「不登校」「ひきこもり」を考える

克服には親の「傾聴」「共感」こそが特効薬になる

(写真はイメージ)

 思春期や青年期は、子ども特有の「なんでもできる」といった万能感が壁にぶつかり、理想と現実のギャップに健全な葛藤や挫折を生じる時期でもあります。成功体験に喜び、自尊感情を高める一方で、自分と友達との能力の差を感じて自信を失ったり、思わぬ失恋で自尊心が傷ついたり……それでも、周囲の大人や友人たちの力を借りるなどして適切にそれらのつらい感情を処理しながら、挫折を受容し乗り越える中で、「自分とはどういう人間なのか?」「どう生きるべきなのか?」を試行錯誤しつつ探るプロセスこそが、若さの苦しさであり、また素晴らしさでもあるのだと思います。

 しかし「感情不全」の状態に陥ると、プラスもマイナスも感情が機能しないために、成功も挫折もまともに経験できないのです。

 厚生労働省の調べでは、ひきこもりの約8割はなんらかの精神障害を有しているとの報告もなされています。では、精神科に通院すれば解決するのでしょうか? ことはそう単純ではありません。本人に現状をなんとか解決したいという意思があり、かつその感情不全の病理が軽度であれば、きっと精神医療は足を引っ張る症状の緩和を通じて強い味方のひとつとなってくれることでしょう。

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最上悠

最上悠

うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

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