」は15日、宮崎市で開いたサミットで、東京一極集中の是正、人口減少対策などの政策の見直しを含めた統括を行う司令塔組織の設置を国などに求める人口戦略緊急アピールを採択した。人口減少抑止に向け、官民連携の国民運動の展開、総合的に推進する国の組織や体制の整備などの必要性を訴えた。具体的な施策の方向性などを取りまとめ、7月ごろに国へ提言する。

 緊急アピールは国民に広く人口減少問題の危機感を共有してもらう目的がある。知事有志は国の地方創生の取り組み開始から10年が経過する中、「人口減少の危機は解決していない」と厳しく指摘した。

 政府の地方創生策を巡っては、内閣府などを中心に施策を打ち出してきた。省庁の縦割りが解消できず、強力な政策が打ち出せていないとの指摘がある。人口減少に歯止めがかからない現状を踏まえ、省庁をまとめ、地方の課題解決をより強力に行う司令塔となる組織づくり、企業の積極的な地方移転などを望む地方からの声を反映させたとみられる。

 国、地方、経済界、労働界などが連携し、人口問題に取り組む国民運動を起こすための環境整備も訴えた。10年間の経験や実情などを踏まえ、実効性がある政策の再構築の必要性も強調した。

 共同声明「みやざき声明」も発表した。声明の主な内容は【下記】の通り。人口減少の危機感を国民に強く発信し、社会全体で将来世代を支え育てる機運の醸成に取り組むことなども盛り込んだ。4月に民間組織「人口戦略会議」が744市町村を消滅可能性自治体として公表した点に触れ、「わが国が直面する最大の危機」との認識を示した上で「人口戦略の官民一丸となった推進体制を確立すべき」とした。

 地方への企業や人の分散を進めるため、「人口減少に立ち向かうトップランナーとして地方から一致団結して行動を起こす」とする各知事の決意も盛り込まれた。

 サミットに出席した内堀雅雄知事は就職する際の県外転出が福島県で顕著である点を強調。福島で働く魅力や喜びを若い世代に伝え、Uターンを促す事業や首都圏在住の若者に転出した理由を聞く意識調査などの取り組みに力を入れる考えを示した。「若い世代の思いに丁寧に耳を傾けながら、福島で暮らして福島で働こうと思ってもらえるよう積極的に取り組んでいく」と決意を述べた。

■みやざき声明の主な内容

一、人口減少の危機感を国民に強く発信して広く共有し、社会全体で「将来世代」を支え、育てる機運の醸成に取り組む。

一、人口戦略を国政の中核的課題と位置付け、不退転の決意で総合的に推進する組織や体制を整えるよう国に求める。

一、東京一極集中から脱却し、若者や特に女性が地方で活躍できる地方分散型社会を実現するため、転職なき移住、関係人口の創出・拡大など新しい人の流れの創出を強く押し進めることを、政府として明確に最優先課題に位置付けるよう強く求める。

一、産業・雇用の地方分散に向けた税制措置を含め企業や大学、政府関係機関などの地方移転実現や中小・小規模企業が賃上げできる環境整備のため抜本的な構造改革を国に求めるとともに、産業界・労働界などにも協力をもらえるよう国民運動的な取り組みを世に提起する。

一、子ども医療費助成制度や学校給食費、幼児教育・保育の無償化、高校授業料の無償化など子育てに係る基幹的な経済的支援について、全国一律の制度化と支援基準の充実を図ることを国に求める。

一、固定的な性別役割分担意識やジェンダーギャップの解消に向けて、一人一人がそれぞれのライフスタイルやライフステージに応じて活躍し、キャリアパスを実現できる環境を整えるため、企業や団体など多様な主体と一体となって取り組む。

■全国知事会 人口戦略部門新設へ

 サミットに参加した全国知事会長の村井嘉浩宮城県知事は人口戦略に特化した部門を知事会に新設する構想を表明。今夏の全国知事会議で議案として諮ることを検討するとした。

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