ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は今年のマスターズで優勝候補に挙げられながら期待に応えられなかったローリー・マキロイについて語ってもらった。
画像: 今年のマスターズに優勝して自身のメジャー4大制覇を狙ったローリー・マキロイ(PHOTO/Blue SkyPhotos)

今年のマスターズに優勝して自身のメジャー4大制覇を狙ったローリー・マキロイ(PHOTO/Blue SkyPhotos)

少し今年のマスターズに話を戻します。

優勝候補のひとりに数えられたローリー・マキロイ。優勝したスコッティ・シェフラーに次いで世界ランク2位、昨シーズンはポイントランクでPGAツアー4位、欧州ツアーでトップの成績を挙げています。

今年に入り1月の欧州ツアー、ドバイデザートクラシックで優勝した後、アメリカではなかなか上位争いに顔を出せずファンはヤキモキ。マスターズ直前のテキサスで3位に入りよい流れでマスターズを迎えられるという雰囲気になった感じでした。

優勝したシェフラーは首位に立った3日目を終え最終日に向けた心構えを聞かれ、「エネルギー(Energy)と期待値(Expectation)のマネジメント」と答えましたが、マスターズになると、その期待値がみるみる上がってしまうのが、キャリアグランドスラムがかかるマキロイ。

14年に全英オープンに勝ってから10年。今年はキャリアグランドスラムへの挑戦が10回目となり、これまでの9回のうち、実に6回がベスト10フィニッシュ。ファンの間では3日間首位で最終日にズッコケた11年大会の印象が強く、その後は前半出遅れ最終日に追い上げて上位に入るパターンが多かったので、「初日を上手く滑り出せれば! 」と多くの人が思っていました。

今大会、ボクが注目したのはマキロイのキャディがつなぎにつけたゼッケンです。その番号は89。1は前回優勝者と決まっていますが、あとはエントリー順になります。たかが数字と思うかもしれませんが、こだわってしまうのもプロゴルファー。

21年にマスターズでアジア人初の優勝を飾った松山(英樹)くんは、そのときの「78」を使用球の番号に。過去にアーノルド・パーマーは「13」で、ゲイリー・プレーヤーは「52」、タイガー・ウッズは「71」で2勝しています。

そして「89」ですが、86年にニクラスが46 歳で勝ったときの番号であり、その後、16年にダニー・ウィレットと17年にセルヒオ・ガルシアが"連覇"する、ラッキーナンバーなのです。

さらに付け加えれば、ウィレットとガルシアは1月のドバイを制しており、今年はマキロイも勝ちました。

当然、ボクだけでなくファンの期待値も上がりますし、メディアの注目度も跳ね上がります。何より期待値を上げたのは、マキロイ自身ではなかったでしょうか。

今年のマスターズの出場選手は89人。つまり89は、一番遅くコース入りすれば得られる番号でした。

マキロイが意図してこの番号を手にしたのかはわかりませんが、前週を休んだり出場したりする年もあれば、練習ラウンドを入念にしたり反対にさっと流したり。ここ数年は細かいところまで、勝つための選択をしてきたマキロイです。

キャリアグランドスラムのために「89」を選んだことは十分に考えられますし、何よりそれが自分自身への期待値の高さだったのではないでしょうか。またしても残念な結果でしたが、改めてマキロイという
”愛されキャラ”を感じ、何よりまた来年も期待値を持って楽しめる、そんなふうに思うことにしましょう。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年5月21日号「さとうの目」より

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