毎日欠かさず行われていた伊澤塾の早朝練習。ベアグラウンドからのアプローチ練習を終えると場所を砂場に移し、バンカーを想定した練習となる。秀憲は砂の上に置いたボールをある程度打つと、今度はボールの下1/3を沈ませ、「クラブが自然と落ちてくる感覚」を養った。この感覚が「ヘッドを走らせる」ことにつながり、さらに伊澤塾生に共通する飛ばしの感覚へとつながっていく。

ヘッドの重さと喧嘩しない!

「よし、次は砂場に移動して打ちなさい」

「はい!」

塾長と塾生の声が静けさに包まれている中学校に響いた。ベアグラウンドに散らばっている数十球のボールを袋に片付け、校庭の奥にある砂場に向かう。

「ドスッ、ドスッ」

さっきまでベアグラウンドで響かせていた甲高い打球音とは違った砂混じりの重低音が一定のリズムで小気味よく鳴り響いた。しばらく打ち続けているとサンドウェッジの溝に砂が入り込んでいた。

「もうこんなに砂が溜まっていたのか」

秀憲はつぶやきながら砂を払った。散りばめた数十球のボールを打ち終わると、自分の足場の周りに拾い集めて、また繰り返し砂とボールを飛ばした。砂場練習が終わる頃には靴の中は砂まみれだった。だが気にすることなく無我夢中で秀憲はクラブを振り続けていた。

この砂場では伯父であり初代塾生の利光も利夫に見守られながら砂にまみれた。

画像: 利光と同じように毎朝、中学校の砂場でサンドウェッジショットを繰り返した

利光と同じように毎朝、中学校の砂場でサンドウェッジショットを繰り返した

「ボールの後ろに印をつけなさい」

利夫は利光にボールの2、3センチ後ろに目印をつけさせ、この目印に向かってクラブを降ろすように指示した。ボールを直接狙うのではなく手前の印からクラブを入れることで、薄く砂を取るエクスプロージョンショットを習得する練習方法だった。

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