高校通信課程の生徒増 福島県内今年度 私立3校、2571人に 5年間で434人増 学びの選択受け皿に

 不登校やさまざまな学び方を求める生徒の受け皿として高校の通信課程が注目され、2024(令和6)年度の福島県内私立3校の通信課程で学ぶ生徒は5年前の2019年度より434人増の2571人になった。県立唯一の通信課程がある郡山萌世は今年度の生徒数をまだ公表していないが「例年と同程度」としており、公私4校全体の生徒数も増加しているとみられる。専門家は「通信課程の増加傾向は今後も続く」とし、指導体制の一層の充実や魅力ある教育課程の必要性を指摘している。

 県内公私4校の通信課程に通う生徒数の推移は【グラフ】の通り。2023年度までは県教委、2024年度は福島民報社まとめ。私立は尚志、東日本国際大付属昌平、大智学園の合計。

 少子化が進む中、全日・定時制などは定員を減らしている。このため全日・定時制などを合わせた高校の全生徒数に占める通信課程の割合は5年前の6.0%から上昇し、2023年度は7.4%になった。生徒の年齢構成を見ると15~19歳が中心で、中学卒業後の進路の選択肢の一つになっている。関係者は増加の背景を(1)個々のペースで学べる(2)興味や関心に沿って単位を取得できる(3)オンラインを活用した学びが充実―などと分析している。

 今年4月に郡山市にキャンパスを設けた「N高・S高」など3都道府県以上から生徒を募集する「広域通信制」は県教委のまとめに含んでいないため、実際はさらに多くの生徒が通信課程で学んでいる。

 尚志はここ5~6年、640人の定員を超えて生徒を受け入れていたという。教員や学びの質を確保できないため、昨年度は十数人の入学を断らざるを得なかった。今年度から定員を千人に拡大し、現在は約960人が在籍する。大関収教頭は「入学の問い合わせも多いが、無理に受け入れると人手不足や教育の質低下につながりかねないためバランスが難しい」と明かす。

 昌平も600人だった定員を今年度、800人に増やした。生徒のうち約8割が入学前に不登校などを経験しており、学校は生徒と保護者と面談し、生徒の不安を踏まえた学習環境を整えるなどきめ細かく対応している。国公立大に進学し、県内で教員として活躍する卒業生もいるという。

 福島市の男子生徒(17)は自分のペースで学習できる点に引かれ、通信課程を選んだ。「申し込めば個別の教育相談が受けられ、勉強も好きなことも無理なく進められる」と話す。

 通信制高校を研究する星槎大の手島純教授は、全日・定時制だけでない「学びの形の多様化」がますます広がっていると指摘。通信課程の需要は高まるとみて「オンラインなどを活用した教育の充実や教員の質の担保が重要だ」とする。東北大大学院教育学研究科の後藤武俊准教授は「全日制と通信課程を組み合わせた『全通併修』など学校の在り方も見直す必要がある」と提案している。

※通信課程 卒業に必要な単位数は全日・定時制と同じだが、毎日登校する必要はなく、郵送やオンラインなどを活用して高卒資格を得る仕組み。リポートの提出と月1~2回程度のスクーリング(面接指導)、テストなどを通じて単位を取得する。中学を卒業すれば誰でも通うことができ、幅広い年代が学ぶ受け皿となっている。

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