福島県南相馬市の起業型地域おこし協力隊に着任 北海道登別市出身の岩本さん、愛知県江南市出身の中川さん

門馬市長(右から2人目)から委嘱を受けた岩本さん(同4人目)と中川さん(中央)

 福島県南相馬市の起業型地域おこし協力隊に、北海道登別市出身の岩本一帆さん(55)と愛知県江南市出身の中川雄斗さん(33)が着任した。岩本さんはナマズの養殖、中川さんは千年先も記憶に残り続ける建築を目標に掲げる。

 岩本さんは明治大卒業後、工業化学メーカーなどで勤務。研究所の設備開発などを行ってきた。前職にて、住んでいた仙台市と市内小高区の研究所を行き来するうちに、小高区の自然や人に引かれた。

 餌やふんによって汚れた水槽の水をろ過して再利用する閉鎖循環式の養殖設備でニホンナマズを育て、同市の新しい特産品化を目指す。地域事業者と連携して餌を作ったり、太陽光などの再生可能エネルギーを養殖所で有効活用したりする。「ナマズに限らず、今あるものと組み合わせながら新しい価値をつくりたい」と意気込んでいる。

 中川さんは三重大を卒業して建築設計事務所へ入社。事務所を転々とし、独立を目指していた。全国各地の地域おこし協力隊の条件や環境を見比べ、東日本大震災で全域避難となったが多くの起業家が新しい事業を始めている小高区に、建築家の血が騒いだ。

 1級建築士として、千年先も記憶に残り続ける建築物の設計を志す。最初の1年は南相馬市の木材や歴史の調査に努め、同市の資源を活用した建築の計画を立てる。建物の損傷を直すワークショップを開き、建築業界をより身近な存在にできるよう活動する。「伝統と歴史がある南相馬市で心に残り続ける、忘れられない建物をつくる」と誓う。

 南相馬市役所で委嘱式が行われ、門馬和夫市長が2人に委嘱状を手渡した。門馬市長は「市としてバックアップするので思い切って挑戦し、活躍してほしい」と話した。

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